運命
短編小説です。短いです。
バイトの帰り。駅のホームで電車を待っている時、スマホのニュースを見ていた。目に飛び込んできたのは
「五年ぶりの復活ライブ決定!!」
の文字。私は嬉しくなって無意識に体が動いていた。
この動きは小さい頃私が一人で私だけのために考えた表現方法の一つで、感情の種類によって色々な種類の動きがある。これは別に、誰かと会話をしたり感情を相手に伝えるために作ったのではない。ただただ自分しか知らない。何かを作りたかっただけだった。今はもう大学生にもなったし変な人に思われるからやめようと思っているのだが、体に染みついてしまった物簡単には離れない。そろそろ変な人に思われるからやめなければ。
だが、今はそれを考えることよりも、もっと重要なことが目の前にある。私はニュースの記事を貪るように読んだ。大学とバイトに疲れた体には、最高のご褒美だ。バイトでお金は貯まってるし一緒に行く人とか居ないけど、絶対チケットとろう。ずっと待っていたのだから。
しばらく読んでいると、視線を感じた。顔を上げると向かいホームに立っている男の人と目が合った。すごい目を見開いてこちらをまっすぐ見ている。何だろ。私じゃない誰かをみているのかも知れない。周りを見渡して見るともう、遅い時間のせいか周りには人が居ない。やっぱり私を見ているのか。
考えていると、向こうが知っている動きをした。
「え?」
思わず声が出た。それは私が考えた感情を表す動きの一つだった。私はとっさに階段を上がり、向かいのホームに向かって走り出した。
「やっと、運命の人を見つけた!」
何か感じて頂けたら幸いです。