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第六十九話 恋の悩みはキューピッドに、です?

今回は短いです。

「リリアナが……宿題をちゃんと終わらせてきた、だと。ルルーシュの宿題を転写魔法でも使って写して来たのか?」


「先生までそれ言います!?」


 ルル君の家でちょっとした(?)ドタバタがあった日の夜、やっぱり何かしらに集中していないとルル君の顔が思い浮かんでしょうがなかったので、未だかつてない集中力を発揮して、一晩で宿題を全部終わらせました。

 それを今日、満を持して提出したわけですけど、そしたらこの反応です。いい加減泣きますよ?


「いや、すまない、あまりの驚きで私も目が曇っていた、この宿題はちゃんとリリアナのやった物のようだ」


「全くもう、だから言ってるじゃないですか」


「見事に間違いだらけだ。数学以外ボロッボロだな。特に歴史と国語が酷い」


「そこですか!?」


 なんで間違ってるから私の宿題だなんて認められ方しなきゃいけないんですか!? いえ、何となく自覚はしてますけど、してますけど! でも仕方ないと思うんです、数学は前の世界とほぼ変わらないからともかく、歴史と国語は前の記憶に引っ張られて色々と混乱するんです! 何ですかこの、革命を起こしてストランド王国を平定した初代王様の幼少期の名前、ルーイ・ナポルレオンって! ナポレオンだかルイ14世だかと混ざるんですよ、何の嫌がらせですか!? しかもちょくちょく問題に出て来る東の果ての友好国、ジャッポーネとか言いながら王様が統治してますし、その名前がアケチ・ミツヒデって! 三日天下の人が何キッチリ日本平定してるんですか、ややこしいですから今すぐ徳川なり豊臣と変わってください!!


「まあ、リリアナに正しい回答なんて期待してなかったからこれでいいだろう、席に戻っていいぞ」


「先生それはそれで酷いです!」


「じゃあもう一回やるか?」


「すみませんでした」


 流れるような私の土下座に、先生は「よろしい」と頷いてもう一度私に着席を促します。

 うぐぐ、悔しいけど実際もう一度やっても、答え見ながらでないと全問正解は無理そうなので素直に席に戻ります。


「リリアナさん、何かあったんですか?」


 すると、隣に座るモニカさんから、心配そうに声をかけられます。

 見ると、その奥に座るマリアベルさんも同じような目をしているので、2人とも気持ちは同じということでしょう。そして、その理由も大体察しは付きます。


「別にルル君とは何もありませんから大丈夫です」


 そうは言ってみますが、2人とも全く信じていないようで、じーっと私を見たまま動きません。

 むむむ、とは言え、私、ルル君に操られてるんです! なんて本当のことは言えませんし、少しだけぼかして伝えますか……


「いえその、とある事情からルル君の目が直視出来なくなりまして」


「とある事情、ですか?」


 首を傾げるマリアベルさんに、私はこくりと頷きます。


「目を合わせただけで、こう、顔が熱くなって、心臓がバクバクして、しばらくの間はルル君の顔を思い出すだけで胸が苦しくなって、もうルル君になら何されてもいいんじゃないかなんて変な考えが浮かんで、でもそんなの絶対おかしいです、あり得ないです、だから私はルル君と目を合わせたらダメなんです!」


 そう、魔眼魔法については言わずに自分の状況を伝えると、モニカさんもマリアベルさんも、途端にその表情を呆れの色に変えていきました。

 あれ? なんか昨日もこんなことあったような……


「突然自覚して、認めたくない気持ちは分からないでもないですけど、素直になった方がいいですよ?」


「え?」


 この流れ、やっぱり昨日もヒルダさんと話した時ありましたよ! べ、別に、私ルル君のことなんて、こ、これっぽっちも好きじゃないですから!

 なんて叫ぼうかと思いましたが、続くマリアベルさんの言葉に、口を噤むしかありませんでした。


「そうですよ、ルルーシュさんカッコイイですから、あまり悠長に構えてると、誰かが盗ってっちゃうかもしれませんし!」


「ルル君が……?」


 ……そういえば、今まで冗談交じりにそんな可能性を口にしたことはありましたけど、本当にそうなるってことは考えたことなかったです。

 ルル君が誰か、別の女の子を好きになって、私の前から居なくなる。そんな、そんなこと……


「あああリリアナさんすみませんっ、物の例えなので泣かないでくださいっ」


「ふぇ……?」


 言われて初めて、私の目から涙が零れてることに気付きました。

 うえぇ!? な、なんでこんなに私、動揺して……うぅ、いえ、分かってます、理由もほんとは分かってます、けど……うぅぅ。


「うぅ、ほんとは私も分かってるんですよ、ルル君に感じてるこの気持ちが何なのかって。けど……」


「けど?」


「……この気持ちが本物なのかどうか分からないんです」


 ルル君が本当に人を操る魔法を持ってるんだとして、それを悪いことに使ってるだなんて思いません。

 けど、私も最近は女の子としての自分に順応して来てる気はしますけど、それでも元は男の子なんです。いくら可愛いからって、本当にルル君をその……す、好きになんてなってるんでしょうか? 正直、自信が持てないです。


「なるほど……それなら、リリアナさん、私に任せてください!」


「え?」


 マリアベルさんが身を乗り出し、私の手をがっちりと握ります。

 いつにも増してキラキラと輝く目をしてますけど、何がそんなにマリアベルさんの琴線に触れたんですか?


「私が、リリアナさんとルルーシュさんのキューピッドになります。リリアナさんの恋心、本物だって分かるように、私がじっくりしっかり教えてみせますっ」


「えぇぇぇぇ!?」


 マリアベルさんからのまさかの申し出に、私は思わず素っ頓狂な声を上げます。

 い、いやいやいや、分かるようにも何も、偽物だった場合はルル君に植え付けられた感情なわけで、その場合自覚もへったくれもないと思うんですけど……!?


 なんて困惑する私でしたけど、そもそも今はタイミングが悪かったです。先生が居て、席に戻れと促した時点で、今が休み時間であるはずもなく。


「こらそこ、リリアナとマリアベル、今はホームルーム中だ、恋バナなら休み時間にせんか」


「「すみません」」


 仲良く怒られて、マリアベルさんはいつになく恥ずかしそうに席へと戻っていきました。

 私の方はと言うと、きょろきょろと辺りを一度見渡し、ほっと息を吐きます。

 今朝はルル君が家の事情で遅れてて、ここに居なくて良かった。

 そう、心から思いました。

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