後編
ピーンポーン。
インターホンが、電子音で家の主へ来客の存在を知らせる。
ひとりでここまで来たのは初めてだ。
いつも、青木先輩と一緒じゃないと、訪れたことはない。
それは、家で過ごすときにも青木先輩が近くのコンビニまで迎えに来てくれるからだったことを改めて思い知る。
(……居ないのかな?)
部屋の灯りはついていたし、定時で今日は帰宅したことも知っている。
なのに、反応のないドアの前で、あたしは小さくため息をついた。
(もしかして、避けられてる??)
そうだったらショックだなぁと思いながら、もう一度、今度は少し長めにチャイムを押してみる。
すると、間髪入れず「どちらさま?」と不機嫌そうな声が聞えてきた。
「あ、あの、青木先輩、わたしっ…………」
ガチャッ……ドコンッ!!
名乗れなかったのは、急に頭が真っ白になったからだった。
真っ白になった原因は、勢いよく開いたドアに頭がぶつかったからだった。
「ああっ、宮下悪いっ!!」
結構な衝撃に、頭を抑えてしゃがみこむと、ひどく焦った声が近くで聞えて、痛む箇所を抑えているあたしの手に、大きく暖かい手が重なった。
「おまえ、なんだってそんなドアの近くに居るんだよ、危ないだろうが」
「ドアが外開きになるって知ってるのは青木先輩だし、開くタイミングも調節できるのは先輩のほうじゃないんですか?! いっつも、あたしそう言われるんですけど!!」
あまりの痛みに、つい口調がきつくなる。
仲直りしに来たのに、どうしてこうなるのかと泣きたくなる。
(ああ、あたしバカだ)
ぐっと、次にくるはずの言葉を待っていると、ふいに身体があたたかいものに包まれた。
「………………悪かった」
謝罪の言葉が聞えてきたのは、先輩の腕に包まれているのだと気が付いて固まったあたしが、おずおずと先輩の背中に手を回してからだった。
言葉とともに、ぐっと強く引き寄せられながら玄関に倒れこむ。
後ろで、バタンとドアが閉まると、一層強く抱きしめられた。
「あたしも、ごめんなさい」
きっかけが、なんて考えていた自分がバカらしくなるくらいに、どうして3週間も離れて居られたんだろうかと思う。
ようやく戻れた居場所に安心して、あたしは彼に身を任せた。




