第6話:遭遇
◆前回までのあらすじ◆
助けを呼ぶ声を聞き、冥界竜リュウジはその声の元へと向かったのであった。
助けを求める声に導びかれて辿り着いたのは、僕を攻撃してきた人間の国の近くに広がる森の一角だった。
目を凝らして見ると、森の一角で一匹の巨大な蛇が人間に甚振られていた。
助けを求める声はその巨大な蛇――いや、よく見ると短い手足がついているので龍なのかな――の声なのだろう。
――あの形状の魔獣は、猛毒と高い再生能力を持つ亜竜種のヒュドラだね。
僕の小さな疑問をくみ取って、友が補足してくれる。
ヒュドラといえば首がいっぱいあるイメージだったが、この世界では少し違う様だ。
(僕を呼んだのは、君かい?)
僕は友と話すときと同じ要領で、傷ついた魔獣へと思念を飛ばす。
(助けに来てくれたの? お願い、助けて。私、まだ死にたく、ない)
すると瀕死のヒュドラから思念が返ってくる。
やはり思った通り、助けを求めていたのはあのヒュドラだったのだ。
――む。また人間たちから【解析】系のスキルを使用された様だ。奴らは私達のことを敵性対象として認識していると思って間違いないね。気を付けて。
友が警告してくれる。
「スキルで解析したわ。
種族名『冥界竜』、個体名『リュウジ』――」
純白の聖女が仲間に情報を伝える。
「なっ、個体名ありっつー事は、ユニークモンスターかっ!」
「聞き覚えある名だ。
昨日、突如世界に認識され、王国上空に現れたモンスターだ。国を挙げてで迎撃し撃退したと聞いたが、まさかこんなすぐ再来するなんて――」
金ピカの鎧剣士と、黒髪の軽戦士と思われる男二人が報告を受けて驚きの表情となる。
「モンスターランクはSS。
所持スキルは【竜の息吹】【鱗牙再生】【鱗牙変形】【炎雷無効】【固有領域】【亜空切断】【状態変化無効】【精神攻撃無効】――
熟練度が足りなくてスキル名までは解析できなかったけど、ユニークスキルも一つ所持してるわ」
純白の聖女が読み解いた情報を次々と伝える。
解析のスキルを使われるとここまで情報を読み取られてしまうのか。
僕の知っているアニメなんかでも【鑑定】系のスキルはチート扱いだったし、相手にそれを扱える者がいると本当に厄介だなと思う。
「ランクSSだと!? 天災級の化け物じゃねーか」
「しかも複数のスキル持ち。多分だけど【固有領域】で気配遮断の効果を付与した結界を纏ってたんだろう。
ここまで接近されるまで気づけなかったなんて、迂闊だった」
二人の男性冒険者が最大限の警戒態勢でこちらを睨みつけてくる。
相手に言われて思い出す。あぁ、そういえば結界を張りっぱなしだったな、と。
別に戦いたいってわけじゃないんだよな。なんとかあの魔獣を助けられないかな。
どうするかと思考を巡らせていると、黒髪の青年がとんでもないことを口にする。
「ベガ、すぐにそのヒュドラを始末してくれ。
俺とシーナがヒュドラを抑えながらで戦えるような相手ではない。時間は俺が稼ぐ」
そう言うと、黒髪の軽戦士が巨大な光の剣を頭上に作り出す。
「分かった。もう素材集めなんて言ってらんねぇからな。一撃で屠るぜ」
「ヒュドラの毒の無効化が不要になったら、すぐさま防御結界を展開するわ。
領域が展開できるのはあっちだけじゃないことを見せつけてやるわ」
その指示を受けて、金ピカ剣士と白い聖女が動く。
ちょっと待ってくれ、なんでヒュドラを殺すって事になるんだよ!
相手の作戦を聞いてビックリする。もう戦いたくない、なんて言ってられないな。
僕は頭の中で念じて戦闘に不要な効果か付与されたままであった結界を解除する。
「くっ、なんて圧だ。こんなのを目の前にしたらB級冒険者以下じゃ立ってすらいられないだろ」
結界を解いただけで、相手が少し怯む。このまま逃げ出してくれればいいんだけど。
ガオオオオオオオォォォン!!!(ヒュドラを傷つけるのはやめろ!)
威嚇のために、思念をのせた咆哮を放つ。
「ぐうぅ。くそっ、このままじゃ奴の圧に飲まれてしまう。
一気に勝負に出るぞ!」
「おう! スキル【剛力無双】【剣気解放】最大出力!!」
なんだか分からないが、相手がやる気を出し始める。
なんで撤退しないんだよ!
そうして、僕の思いとは裏腹に人生初の対人戦闘へと事態は移行していくのであった。
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