表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

前編

 最近、事務所のドアがリニューアルした。

 社員一同が念願だった、自動ドアになったのだ。

 最初の頃は、ウィーンと機械音をたてて開くドアに、なんだか新鮮さを覚えていただのだけど、数週間経って、すごく重要な問題に気が付いた。


 「そういえば、樹里、最近青木先輩とどうなってるの?」

 帰りのロッカールームで、訊かれたエリナの一言に、ずどーんと落ち込むポーズをとる。

 「喋れてません」

 「は?」

 「3週間前に喧嘩をしまして。冷戦状態です」

 「……はぁ?」


 呆れたようなエリナの声に、ますます落ち込む。


 「え? 3週間?? ってことは、あと1週間経ったら、1ヶ月?」

 自然消滅でも狙ってるのかと思うくらいの期間よ、と付け加えられて、あたしはガクリと首を落とした。

 「だって、きっかけがないんだもの」

 「? きっかけ?」

 

 そうなのだ。

 今までも、青木先輩とあたしは頻繁に喧嘩をしているので、喧嘩自体は特に問題ない。

 ただ、これまでと決定的に違うのは、仲直りまでの期間だった。


 「一体、どうしたのよ? 何? いつもと違う事情でもあったの?」


 さすがに心配になったのか、エリナが優しく問う。

 けれど、喧嘩自体はいつものくだらないやりとりなので、問題ないのだ。

 問題なのは……。


 「ドアが、自動ドアになったの」

 「…………ごめん、それって、あの事務所の入り口のドアのこと?」

 「そう。それが、いつもと違う原因」


 どういうことかと視線を送ってくるエリナに、ため息をついてあたしは口を開いた。


 「あたしたち、いつもドアで仲直りしてたの」

 「?」

 「ほら、前までのドアって、外開きのドアだったじゃない? あたし、ドアを開けるときに、よく青木先輩にぶつけてたんだよね」


 『ドアの外で歩いている人に注意! ゆっくり開けること!!』


 そんな張り紙があっても、うっかり勢いよくあけてしまうわたしの、一番の犠牲者が、青木先輩だったのだ。


 (いつも、ぶつけてしまったことを謝りながら、流れで「この間はごめんなさい」って、いつも謝れたのに)


 そんなきっかけでもなければ謝れないくらい、彼に話しかけるのは、勇気がいるのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ