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PTメンバーの有能シーフが【追放】されたそうに今日も見てくる……

 「なぁ……追放してくれよ……」


 俺達勇者PTの朝は今日もこの言葉から始まった。


 事の起こりは、数ヵ月前、この世界【アズルガルド】にある、魔術通信社が発行している発行部数世界一を誇る【週刊小説家になっちゃう?】と言うタイトルの、大衆向けの娯楽雑誌が起こした、ある流行りが原因になっている。


 この雑誌を毎週欠かさず購読している、我がPTの一員である盗賊(シーフ)の【ヨルダン】が、流行りに感化されてしまった。

このヨルダン、勇者PTの一員になるだけあって、非常に優秀な盗賊なのだ。偵察・斥候・監視・罠解除・鍵開け等、高レベルでこなしてくれる。そして、何より我々がヨルダンを頼りにしている事は、我々のように何か1つの事柄を、子供の頃から一辺倒に磨いて来た世間知らずには無い、世渡りが非常に得意なのだ。


 「だから、何度も言ってるだろ?このPTはヨルダンお前が居なくなった途端に瓦解するって」


 「そんな事ないって!俺なんか……モンスターとの戦闘で何の役にも立たないし……神様に選ばれた【勇者】あらゆる武具に愛される【武王】全ての魔術を極めた【賢者】女神の愛娘とまで言われる【聖女】こんなメンバーが揃ったPTに、俺みたいなギルドで紹介されただけの凡人は必要ないだろ?だから、追放してくれよ……」



 【勇者】とヨルダンの最近繰り返される、やり取りを横で聞いていた【聖女】が突然、顔を真っ赤にしてプルプルと小刻みに震えながら、ヨルダンに詰め寄った。


 「ヨルダン!いい加減にして!何度も言ってるように、異世界から突然召喚された、非常識人間の【勇者】武器振り回す事しか知らない脳筋の【武王】魔術バカの【賢者】そして……教会と言う狭い世界しか知らなかった【聖女】の私」


 「こんなダメ人間しか居ないPTから常識人のアナタが抜けたら、魔王討伐する前に、文無しになって、そこらでのたれ死ぬに決まってるじゃない!」




 この勇者PT、流行りに感化されやすいヨルダンを除いて、自分を客観的に判断する事が出来る、優秀な人間が集まっていた。短くは無い共同生活の中、自分に何が出来、何が出来ないかをよく知っていた。確かに、力と言う点に置いてだけは、世界で類の見ない人材が集まったPTなのだが、如何せん1つの技能だけに特化しすぎていて、世間知らずなのだ。社会の荒波に揉まれた事も無く。そんな彼等は、世渡り上手なヨルダンに幾度と無く助けられてきた。モンスターとの戦闘等と言う、バカにでも出来る事に役に立たなくても、このPTを円滑に回してくれるヨルダンを失なうリスクは、ヨルダンを除く全員が、きちんと認識していた。




 「ヨルダン……俺達は、世間を知らないが、バカでは無いんだ、小説に出てくるような、コイツ等頭の中に、脳ミソの変わりに、ふかした芋でも詰まってるのか?なんて、能無しと一緒にしないでくれ、ヨルダンを追放する事は、絶対に無いからな」




 そして今日もまた、ヨルダンが事前に調達してくれていた、野外食で腹を満たし、ヨルダンが確保してくれていた、宿屋の柔らかなベッドで1日の疲れを癒した。


 次の日の朝、今日も魔王を倒す為に、ダンジョンに潜ろうと気合いを入れているPTメンバーの前に、ヨルダンが1番遅れてやって来た。




 「なぁ……今日こそ、追放してくれよ……」


 「「「ヨルダン!!」」」



 勇者達の果てしない冒険は、まだまだ続く……

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白かったです。 [一言] 何と言いますか。勿体ないというか、ムズムズする? そんな印象を受けました^^; それが何か、書きながら分かりました。「物足りなかった」のでした。 もうちょっ…
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