2.試行回数
2.試行回数
試行とは、試すことです。
頭の中での組み立てにも限界があるので、文章に起こすことは必須です。
この試行回数は、推敲によって稼ぐことができます。
何度も読み直し、あれこれと試行錯誤を繰り返し、洗練された文章にする。
すっきりした文章にするには必要不可欠なのです。
ただ、この試行回数は執筆の時からでも増やせるのです。
「何で執筆段階から?」と思われるかもしれません。
しかしその利点は無視できないほど大きいのです。
例えばわたし個人の経験ですが……
「うまく描写できなーい。もう寝ようっと」
「この表現なんかしっくりこなーい。ちょっと気晴らしするか」
恥ずかしながら、こんなことがよくあります。
時間はあるのに執筆が進まない、わたしだけ?
……ではないと信じています。
こういう時こそ、試行回数を増やすことで山を越えることができます!
わたしの場合、行き詰まったら同じ意味の文章を5パターン書くことにしています。
その中から、雰囲気に合っている物を3つ選んで置いておきます。
そして推敲段階でふるいにかけ、生き残った一文を採用します。
例えばわたしの連載小説で……
「あたしにも……デレデレしなさいよ、バカ」
というセリフを採用したのですが、それに至るまでに
「あたしでもデレデレしなさいよぉ……」
「あたしではデレデレ、しないの?」
「あたしにもデレデレ、しなさいよ……。バカ」
「あたしにも……デレデレしなさいよ、バカ」
「バカ……。あたしでもデレデレしなさいよ……」
この5パターンを考えました。そしてキャラの雰囲気から
「あたしにもデレデレ、しなさいよ……。バカ」
「あたしにも……デレデレしなさいよ、バカ」
「バカ……。あたしでもデレデレしなさいよ……」
こうなり、最終的に
「あたしにも……デレデレしなさいよ、バカ」
推敲でこれを採用しました。
もちろん一回で済めばそれでいいのですが、プロ作家だって何度も編集の指示をもらうんだと思いながらやっています。
一つのコツがあるとすれば……
書いた文章をそう簡単に消さないことです。
わたしは邪魔にならないよう数行空けて、放置します。
消すと忘れますが、消さないとどこかで目に入っているので「この表現がしっくりくる!」という場所にピンポイントで入れられます。
最初は面倒かもしれませんが、しばらくこの方法を試していると、自分が何パターン書けばいい文章が一つの混ざるのかわかるようになります。
そうなったら、この作業は苦ではなくなっているはずです。
ただ「どうせ消すなら最初から書かなければいい」と思うかもしれません。
しかし、です。
書いた以上、文にした以上、それは必ず力になります。
消したとしてもそれは経験になり、次に詰まった時の肥やしになるのです。
消されるために生まれた文章なんてありません。
それは必ず、意義を持って作者様たちの心に残るのです。
洗練されら文章は磨かれたダイヤモンドのようです。
キラッと光り、読者の目を引きます。
文章は常に目にするものである以上、最も気を遣うべきところなのかもしれません。