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第十二話 問題行動も偶には役に立ったようです?

「それで、第二訓練場を崩壊させたと」


「いえ待ってください、崩壊まではさせてません! ただちょっと中央あたりが悲惨なことになって使い勝手が悪くなっただけです! それにあれくらいは先生が魔法ですぐに修復できるって言ってました!」


 魔法の授業が終わって、お昼休みの時間。私はルル君の前で正座させられていました。

 理由はもちろん、先ほどの授業でのド派手な爆発の件について。どうも校舎のほうからも爆発が見えたらしく、何かの事故が起きたかとしばし騒然となったそうです。


「大体リリィは得意な属性だってちゃんと制御出来てないんだから苦手な属性なんて早すぎるよ」


「そ、そんなことないですよ! 最近は『極寒地獄(コキュートス)』以外にも大規模上級魔法覚えましたし!」


「いや、リリィが覚えた上級魔法って、大抵消費魔力が多くて高難易度って呼ばれてるやつじゃないか。ていうか、リリィは制御の甘さを魔力量で強引にねじ伏せすぎだよ、だから暴発ばっかりするんでしょ?」


「うぐぐぐ……」


 ひ、否定できない……確かに、上級魔法の中でも大規模上級魔法と呼ばれる物は、大抵が魔法の制御より一度発動するのに必要となる魔力量の多さこそが上級魔法と呼ばれるゆえんとなっているので、魔力量だけが取り柄の私にとっては都合が良いんですよね。何より見た目が派手ですし。


「しかし、苦手な属性の魔法であんな規模の魔法になるなんて、リリィってほんとにカタリナ・アースランドの娘なんだな」


「待ってくださいヒルダさん、その口ぶりだと今の今まで信じてなかったように聞こえるんですが!?」


「いやうん、ぶっちゃけなんかの間違いかと」


「ひどい!?」


 これでも最近益々伸びてきた黒髪と白い肌はお母様によく似てるって近所の人からも褒められるのに!

 まぁ、髪に関してはそろそろ剣を振り回す邪魔なので切りたいんですけど……でもお兄様が反対するんですよね……


「いやだってなぁ……ちっこいし、全然凄そうに見えないし、実際剣とかめっちゃ弱かったし、あとちっこいし」


「2回言った! ちっこいって2回も言いましたね!? まだこれからなんです、成長期なんですぅ!! うわぁぁーーーん!!」


 第一お母様も結構体付きは華奢で線が細いんですよ! 胸はそれなりにありますし身長も人並みより少し低い程度でちっちゃいわけじゃないですけど!


「げ、元気出してくださいリリアナさん、私達まだ10歳にもなってないんですから、まだまだ伸びますよ。カタリナ様だって学生時代はかなり背が低かったと聞きますし……」


「うぅ……私の味方はモニカさんだけです! これからもお友達でいてくださいね!」


「お、おともだ……ふぇえええええ!?」


 励ましてくれるモニカさんに、感極まって抱き着くと、顔を真っ赤にしておろおろし始めました。

 か、可愛い。やっぱりお説教が終わったあと、頑張ってお昼に誘って正解でしたね!


「はぁ……まあわざとじゃないのは分かったからこれくらいにしておくけど、魔法使う時はもう少し気を付けなよ? ただでさえリリィは体弱いんだからさ」


「分かりました! けどルル君、あんまり溜息吐きすぎると幸せが逃げるって言いますよ?」


「誰のせいだ誰の」


 そう言って、ルル君はお説教のためにずらしていた椅子を正面に戻し、テーブルの上に置かれたお昼ご飯を食べ始めました。

 テーブルは4人掛けで、私もルル君の対面に座り直し、ルル君の隣にはヒルダさんが、私の隣にはモニカさんがそれぞれ座っています。

 今日のメニューは、私とモニカさんが少な目のパスタ、ルル君がカレーで、ヒルダさんは大盛のカツ丼です。この学園ではお昼ご飯はいくら食べてもタダなので、食べ盛りの子供にとってはありがたいです。

 まあ、私は食が細いのであんまり意味ないですけどね! ヒルダさんとか、なんであんなに食べれるんでしょう? 体が大きいからと言われたらそれまでですけど……ぐぬぬ。


「どうしたリリィ、オレのことそんなジロジロ見て」


「いえ、どうしたらそんなに大きくなれるのかなぁと」


 私もヒルダさんくらい大きくなれば、もう少し力も付いて剣技も上達すると思うんですよね。そうでなくとも、今以上に訓練に割ける時間が増えるはずです。何せ、今はどうしても途中に細かく休憩を挟まないと倒れちゃいますし。

 ルル君みたいに一日ぶっ続けでお父様と訓練出来ればなぁと何度思ったことか。


「どうって言われてもな……気づいたらこうなったとしか」


「なんですかそれ羨ましいです! どうせすぐ伸びるなら少し分けてくださいよー!」


「んな無茶な……」


 うー、と唸りながらふと横を見れば、ルル君も私と似たような目でヒルダさんを見ていました。

 やっぱり、男なら身長はなるべく大きくありたいですよね。……あれ、でも小さいままでもあんなに力があるルル君が大きくなったらどうなるんでしょう? もっとすごい力持ちになるんですかね?

 ムキムキマッチョなルル君……な、なんか嫌です!


「ルル君は大きくなっちゃダメです、今の可愛いままでいてください!」


「なんで!?」


 こう、ルル君を見ていると親近感が湧くと言いますか。前世で私を可愛がってた人達の気持ちが分かると言いますか。

 ともかくルル君は今のままでも十分強くてかっこいいんですから、見た目くらいはそのままでいるべきなんです! そしていつか抱き枕にします! 今はどっちかというと私が抱き枕にされるほうですけど!


「つーか、リリィも変なやつだな。普通女ならモニカみたいなのを羨ましがるんじゃないのか?」


 そうしてヒルダさんが指し示す先にあるのは、9歳にあるまじき膨らんだ胸。現時点でこれなんですから、将来どんなことになるのか想像も付きません。


「あ、あまり見ないでください……恥ずかしいですから……」


 そそくさと、集まった視線から胸を隠すように腕で体を抱いて恥ずかしそうにもじもじするモニカさん。

 うーん可愛い……思わず悪戯したくなっちゃいそうです。


「モニカさんはとっても可愛くていいですけど、私はやっぱりかっこよくなりたいんです! 強さはそのための手段みたいなものです」


 今は体が女の子ですから、面と向かって男らしくなりたい! なんて言えませんけど、やっぱり男らしさとかっこよさは密接に結びついてますからね、かっこよさを目指していれば自然と男らしくなっていくはずです! たぶん!


「かっこよくねぇ……それなら別に、魔法だけ極めればいいんじゃないのか? 魔法使いだって強ければかっこいいだろ?」


「それはそうですけど、出来ないからって逃げてたらカッコ悪いじゃないですか。せっかくお父様やお兄様みたいな凄い人が傍にいて、しかも授業でも習うんですから、頂点を目指さなきゃ男が廃ります!」


「は? 男?」


「間違えました、女が廃ります!」


 おっと、うっかりしてましたね。ルル君はいつものことだって顔してますけど、ヒルダさんから少しばかり変な目で見られちゃいました。注意しないと。


「すごいですね、リリアナさん……私なんて、回復魔法くらいしか取り柄がないのに……」


「いやいやモニカさん、謙遜はいいですよ。それにそもそも、回復魔法だけじゃ魔法実技でAクラスになれるわけないじゃないですか」


 試験では案山子を用意し、それに対して放たれた攻撃魔法の精度や規模を見て評価を決定する決まりになっています。『アクセル』や『ブースト』のような自己強化系の魔法が駄目なのは、どうしても本人の身体能力によって性能が左右されてしまうので、純粋に魔法の評価を下すのに適さないからだそうです。

 それは回復魔法も同じこと。まさか、試験のために怪我人なんて用意するわけにもいきませんし、試験で評価することは出来ないはず……


「いえ、その……あの日、リリアナさんが使った大規模魔法で凍えてしまった人が続出したのでその……それを治して回ってたら魔法試験の評価でAを貰えたんです……はい」


 言いづらそうに、それでもハッキリと紡がれた言葉に、私はそっと目を逸らします。なんだかルル君とヒルダさんの視線が集中してる気がしますがきっと気のせいです。むしろ私のおかげでこうして正しく評価される生徒が増えたんですから褒められてしかるべきだと私は考えるのです、はい!


「それ自体はとっても感謝してます。ただその……このままだと全然授業についていけなくて……せめて攻撃魔法の一つでも覚えたいなぁ、と……」


 不安そうに縮こまりながら、こちらの顔色を伺うように話すモニカさん。

 くっ、上目遣いとはあざとい! でも可愛い! 可愛いは正義なのでこれはなんとかしてあげるしかありませんね!

 だから、ルル君もヒルダさんもそんな非難がましい目で私を見ないでください!!


「分かりました! 元々私のほうから魔力制御の仕方を教えてくださいって頼んでたんですし、今日の放課後からは一緒に魔法の特訓しましょう! 剣技の特訓は魔法がひと段落してからでも遅くないでしょうから!」


「リリアナさん……ありがとうございます……!」


 私の手を取って、ぱあぁっと笑顔を見せるモニカさん。

 今日もまた2人と剣の特訓をしたかったんですけど、魔法もどこかで特訓したいとは思ってましたし、ちょうどいいですかね。こうして考えると、魔法と剣技を両方極めようなんていう試みがいかに難しいか実感します。どうしても、時間が足りなくなっちゃいますし。

 まあ、魔法の制御をマスターしてから、後でゆっくり剣技を特訓しても遅くはないですよね。


「行きますよモニカさん、ひとまず目指すは学内魔法大会優勝です!」


「い、いや、さすがにそれは無理じゃないかなぁと……」


「えい、えい、おー! さぁ、モニカさんも一緒に!」


「は、はい……」


「えい、えい、おーー!」


「お、おー」


 2人で拳を突き上げ、気合は十分です。

 食堂でやったせいで周りから変な目で見られてる気はしますけど、テンションの上がった私には関係ありません。

 学内トップ魔法使いの称号、必ずや物にして見せます!





「なぁ、ルルーシュ」


「何、ヒルダ?」


「リリィのやつ、学内大会は初等部と中・高等部で別れて開催されるって知ってるのか?」


「知らないからあんなにテンション上がってるんだと思うよ」


「そ、そうか……じゃあ、魔法大会より剣技大会のほうが先に開催されるってのも……」


「知らないと思うよ。リリィだし」


「…………ほっといていいのか?」


「やる気出してるところに水を差すのも、ね?」


「……まぁ、そうだな」

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