プロローグ
初投稿です。冒頭は異世界系っぽいですが、違います。
『「ようこそいらっしゃいました。勇者様」
気がついたら、目の前のお姫様っぽい服装をした人から挨拶をされていた。
あまりに突然の事態に声も出なかった。
「ああ、申し訳ありません。私はランドセル王国王女リーナ・ランドセルと申します」
いや、挨拶とかの問題じゃないんだが・・・
だんだんと冷静になってきたので状況を確認してみる。
目の前にはお姫様。部屋の端には綺麗に整列した騎士っぽい人達。そして足元にはうっすらと青白く光る魔法陣。
ああ、これはあれか。勇者召喚ってやつか。
しかし全くテンションが上がらない。なぜだろう。
「では付いてきてください。王様に謁見していただきます」
そういってお姫様は歩き出した。状況が状況なので黙って後ろをついていく。
歩き始めて一分ほどだろうか。王様のいる部屋についた。
「行きますよ」
そういってお姫様は俺の手をつかみ引っ張った。
そして王様の前まできた俺は横のお姫様を真似て跪いた。
「よくいらした。異世界の勇者よ。早速だが頼みたいことがある。」
ほら来た。勇者召喚系のテンプレだ。どうせ『この世界を救ってくれ』だの『魔王を倒してくれ』だろう。
「この世界を救って欲しい!」
俺は即答した。
「お断りします」
「では色々と準備をしなくては・・・なぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?」
断られると思ってなかったのか王様の動揺っぷりは凄まじいものだった。横のお姫様も目を丸くしてこちらを見ている。
「な、な、何故だ? 金か? 金なのか? それなら王家の財宝を自由に使っていい」
「いいえ、お金の問題ではありません。」
「ならば何が欲しい? できる限りのことは叶えよう」
王様は必死だった。
「あの、それはできないと思うので元の世界に返してくれませんか?」
「なっ! 少し待ってくれ。そ、そうだ! 女はどうだ? ほれ、あそこにいる美女達などはどうだ?」
そうして王様が指差した先を見ても美女などいなかった。いたのは古典の教科書にのってそうな顔の女性ばかり。
・・・なぜせっかくの異世界でテンションが上がらないかがわかった。美女・美少女がいないのだ。異世界に必須の美女・美少女が。
そしていけると思ったのか王様がまた話しかけてきた。
「ほれ引き受けてくれるか?」
「いいえ、帰らせてください」
王様はもの凄い顔をしていた。
「何故だ? 美女ばかりではないか? 何が不満なのだ?」
「呼ぶ時代を間違えましたね。きっと平安時代頃の人たちなら喜んで引き受けてましたよ」
「ヘイアン時代? なんだそれは? いや、そんなことよりも。そうだ! 力だ! 勇者召喚で特殊な力がついたはずだ! 興味ないか? いや興味あるだろう?」
もう王様は必死だった。
「はぁ、それもそうですね」
もう面倒くさくなった俺は適当に返事をしてしまった。
「そうか、そうか。では、ステータスプレートを渡そう」
そういって渡される一枚の紙。
【名前ー東京太郎
身体能力ー超強い
魔力ー超凄い
魔法ーとりあえず全部】
・・・なめてんのか?
とりあえずクシャッとした。
「あぁぁ、何をやってるんだ! その一枚しか無いのにぃ!」
なにやら王様が叫んでいるがそんなのは無視だ。
さっそくだが王道の空間魔法でも使って帰るか。
「では、帰ります。さようなら」
「なっ! お待ちください! どうかどうか」
何やらお姫様が必死に叫んでいるが、もうすでに俺は青白い光に包まれ転移が始まっていた。
「今行くぜー! カナちゃーん!」
好きなキャラの名前を叫んで魔法を発動する。
さぁ、これからこの力も利用してオタクライフの始まりだ。』
「ってな感じの新作にしようと思うんだがどうかな?」
私立光述学園のとある教室で眼鏡をかけた男が自信満々な様子で言った。
その教室に学校机が四個あり、それぞれが黒板に向かって並んでいる。そして机の上にはノートパソコン。
そんな机に奥から女子二人、男子二人が座っている。
「正直に言うわ。論外」
一番奥に座る女子が冷たい声で言う。その言葉を聞いて、男は「グハッ」と言いながら膝をつく。
「文章が幼稚すぎるわ。こんなの小学生でも書ける。それに主人公はどうしてこんなに冷静なのかしら?それに―」
彼女は止まらなかった。男の文章の間違い、表現の稚拙な部分、設定の甘さなどを次々と指摘していく。
「それくらいにしといてやれよ」
「そうだよ、あんまりやると拗ねちゃうよ」
なかなか終わらない指摘を見かねた残りの二人が止めに入る。
「お前ら…」
「まあ、いくら名前が思いつかなくてもランドセルって名前は無いな」
「ゲボァ」
止めるついでにトドメも刺したようだ。眼鏡の男はうつ伏せに倒れてしまった。
教室が静まり返る。そんな静寂を破ったのはトドメを刺した男子だ。
「俺のせいじゃないよね?」
「・・・貴方のせいよ。私は指摘しただけだし」
「もう、二人共だよ。言い過ぎだよ」
「それならお前はどう思ったんだよ?」
「えっ? 私? 確かにランドセルはちょっと」
「ほらみろ、だいたい―」
残りの三人がそんな話をしている途中、教室のドアがノックされる。
その音を聞いて、倒れていた眼鏡の男子は瞬時に自らの席に座る。そして眼鏡を軽くかけ直し、服についたホコリを取って入室の許可を出す。
「どうぞー」
ガラガラと開けられたドアから少し俯き気味で暗い雰囲気の女子生徒が入ってくる。
「あの、失礼します。ここがお助け部ってきい
「「ようこそオタク部へ!!」」
へ? あ、え?」
女子生徒の小さな声に被せる形で男子二人が声をかける。
「あのー? オタク部って? 先生からはお助け部って聞いたんですけど」
女子生徒は聞いていた内容と異なる部活名が出たことに戸惑いを隠せない様子であった。
「そこのバカ二人は放っておいて構わないわ」
「そうだよ、ここはお助け部であってるよ。ほらそこ座って」
残りの女子二人が訂正を入れ、椅子に腰掛けることを勧める。そして、一番奥に座る女子が言う。
「貴方の依頼を聞かせて」
こうして彼ら彼女らの部活動が始まる。