プロローグ
私にとって片思いは、祈りのようで、呪いのようなものだった。
“一途”と言えば、聞こえはいいかもしれない。けれども、裏を返せば、だらだらと引きずり続ける独り善がりな片思いであったように思う。それでも、彼を思うことは、良くも悪くも、あの頃の私を生き生きとさせていた。例えば、新しい洋服を買うとき、下着を新調するとき、髪を切るとき、足の爪にペディキュアを塗るとき、アイシャドウを選ぶとき、香水のかおりを選ぶとき…もしこれを身に着けたら、どんな風に思うのだろう。似合っているだろうか、何も思わないだろうか。何を選ぶにしても、いつも頭のどこかには彼がいて、頭の中の彼に問いかけるのだった。新しいことを始めたとき、美しい景色を見たとき、映画を見て泣いてしまったとき、そこに彼がいたのなら、彼と一緒に見ることができたなら、どんなことを話すだろう。何をするにしても、私はいつもそんなことを考えながら過ごしていた。彼を好きでいることが、私の日常になっていたのだ。
そんな私の十代の片思いは、思い出として、言うなれば一つの作品として完成させて、記憶の奥底にしまうつもりでいた。真っ黒に荒く描かれていた下書きなんて、まるで無かったことにするように、綺麗な絵の具で塗り潰して、見ないふりをして、忘れたふりをして、し続けて、そうして私の一部になればいいと。
「十代の片思い」は、未だに完成していない。二十歳を迎えてもなお、手を加え続けている。




