表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

リザレクション 祈りの果てに、光は宿る

第1章:忘れられた村の少女

そこは地図から消えた村だった。寒さと飢え、静寂と闇。誰も訪れず、誰にも知られず、ただ季節だけが流れていく。


少女は一人そこにいた。名はない。ただ、朝が来るたびに目を覚まし、干からびた地面に膝をつき、祈った。


一日百回、祈り続ける。

「どうか、誰かの命が助かりますように」

自分のことではなかった。空を見上げても、星は見えない。けれど、少女のまなざしは澄んでいた。


野犬が倒れていれば抱き上げ、傷ついた鳥がいれば葉で包み、飢えたウサギには自分のパンを与えた。孤独と苦しみの中、少女の手はただ誰かを癒すために動いていた。


そんな日々が、どれほど続いたのか。ある年の冬、少女は力尽きた。


誰にも看取られず、冷たい夜に、そっと命の灯が消える。

しかしその瞬間、世界に一筋の光が走った。


第2章:命の母

少女は死ななかった。

彼女の魂は、やがて上位の存在──命の母のような次元へと引き上げられる。


あらゆるものを包む暖かな波動。彼女の中にあった優しさと無垢が、神性と交差し、新たな核を宿す。


そしてある日、彼女は再び転生する。

場所は、現代の日本。


第3章:癒しの少女

彼女の名前は、今は結月ゆづき

高校に通うごく普通の女の子。けれど、どこか浮いていた。


転校してきたばかり。友だちはいない。だけど彼女には不思議な力があった。


誰かが怪我をすれば、そっと触れるだけで痛みが和らぎ、クラスで泣いていた子に声をかければ、心の霧が晴れる。


彼女自身はその力を不思議に思っていた。理由はわからない。

でも、誰かを助けることが当たり前のように感じるのだった。


ある日、通学路で倒れていた猫を抱き上げたとき、ふと、あの村の風景が脳裏をよぎる。


「……私、こんなふうにしてた……どこかで……」

その感覚は一瞬だった。でも、彼女の心には灯がともった。


最終章:ウズメと出会う

春のある日。

担任が黒板の前に立ち、新しい転校生を紹介する。


「今日から皆さんのクラスに新しい仲間が加わります。〇〇ウズメさん、どうぞ」

結月はふと顔を上げる。


教室に入ってきたのは、少し影のある目をした少女。だけどその目は、どこか結月に似ていた。


二人の視線が交差する。


そして──ウズメが、少しだけ微笑んだ。


それは、世界の闇を照らす、小さな始まりだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ