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第54話:魔族シャルルとの戦い②(カウンターパンチ)

◆前回までのあらすじ◆

ついに正体を現した魔族シャルル。


シャルルは街の破壊をもいとわず全力で、リュウジ達を攻撃する。


ユニークスキル【創造神(クヌムス・)の鋳型(テンプレート)】を利用し、多くのゴーレムを造り出しけしかけたのだが、リュウジの手刀による斬撃にて撃退したのであった。

 それにしても生み出されたゴーレムが弱くて良かった。最低でも足止めになればとお手軽技を放ったのだが、一撃で粉砕できたことにホッとする。


「チィィッ。化け物がっ」


 魔族シャルルはそう吐き捨てると、その姿が掻き消える。


「えっ」


 なにが起きたのか分からず驚きの声を上げる。その次の瞬間、ノインの背後に現れた魔族が、その背を斬り裂いていた。


「ぐああぁぁぁっ!!」


 背中を斬られたノインが苦悶の声を上げて地面に転がる。


「ノインっ!」


 僕はすぐさまノインを助けるために魔族へと殴り掛かった。


 まだ戦闘経験は少ない僕だが、自分の拳はそれなりに強いのだと理解している。なのでこの一撃で相手に多少なりともダメージを与えられると思っていたのだが、拳が相手を捉えたと思った瞬間、またしても魔族の姿が掻き消え、拳が空を切った。


「わ、たたっ……」


 当たると思った拳が空を切ったことで態勢を崩す。


「ぐ、あぁっ……」


 背中を斬り裂かれたノインは苦悶の表情を浮かべている。


「斬られる瞬間、ワタシの殺気を察知して致命傷を避けたか。運のいい奴め。

 だが、今の一撃には【腐食】と【治癒妨害】の効果を乗せている。いくら正体が再生竜(ヒュドラ)であったとしても、そう簡単に治る傷ではないぞ」


 少し離れた場所から魔族が告げる。刃へと形を変えていた魔族の右手の爪は、複数のスキル効果を孕んだ混濁色の魔力に包まれていた。


――厄介だな。観測されただけでもこの短期間の戦闘で、五つ以上のスキルを奴は使用している。奴は戦闘力が高いだけでなく複数の有用スキルを所持している。


 (アレクス)はその言葉に続けて観測されたスキルを告げる。


 【影縛り】、【擬態】、【爪刃】、【爆裂魔力開放】、【全属性耐性】、【腐食効果付与】、【治癒妨害】、【瞬間移動】――


 それらすべてが戦闘に有用なスキルだ。まるで戦闘に特化して造られたかのような存在である。


――中でも、いま使用した【瞬間移動】が厄介だ。すぐに対抗策の演算を開始する。


 続けて、ALEX(アレクス)は脅威への対策を演算し(かんがえ)始めた。


 ここまで相手がどれだけ強くても、警戒と助言だけであった(アレクス)が、今回は積極的に対策立案を試みているのだ。


 その対応の差だけでも、相手がこれまでで一番の脅威であることが読み取れる。


 僕は油断なく相手を睨みつける。


 丸みを帯びた女性的な体型だがその身に纏う筋肉や外骨格は昆虫に近い印象だ。僕の知っているアニメでも「昆虫が人間サイズになったら、その戦闘能力は史上最強になる」みたいなことを言っていた。


 相手と目が合った瞬間、本能的に「危険だ」と察して身構えてしまったほどである、


「一番の難敵である貴様と対峙する前に回復役(ヒーラー)であるその女を始末しておきたかったが、まぁ構わないだろう。今の一撃で女しばらくは動けまい。

 女が回復する前に貴様を始末する」


 魔族はそう告げると、左手の爪も刃に変化させる。


 戦闘経験の少ない僕が後手に回るのは不利と察し、先に攻撃をしかける。


 繰り出したのはお馴染み『お手軽斬撃飛ばし技』だ。手刀を振るい斬撃を飛ばす。それに対応し魔族も斬撃を繰り出す。

 互いが繰り出した斬撃は衝突し空中で小さな爆発が起きる。


 斬撃の威力はほぼ同等。ならばと、僕は連続で手刀を振るい飛ぶ斬撃の連打を放つ。

 この『お手軽斬撃飛ばし技』は自身(ドラゴン)の身体能力に頼ったものであるため、魔力の消費がないのだ。なので魔力切れを意識せずに撃ち出せる。


 魔族は僕の攻撃に対して、同様に連続で斬撃を放つことで対応してくる。


 いくつのも斬撃が空中でぶつかりあい、次々と空気が破裂する。それが繰り返されたことで、周囲へ影響を及ぼしだす。


 衝撃波が周囲の瓦礫を吹き飛ばし、空気圧の差で発生した真空波が瓦礫と化した物体を更に砕いていく。


 その影響で塵埃が発生した、視界が悪くなる。


 この状況、あまりいい状況ではないかもしれないと直感する。

 戦闘経験の乏しい僕からすると相手の姿が見えなくなるのは不利だなのだ。


――いい判断だ。その認識は合ってるよ。


 不安を感じた僕の心に(アレクス)の声が脳内に響く。

 どうやら相手への対抗策の演算が終わったようだ。


 この状況、どうしたらいい?


 すかさず(アレクス)に問いかける。


――時間を稼いでくれたことで対応策の演算が完了したよ。【固有領域】の効果指定を私に一任してもらえるかい?


 うん。任すよ。


 僕は即座にその提案を承諾する。


――相変わらず判断が早いね。承知した、承認されたオーナー権限を利用し、スキル効果の変更を実行……


 すぐさま(アレクス)が行動を起こす。

 現在は人間の街で行動するために「解析妨害」と「気配遮断」の効果を乗せていたが、その効果が書き換えられる。


 【固有領域】の効果が書き換えられた事で、力が漲ってくる。


――新たに領域に付与した効果は「身体能力向上」と「空間把握」だ。これで近接戦闘になったとしても、あの魔族と互角以上に戦えるはずだよ。それに結界内での知覚が上がっているから、もし結界内に奴が【瞬間移動】してこようとした場合も、魔素の変化で移動先を検知できるはずだ。


 (アレクス)が付与した効果についての説明をしてくれた。


 僕は斬撃を飛ばしながら「ありがとう」と脳内で言葉を返そうとした瞬間、結界内の魔素変化を検知した。


 魔素が濃くなったのは僕の真後ろだ。


――リュウジ!


 分かってる!


 僕は慌てて振り返り、魔素濃度が高くなった場所に向かって拳を振るう。それと同時に、魔族がその場所へと出現する。


 相手はまさか【瞬間移動】が予測され(よまれ)ているとは思っていないようで、無防備な体制のまま禍々しい魔力を帯びた爪の刃を振り上げていた。


 ドンピシャのタイミングで僕の拳が魔族を捉える。


「なっ――」


 瞬間移動で背後に現れた魔族の脇腹に振り向きざまに繰り出した僕のボディフックが突き刺さった。


 意表を突いて背後から攻撃を仕掛けようとした魔族に、カウンターとして強烈な一撃が炸裂したのだ。


 僕の拳に硬い外骨格を砕きその下の柔らかい身体本体を殴りつける感触が伝わる。


 ドゴォォォォッ!!


「ごはぁぁっ……!!!」


 僕の拳をまともに食らった魔族シャルルは、外骨格が砕かれた破片と紫の血しぶきを散らしながら、上空へと吹き飛ばされたのであった。

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