第57話:戦闘のあと
◆前回までのあらすじ◆
魔族シャルルとの戦いは、リュウジの竜の息吹によって勝利を収めたのであった。
※本エピソードは仲間のロックからの視点となります。
我の目の前で繰り広げられていたのは、我の実力では手出しすることすらできない程の超越者同士の戦いだった。
戦っているのは我が主人――過去に『失敗作』や『ガラクタ』と言われ廃棄された我を『仲間』として受け入れてくれた心の広きお方であり、さらに我に『ロック』という素晴らしい名前と、強力な武装を与えてくれた、尊敬という言葉では足りない、崇拝に値する現在の主人である。
少年の姿である我が主に対峙するのは、幾多のスキルを有する雌型の『魔族』だった。
その戦闘能力は凄まじく、我が双眸でもその動きを捉えきれぬ程の速度と、鑑定眼でも解析しきれない無数のスキルを有した難敵だ。
我も主人の役に立とうと、与えられた武装にて支援射撃をしたのだが、その攻撃は魔族の強力なスキル効果によって弾かれてしまった。
自らが繰り出せる最大威力の攻撃が難なく防がれ、なすすべが無くなってしまった。
それ以前に、一度の魔力貯蓄で撃てる最大弾数の三発を撃ち切り、行動不能となった我はその戦いを見届けるしかできない状態だ。
魔族の放った爆裂攻撃を受け全身に大きなダメージを負い、わずかに回復した身体も三発目の魔導波動砲を撃った反動で、再び破損し行動不能になってしまっていた。
魔族は奥の手を繰り出す。
奴は自らが生み出したゴーレムから魔力と生命力を吸収し、一時的に戦闘能力を限界以上に引き出したのだ。
我が緋慧眼が観測した魔力量は信じられない程の数値であった。
(こ、こんな数値、一個体が引き出せる魔力量を遥かに超えている――)
全身の生体感覚が危険を察知し、けたたましい警戒信号を体内で発生させている。
さらに魔族は、そうして集めた魔力を右手に集中し、主へと攻撃を仕掛けた。
全身に纏っていた魔力だけでもとんでもないものであったが、それを一転に集中させて繰り出した攻撃は、どう考えても対処することが出来ない究極の一撃だと思われた。
我は主に回避してくれと声を出しかけたが、なんと主はその攻撃に対して反撃の一撃を放ったのだ。
――竜の息吹――
それは我に与えられた武装の元になった主のスキルだ。
だが、その威力は魔導波動砲とは比べ物にならない程の威力であった。
金色の閃光となって放たれた吐息は相手の攻撃とぶつかり合う。数秒のせめぎ合いとなったが、我らの声援を受けた主が一気に火力を上げ、相手を諸共に消し飛ばしたのだった。
魔族を吹き飛ばした後、我が主が力尽きたように倒れ込む。
「我が主っ――」
まだ身体が回復しきれていないが、それでも体が勝手に動いた。主に何かがあったらと思うと居ても立ってもいられなかった。無理に動いたため、身体に亀裂が走るのも構わずに主の元へと駆け寄る。
「リュウジ、様っ……」
同じ主とする従者のノインも背に大きな傷を残しているが、その傷をおして這いずるようにして主の元へと移動する。
我とノインが主のもとへと駆けつけたのはほぼ同時であった。
「もし傷があるならば、私の【妙薬生成】で回復させられます。
外傷は――」
ノインは自らの傷を顧みずに、必死に主の身体を確認する。
「我の緋慧眼で主の状態を確認した。
大丈夫だ。外傷はない。
最後の技にて全魔力を使い果たしたのみ、魔力枯渇で意識を失っているだけの様だ」
我はアイカメラに宿る【鑑定眼】を使用して、主の状態を確認し、その結果をノインに伝える。
「魔力枯渇ならば、私の魔力を――」
するとノインは自らの魔力を主へと流し込む。
その方法は、我の有している知識では『接吻』と呼ばれる行為であった。
主人を仰向けに寝かせ、口移しで自らの魔力を主人の体内に流し込む。
直接対象者の体内に魔力を流し込むことで、単に接触してでの魔力譲渡よりも効率よく魔力が主人へと補填されていく。
「それ以上魔力を譲渡してしまうと、自らの傷の回復が――」
想定を超えて魔力を譲渡するノインの姿を目に、我は思わず声をかける。
このままではノインも魔力枯渇で倒れてしまうだろう。二人とも倒れてしまったら、我はどうしたらいいか分からない。
強気で対応はしていたものの、我の本来の戦闘力では二人を守り切る自信はない。
「う……」
そんな、一人狼狽える我を他所に、 魔力を回復した主人が目を覚ましたのであった。
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