第56話:魔族シャルルとの戦い④(決着)
◆前回までのあらすじ◆
ついに正体を現した魔族シャルルとの戦闘が続いていく。
魔族シャルルは奥の手を繰り出す。
造り出したゴーレムに街の住人を襲わせて集めた生命力を吸収し、体力を回復させ一時的に膨大な魔力を得たのだった。
強力な魔力を纏ったシャルルに、リュウジはどう対抗するのか――
「ははははは!
これがワタシの奥の手だ」
狂喜の言葉と共に魔族シャルルは僕を睨みつける。
「ゴーレムがスキル【生命力奪取】で奪った人間どもの生命力と、ゴーレム生成時に付与した魔力を回収し、傷ついた体の完全回復。
さらに一時的な魔力の過剰効果を生む超魔強化状態へと変貌するものだ」
その言葉の通り魔族の身体は完全回復したどころか、その全身からは密度の高い闇色の魔力を迸らせている。
そして、さらにその魔力を右手へと集中させる。
空間を歪ますような、すべての光を飲み込むような漆黒のオーラが五指を広げた右手を包み込む。
「その超過魔力を【魔力凝縮】にて右手に集中したこれがワタシの最終奥義『崩滅掌握衝』――
この右手にふれたものすべてを破壊し、掴んだものを悉く粉砕する究極の奥義。
先程は不完全であったため腕を失ってしまったが、これが完全なる奥義の姿だ」
魔族はニヤリと嗤うと、高らかに宣言する。
たしかにとんでもない魔力、凄まじい技の様だ。
「なんだかすごい技みたいだけど、僕にその攻撃が当たるかな?
君の【瞬間移動】は僕に効かないよ。僕の結界内に転移しようとすればさっきみたいにカウンターの拳をお見舞いするからね」
僕は冷静を装って、ぐっと拳を固めて挑発気味に告げる。
今ここで相手にされたら一番困るのはあの技を《《仲間に使われる》》ことだ。【瞬間移動】で仲間を襲われたら僕では対処は難しい。
直接僕へと攻撃してもらう事が仲間を助ける一番の方法なのだ。
「フン、そんな必要はない。
ワタシの究極奥義で正面から全てを粉砕してみせるわ!!!」
魔族はその身から迸り続ける魔力を翼状に広げて、大きく羽ばたかせると、こちらに向かって一気に急降下してくる。
狙い通り。相手はまっすぐに僕へと攻撃してきた。
こうなれば相手と僕との一騎打ちだ。
「全てを砕け!
崩滅掌握衝ァァァァ!!!!」
魔族シャルルは破壊の右手を僕に向けて突き出す。
過剰魔力を纏った相手の右手が触れた瞬間、僕の纏っていた結界が消し飛び、僕自身にかかっていた自己強化効果が消滅する。
瞬間移動の対応として展開していた結界は消し飛んだのだ。
この先は自力の勝負だ。
相手が繰り出してきたのはすごい技だ。
だが、僕もただ単に相手に時間を与えていたわけではない。
相手が口上を述べている間、僕も体内で魔力を最大限に練りこんでいたのだ。そして相手がこちらに向かって急降下するその時には大きく息を吸い込んでいた。
僕にも《《切り札》》がある。それを使用するための準備は万端だ――
前に使用したときは怒りに任せて放ったため制御しきれていなかったが、今回はしっかりと魔力を練り最大限にまで威力を高めた。
これが最大最高火力の僕の切り札――
竜の息吹!!!
僕は練り込んだ魔力を呼気と共に解き放つ。
吐き出した吐息が金色の破壊エネルギーへと変換され相手を襲う。
「なっ――」
魔族シャルルが驚きの声を漏らす。
ズガガガガガガガ――――――
超威力の破壊の奔流と、超圧縮された破壊の攻撃が至近距離でぶつかり合う。
急降下してきた魔族の身体がその破壊の奔流とぶつかり合いまるで鍔競り合いするかのように空中に留まり、衝撃波をまき散らす。
その影響で周囲の瓦礫が吹き飛ばされ、弾かれ行き場を失った破壊の奔流が魔族の指の隙間から四方八方へと飛び散り、まるで散水機の様に、閃光が上空に飛び散り空を彩る。
「ぐがががががぁぁぁっ!!!」
凄まじい威力の奔流に負けぬように魔族が鬼の形相で右手を突き出し続ける。
互いの破壊エネルギーがぶつかり合うことで魔力の対消滅が発生し、魔族の右手に纏う漆黒の魔力がどんどんと減衰していく。
対する僕も破壊エネルギーとして魔力を放射したことで一気に魔力が減少。吐き出せる息もあと僅かで軽い酸欠状態となり意識に靄がかかり始める。
「こんなもので、ワタシが負けるものかぁぁぁぁぁぁぁ!」
魔族が最後の力を振り絞り、下降の推力に使っていた魔力をも右手へと注ぎ込んで、破壊の右手をさらにを押し込んでくる。
ダメ、か――
息も限界に近づき、意識が遠のく。
――負けるな、リュウジ!
リュウジ様!
我が主!
遠ざかる意識に、友の声が、そして仲間たちの思念が届く。
諦める――ワケにはいかない!
僕には、大切な仲間がいるんだ!
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
最後の気力を振り絞り、渾身の咆哮と共に残った魔力を肺に残っていた最後の空気と共に吐きだす。
「な、にぃぃぃぃぃぃ――」
魔族が口にした驚愕の言葉は、凄まじい破壊の奔流に飲み込まれる。
そして、魔族は驚きの声とと共に、その存在を消し飛ばされる。
やっ た … …
酸欠で遠くなる意識の中で、最後に相手の存在が消滅したことを確認し、僕は意識を手放したのであった。
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