未来無き戦争
ナレーター
じじい1
じじい2
ばばあ
子ども
母
ナレーター「20○×年、21世紀当初挙げられていた、少子化、高齢化の問題は未だ解決しておらず、ついに日本は、人口の40%以上が高齢者という超高齢化社会への移行を遂げた。そんな折、世界情勢の悪化により、各国で戦争が勃発し、日本も半分巻き込まれる形で参戦せざるおえない状況に見舞われた。しかし、現代において若者たちの戦争への投入は国の大きな損害になりかねない。そのことに不安を感じた日本政府は、とある礼状を発表した。そう、簡単にいえば、どんな年齢の人間でも、自ら志願してよいという礼状だ。どんな年齢の人間でも。」
照明変化
Mイン
じじい1とばばあいる。ばばあはじじい1の肩をもんでいる。
じじい1「あーもうちょい右だ。おい、ばあさんそっちは左だ。うん、そっちそっち、ちょっと上か…あ、いやそっちじゃないんだよ。」
じじい2「何だ、もう戻ってきてたのか。」
じじい1「おお、あんたも戻ってきたのか。(ばあさんに)おお、そこだそこだ。いやぁ、それにしてもあのしゅみれーしょんましーんというのは凄いなぁ。わしゃ何回も落とされちまった。」
じじい2「何度やっても上達しないなぁ。」
じじい1「機械っちゅーのは、これまた苦手でなぁ。未だに左翼を落とすとどっちにいくのかわからん。ま、本番じゃなくてよかったってもんだ、一機も落とせずに死んじまったらことだろう?」
じじい2「そうだな、お互い、無駄に命は落としたくないな。」
じじい1「お前、次の作戦に選ばれたそうじゃないか。ついに本番じゃな。」
じじい2「そうだな。」
じじい1「死ぬなよ」
じじい2「そいつは、いってみないとわからなねぇな」
じじい1、ばばあはける
場転
じじい2「ほとんどシュミレーションと同じだ。この日を、ずっと待っていた。いや、待っていなかったかもしれない。本当は、怖い。本当は怖い。だが」
ホーム
母、子どもくる。
じじい2「じゃあ、行ってくる」
母「ええ、きっと無事で帰ってきてね。」
じじい2去りかける。
子ども「…いやだ、やっぱりこんなの」
母「やめなさい!今さら何を言ってるの」
子ども「だってやっぱりこんなのおかしいよ!」
母「おじいちゃんはあんたのために、望んでることなのよ!」
子ども「この世に望んで死んでいい人間なんかいるか!おじいちゃん!私が二十歳になったら、一緒にお参り行こうって約束したじゃない!おじいちゃん!」
じじい2「そうだったな。それまでには、戦争が終わるように、待っていなさい。(電車に乗る)」
子ども「あ…」
戦闘機のなか
じじい2「そう、こんな命尽きたってかまいやしないんだ。それで守ることができるんなら。大切な、大切なものを、守ることができるんだったら」
操縦かんを握り直す。
じじい2「俺は、大切な家族を守るんじゃ!!!」
子ども「おじいちゃぁあああああん!!!!!」
じじい2「(太陽を見て満足げに)きれいな、光だ」
轟音、戦闘機、落ちる。
暗転
明転
じじい1とばばあ。ばばあは死んでる。
じじい1「ぶーん、どーん、ぱらぱらぱ。それにしても、やっぱり本物の迫力は違うのう。飛び立つときにもどかーん、ばーん!とまじかでみると全然イメージが違ってくる。爆弾がおっこってきたんかと思ったわい。わはは」
乾いた笑いにかわる
じじい1「ははは。わしらだけ、残ってしもうたな。あいつら、何もあんなに早く死ななくったって、よかったのになぁ。どうせ、わしらには簡単に追い出しても、死に水をとってくれるような子どもはおらんのだから。ここで楽して飯を食えとる。まぁ、いずれは戦地へ送られるかもしれないが、どうせ老い先短い命だ。どこで死んだって…なぁ、おい、ばあさん、ばあさんきいとるか?おい(ばばあ、死んでいるのに気付く)なんだ。わし一人か。」
暗転
大学時代に書いたものです。
結構気に入ってます。
こんな世界にはしたくないですね、ほんと。