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第三十六話 お金を稼ぐのは大変です

最近平日はあんまり書き進められない……(´・ω・`)

 栄養バランスだとかそういった概念をまるっと彼方へ放り投げた、ワイルドなお昼ご飯を食べ終えた私達は、午前中よりも更に森に近い場所で魔物狩りに奔走することに。その結果というかなんというか、ある意味森らしい魔物……巨大な虫のような魔物とたくさん対峙するハメになっていました。


「ひえええええ!! 『ホーリーブラスター』!!」


 私の掌の先から放たれた光線が、射線上にいた巨大なカマキリのような魔物を消し飛ばす。

 それだけにとどまらず、その先にいた蟻や芋虫など、とにかく巨大な虫たちが光に呑まれて次々消えていく。

 精神衛生上大変よろしくない映像……を生み出したくないので、体液の1滴も残さない完全消滅です。オーバーキル? 知ったことじゃありませんね!


「おいリリィ、虫はオレらが相手するからお前は撃たなくていいっての! 普通に巻き込まれるわ!」


「はっ!? すみません、虫と見るとつい!」


 ヒルダさんから叱責が飛び、私は慌てて頭を下げる。それを見て、ヒルダさんは溜息混じりに戦闘に戻っていきました。

 いや、分かってはいるんですけどね? こう、虫を見ると体がこう、条件反射で消し飛ばそうとするかのような……

 それに何より、私以外のみんなは剣をメインに戦っているので、倒すと絵面がかなりスプラッタなことになるんですよね……あ、またマルタ君が仕留めた……あうぅ。

 けれど、だからと言って援護の手を緩めるのも何なので、適度に子供達に向かう攻撃を魔法で防ぎつつ、多すぎる虫は『ホーリーブラスター』で跡形もなく消し飛ばす。それを繰り返して、カサカサと動き回る虫を徐々に駆逐していく。


「リリアナさん、虫に何か恨みでもあるんですか……?」


「えっ、恨み? 別にありませんよ、苦手なだけで」


「そ、そうなんですか? それにしては攻撃が苛烈というかなんというか……」


 引きつった顔を浮かべるマリアベルさんに首を傾げつつ、私は死骸処理のために魔法をぶっ放す。

 獣系と違って、虫系の魔物は単体が弱いために素材の買い取りもあまりやってくれないらしいですからね、問題なく消せて正直ほっとしてます。


「私としてはむしろ、マリアベルさんが虫は平気だったのが意外なんですけどね」


「いえ、平気ってわけじゃ……なんというか、為すすべなく消されていく虫たちを見ていると、気持ち悪さより哀れみが先んじるようになってきたと言いますか……」


 私の魔法で消えていく虫を見ながら、なんだか同類を憐れむような目をするマリアベルさん。

 ……あの、その目はどういうアレなんですかね? 聞きたいような聞きたくないような……


「ああ、なんとなく分かる気がするぜ、その気持ち」


「俺達とやった時の、あの魔法陣の大きさ見た時はもう死んだかと思ったもんな」


「や、やめろよお前ら、なんか俺まであの虫が可哀想に思えてきたじゃねーか!」


「あれ!? まだ会ったばっかりなのに私はこんな扱いなんですか!?」


 魔物を掃討し終えたらしい子供達が、気付けば近くにいて口々にマリアベルさんの言葉にうんうんと頷きながら賛同を示す。

 おかしい、この子達に使った魔法は眠りの範囲魔法で、殺傷能力なんてなかったのに! なんか納得いかないです!


「リリィの魔法はなんかこう、世界の理不尽をそのまま形にしたような魔法だからな」


「うー、そんなことはないと思うんですけどね……」


 お母様にはまだまだ及ばないし、強化系の魔法が使えるようになったと言っても相変わらず効果は薄いし、使う度使う度怒られるし。むしろ使い手の私のほうが理不尽を覚えることが多い気がします!


「それはお前の使うタイミングが悪すぎるだけだろ」


「えっ、いやあの、私が使うの、大抵魔法の授業中だったり、魔物に襲われてたり、結構仕方ない状況ばっかりだった気が……」


「キシャアアアア!!」


「姉ちゃん達、喋ってるとこ悪いけど、なんかやばいの出たんだけど!!」


 私とヒルダさんの会話を遮って、魔物の雄叫びが響き渡る。

 ……ああもう、うるさいですね!


「『アイスバインド』!!」


「キシャ!?」


 空を飛ぶ……トカゲ? なんだか微妙な魔物が突っ込んできているのが見えたので、翼の表面を氷付かせて動きを止め、地面に墜とす。


「『ロックフォール』!!」


 そこへすかさず、上空に巨大な岩を生み出して墜とし、圧し潰す。

 キシャッ!? と奇怪な声を上げて見えなくなったトカゲに向け、私は腰に手を当てて一言。


「全く、人が喋ってる時は静かにしていてください!」


 ふんすっと鼻を鳴らす私を他所に、子供達やヒルダさん、マリアベルさんは1か所に集まって何やらひそひそと話を始めました。

 あれ、なんで私は除け者なんですか?


「ヒルダ姉、あの姉ちゃんなんなの? ワイバーンが瞬殺されたんだけど」


「頼もしい、頼もしいけどなんか納得いかない……」


「諦めろ、あいつはああいうヤツだ」


「暴発しなくなっても、やっぱりリリアナさんはリリアナさんなんですね……」


 小さくて何を言っているのかよく聞こえませんけど、たぶんこの感じは私にとってロクなことじゃないですね! ええ、それくらいは分かりますよ、全くもう!


「それで! この後どうするんですか? もっと奥まで行きます?」


 問い詰めたい気はしないでもないですけど、なんだか藪蛇になりそうなのでそれはぐっと堪えつつ、今後の方針について尋ねる。

 狩りを始めてもう何時間か経ってますし、元々体力の多いヒルダさんや、戦闘中ほとんど動いてない私はともかく、他の子にはそろそろ疲労が見え始めています。だから、引き返すならそろそろかなーと思ったんですが……


「ああ、そうだな。魔物の素材もそれなりだし、ここらで退いて売り払いに行くか。ほら、帰るぞお前ら」


「「「はーい」」」


 案の定、ヒルダさんはそう言って何事もなかったかのように子供達を促し、撤収準備に入ります。

 と言っても、特に荷物を拡げていたわけでもないので、今倒したトカゲもどきの素材を適当に獲って鞄に仕舞い込むだけですけどね。


「……これ、どうやって持ち上げるんだ?」


「お、重すぎる……!」


 と思ったら、子供達が私の出した岩に大苦戦してたので、慌てて魔法でどかしてあげました。

 うぐぐ、年下からのジト目が突き刺さる……


「そ、そういえば、今日の戦果は売るといくらくらいなんですか?」


 誤魔化すように、ふと気になったことを聞いてみる。

 今回の魔物の大量発生は、スラムにとって脅威なのは間違いないですけど、同時にかき入れ時だとも話していました。

 これが生活費になるのなら、それなりになってないと辛いと思いますけど……


「今日はワイバーンも狩れたしな、10000メルくらいにはなったんじゃねーの?」


「う、うーん、10000ですか」


 お金の価値は、大体1メル=1円程度に考えればいいですけど、つまり今日は私達8人がかりで一日働いて10000メル。1人あたり1250メルです。うーん、労働基準法も真っ青ですね!


「冒険者ギルドで依頼受けてやったらもっと貰えるんだけどな。完全なフリーランスじゃそんなもんだよ」


 冒険者ギルドというと荒くれ者ばかりで実力主義というイメージで、それは間違ってはいないんですけど、だからと言って年齢問わず実力さえあれば! というほどの物でもなく、登録できるのは15歳になってからです。

 だからそれは仕方ないんですけど……


「でも、それだと武器の整備代を考えたら赤字になりませんか?」


「まあな。だから、ほとんど整備もせずにそのまま使ってるよ」


 言われて、改めて見てみれば、子供達の剣はどれも刃こぼれや錆びで結構痛んでいました。

 あれで斬れるなんて、実はこの子達見た目よりも強いんじゃ……?


「じゃあ、武器とお金、どっちの問題も解決できそうな場所に行きましょう!」


「あん? そんなとこあんのか?」


「決まってるじゃないですか」


 首を傾げるヒルダさんに、私は悪戯っぽく笑いながら、種明かしをするように言いました。


「ルル君の家ですよ!」

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