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第6話 王都

 国立魔導院学園、王国が有する最高研究機関である国立魔導院、その付属の研究機関である通称学院。

 王国に生まれた魔力に恵まれた子供を集めて英才教育を施し、王国によって有力な魔法使いを育成していく組織だ。

 一般的に魔力保有者は、魔力保有者の血縁から出る可能性が高い。

 魔力を持つものは成功する可能性が高くなるために、社会的地位の高い人間の血縁者がまた成功者になる可能性が高いし、魔力保有者は社会的地位のある人物の血縁である可能性が高い。

 その結果、学院には各地の有力者の血縁者が多く集まり、結果として特別視されやすくなる。

 

 もちろん、偶発的な魔力持ちは一定確率で生まれるため、アレックのように地方の村から急に学園入りする人間もいるが、基本的には気が付かれることなく成人してしまうことが多い。

 その点から、アレックはエリートの仲間入りするチャンスが得られた。

 これは村の人達が一生懸命働きかけ、特級の冒険者を呼べた事が大きいことは間違いない。

 村人たちのせめてもの罪滅ぼしの形だった。


「もっと魔法の勉強が出来るのか……でも……村は大丈夫なの?」


「大丈夫だ! 心配するな! お父さんも含めて、村のみんなも鍛え上げた肉体で森程度の魔物なら相手にならない!」


「そうよ、アレックは自分の為に学園に行くべきよ」


「……ありがとう二人共……」


「ううん、アレック。今までありがとう」


「これからは、父さんたちがアレックの帰る場所を守っていく!」


「わかった。学園に行くよ」


 この日は、久しぶりに川の字で親子水入らずで眠たのであった。


「さあ行こうかアレック君!」


「はい、ケーネスさん。父さん、母さん、それにみんな……行ってきます!」


「いってらっしゃい!」「気をつけてな!」「アレックなら大丈夫だ!」「いつでも帰ってこいよ!」「村は任せとけ!」


 村のみんなが送り出してくれる。

 男たちはバルクアップして見事なポージングでアレックの旅立ちを祝福してくれた。

 ケーネスとアレックを乗せた馬車が、静かに村を離れていく……


「その、なんだな。なかなか濃い村だな君の村は」


「そうですね、温かい村です」


「温かい……確かに暑苦しいが……いや、それにしても、僻地の村でアレほど活気のある村はめったに無い。人々はたくましいし、笑顔で溢れている。それが、君がもたらしたものなんだな」


「いえ、みんなが一生懸命だったからですよ」


「なんというか、君は8歳だったか?

 本当に子供なのか? 落ち着きすぎじゃないか?」


「あんまり年の近い友達も居なかったので、師匠も含めて年上の人たちに囲まれていましたし、基本的には本を読むか狩りをして過ごしてきたせいですかね?」


「なるほどな……アレック君は冒険者に興味はないか?

 魔法使いでありながら素晴らしい弓の腕に狩りを行えるスカウト能力……

 引く手あまただと思うぞ」


「そうだ! 冒険者のお話を聞きたいです!」


「ああ、いいぞ。

 冒険者というのは……」


 アレックは王都までの時間を、たくさんの話をケーネスから聞き、到着する頃にはすっかり冒険者へのあこがれが強くなっていた。


 巨大な門が開き、アレックは生まれてはじめての王都へと入る。

 見たこともないような数の建物に人、人、人。

 村のように皆が同じような服装をしておらず、様々なデザインの自由な服装。

 町並みも色鮮やかに輝いているように見えた。

 そんな町中をしばらく馬車が進むと、不意に停車する。

 

「さて、短い旅立ったが、君との会話はとても魅力的なものだった。

 私は基本的には王都の冒険者ギルドを中心に活動している。

 もし困ったことが有れば、ギルドの職員に相談してみてくれ、悪いようにはしない」


 ケーネスが指で指し示す巨大な建物、周囲の建物よりも二回りは大きい、その看板には王都冒険者ギルドと書かれている。


「いろいろとありがとうございました。もし冒険者になったら、頑張って追いつきます!」


「ああ、楽しみに待っているよ!

 君の学園生活が素晴らしいものになることを祈っているよ!」


 最期まで格好良く、華麗にケーネスは去っていった。


 その後馬車は街を抜けていく、喧騒とも言える活気がだんだんと落ち着いて、人の数も少なくなっていく。巨大な壁がしばらく続き、大きな門の前で馬車が停車する。


「さぁ、ここが学園だ。紹介状はちゃんと持ってるかな?」


 御者が扉を開けながら話しかけてくれる。

 アレックは懐から大事そうに推薦状を取り出す。


「では、彼にそれを見せるんだ。

 多分明日には試験となるだろうが、幸運を祈っているよ未来の大魔法使い君」


「ありがとうございました!」


 御者に言われた通り、門番の男性に推薦状を渡す。

 門番の男はその手紙を何かの装置に乗せると、すぐにアレックに近づいてきた。

 

「すぐに人が来るからもう少し待ってて欲しい。

 ずいぶんと遠くから来たんだね、疲れていないかい?」


「大丈夫です! ケーネスさんの話が興味深くて、すっごく楽しかったです!」


「特級魔法使い、万術のケーネス! 王都でもファンが多いんだよなー!

 素敵だよなー……ただ、うちのじーさんも若い頃からファンらしくてな……」


「は、はははは……」


 門番の人と世間話をしていると、一人の女性が近づいてきた。


「おまたせしました。推薦者ケーネス様、受験者のアレック君ですね」


「はい、そうです!」


「案内させてもらうラーナと言います。とりあえず、宿舎へ行きましょう。

 ついてきてね」


 少しおっとりとした緩やかな話し方が特徴的なラーナ、街の人とは少し違った独特の服装をしている。後にわかるのだが、この学園の教師の制服に身を包んでいる。

 そして、ややピッタリとした服装のせいで、彼女の素晴らしいプロポーションが強調されて、あまり年頃の女性に免疫のないアレックは、赤面しうつむいて彼女の後をついていくのであった。


「頑張れ、少年!」


 門番に送られながら、アレックは学園内に用意された宿泊施設へと向かう。


「推薦状に従い、早速明日入学テストを行います。

 また朝に迎えに行きますので、難しいでしょうが、今日はゆっくりと休んでね。

 食事は後で部屋に持っていくわ」


「は、はい!」


 ラーナは、その可愛らしい少年のドギマギとした反応が面白くて、すこしからかいながら宿舎まで案内する。結果として、その行為のおかげで、アレックは過度な緊張することなく慣れない部屋を安心する場として受け入れやすくなったし、夜も熟睡することができた。

 

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