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第七十四話 やっぱり操られてたみたいです?

今回は短めです。

 盛大なやらかしで自爆した私でしたけど、どうにかこうにかシチューは食べきりました。食べてないとやってられなかったとも言います。

 そういうわけで、半ば自棄食いのようにシチューをかき込んだ私は、当然のようにむせ返ってルル君に介抱されるという、これまた嬉し恥ずかしなイベントを経て、ようやくお店を後にしました。テンパり過ぎて、色々とやらかし落ち込んでいる私を見送る、お店の人達の温かい視線が何だか余計恥ずかしいです。


「リリィ、大丈夫?」


「だ、大丈夫です」


 私の手を引いてお店を出たルル君は、私が人の視線に耐え兼ねているのを察してか、人気のない公園へと私を連れて行ってくれました。

 木陰に設置されたベンチに2人で腰掛けると、そこから先は無言の時間が続きます。

 多分、ルル君も私が落ち着くのを待ってくれてるんでしょうけど……正直、ルル君と人気のない場所で2人きりっていうだけで、私としてはもう落ち着きようがないです。心臓バクバクです。


「ねえリリィ、さっきの続きだけどさ」


「ふぁ、ふぁい!?」


 そんな私の様子に痺れを切らしたのか、それともルル君なりに頃合いだと思ったのかは分かりませんが、不意に声をかけられて、私は返事するにも噛んでしまいました。けれど、ルル君はそれも気にすることなく、言葉を重ねます。


「フォルネリス様に何言われたの? 教えてくれない?」


 言われて、ああ、その話かと私は思い出しました。

 いえ、忘れてたわけじゃないんですよ? ただそれ以上にちょっと私にとって重要な事件が立て続けに起こったっていうだけで。


「やっぱり、言えない?」


 そんな風に自分に言い訳をしていると、ルル君は少しだけ悲しそうに目を伏せました。

 その痛みを伴う表情は、私にとって羞恥も何もぶち壊すには十分な威力を伴っていて、すぐさま声を上げました。


「そ、そんなことないです! ただその、ちょっとルル君に対して後ろめたかったから言いづらかっただけで……」


「後ろめたい?」


 首を傾げるルル君に、私は首肯することで返答とします。

 そして、少しだけ息を整えるために深呼吸をして……意を決して、口にしました。


「ルル君……魔眼魔法って、使えますか?」


 私がそう言った瞬間、ルル君の体がびくりと震えるのがはっきりと分かりました。

 そのまま、何を言うこともなくじーっとルル君の様子を見つめていると……


「……そっか、知られちゃったか」


 全てを諦めたような、力のない笑顔を浮かべました。

 知られちゃったか、ってことは、ルル君、本当に……?


「うん、僕の眼には、魔眼魔法が宿ってる。この眼で視れば、どんなものでも操れる力が」


「そうなんですか……それじゃあルル君、私も?」


「……うん、何度かやったことはあるよ」


「……そうですか」


 もしかしたらとは思ってましたけど、女王様の言う通り、どうやら私、ルル君に操られてたみたいです。

 つまり、私のこの気持ちは偽物ってことで……うーん、そう言われると、ちょっと寂しいですね。

 まあ、それはそれとして。


「けどリリィ、僕の魔法は確かに魔眼魔法だけど、僕は魔王なんかじゃ……」


「せいっ!」


「なぶっ!?」


 ルル君が何か言いかけてましたけど、そんなものは無視して私はその頭へとチョップを叩きつけました。

 全くルル君は、いつもいつも難しく考えすぎなんですよ、だからそんなに奥手なんです!


「いいですかルル君! 男なら、相手を操って振り向かせるなんて回りくどい真似してないで、ちゃんと自分の気持ちは正直に真っ直ぐ伝えないとダメですよ!」


「いや、えっ? な、何の話……」


「言い訳無用です!!」


「あ、はい」


 私の反応が予想外だったのか、酷く困惑した様子のルル君でしたけど、その言葉もまたぴしゃりと遮ります。


「いいですか、乙女心を弄んだ罪は重いです! この心がたとえ偽物だったとしても、もうこれを本心にするって決めてるんです! 責任取って貰いますから!」


「えっ、偽物? 責任?」


 言い訳無用と言ったからか、特に反論は来ないですが、やはり訳が分からないと言った風に目をぱちくりさせるルル君。ちょっと可愛いですね、ってそうじゃなくて!


「ともかく……」


 私はベンチから立ち上がると、ルル君の前に仁王立ちし、びしっ! と指を突きつけます。


「魔法なんかどうでもいいんです、私に手を出したのを後悔するくらい、ルル君のこと好きになってみせますから!! 覚悟しておいてください!!」


「えっ……えぇ!?」


 私の宣言に、ルル君はついに目を白黒させ始めました。

 もはや何を言わんとしているのか、口をパクパクさせるばかりで言葉を紡ぐことも出来ない様子のルル君の手を取り、私は歩き出します。


「ちょっ、ちょっと、リリィ、どこ行くの!?」


「どこって、帰るんですよ? せっかくですから、色々と見て回りながら」


 ぶっちゃけるとお金もないので、後することと言ったら帰るだけなんですよね。それだと味気ないですから、適当にお店を冷やかs……げふんげふん、ウインドウショッピングでもして回りましょう。


「そ、それはいいんだけど……」


「けど?」


「……リリィは気にしないの? 僕の魔法」


「だから、そう言ってるじゃないですか」


「いや、なんで? 人を好きに操る魔法だよ?」


「ですからー」


 ぐだぐだと続けるルル君の方に、もう一度向き直ります。

 真っ直ぐ見つめ、怯んだルル君に向け、これまたもう一度言葉を重ねました。


「私はこの世界で一番、ルル君のことを信用してるんです! ルル君がどんな力を持ってたとしても、絶対悪いことには使わないって、信じてます!」


「ぁ……」


 操られてるって言われると色々思うところはありますが、それを教えられた今になっても、やっぱりルル君に限って悪い事はしないって信じきれます。もしかしたら、この想いだって植え付けられたものかもしれませんけど……こればっかりはもう仕方ないです、そうだったらそうだったで、潔く諦めましょう。


「ほらルル君、ぼーっとしてないで、行きますよ! 最後はルル君のお家でお泊りするんですから」


「う、うん……って、ちょっと待って、お泊りなんて聞いてないよ!?」


「あれ、そうでしたっけ? まあ、いいじゃないですか、細かい事は」


「良くないって!?」


 いつもの調子を取り戻して、キレのあるツッコミを入れてくれるルル君の様子に笑顔を零しながら、私は言いました。


「良いじゃないですか。私はルル君に何されても文句言いませんよ?」


「女の子がそんなこと言わない!!」


 ぎゃあぎゃあと騒ぎながらも、手を繋いだまま、町の中を歩いていく。

 そんな私達の距離は、以前にも増して少しだけ、近づいたような気がしました。

最後少し尺余りな感もありますがこれにてデート回(?)終了です。

告白してるようにしか見えないけどなんだかそんな雰囲気になってない不思議

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