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第50話:国境街「ジャネーロ」⑨(激突)

◆前回までのあらすじ◆

騎乗機の譲渡を断った冒険者を不意打ちで斬り裂き葬った、と思われたが

なんと冒険者の少年は無傷で立ち上がった。


妖刀により切りつけられても傷一つ付かない少年に対し、領主であるシャバートは敵対することを選択し、相手の弱点を給仕長のシャルルに伝えたのであった。

 シャバートの言葉を受けて、すぐさまシャルルがスキルを発動させる。


「スキル【影縛り】」


 シャルルの魔力が床に敷かれた絨毯を伝い少年の動きを縛る。


 この屋敷には『魔封じの結界』が張られており、大気中の魔素を利用した魔法やスキルは発動不能となっている。

 だが、この部屋に敷かれた絨毯はシャルルの魔力を通す『魔道具』であり、それを媒介することで遠隔でのスキル発動を可能とさせたのだ。


 そう、この部屋自体がシャルルとシャバートに有利な場なのだ。


「くっ」


 少年は想定外のスキル効果に呻き声を漏らす。


 その隙をついて、シャルルが三度(みたび)襲いかかる。


 凄まじい脚力で矢の如き速度で突進したシャルルは、少年の弱点と思われる目へとスキル【必殺(フェイタル)斬閃(ストライク)】の効果を乗せた刺突を繰り出す。

 【影縛り】にて動きを封じられている少年は反応できない。


 ズシュゥッ……


 血が飛び散るが、シャルルの繰り出した刺突の刃が少年へと届くことはなかった。


 横から伸びてきた手が、シャルルの繰り出した妖刀の刃を掴んで止めたのだ。

 飛び散った血は、刃を直接つかんで止めた手が負った傷から出たものであった。


「大丈夫ですか、リュウジ様」


「うん。ありがとう。

 でも僕を助けるために、ノインが手を怪我しちゃったね。ごめん」


「いえ、こんなものはかすり傷です。すぐに再生しますのでお気にしていただく必要はありません」


 攻撃を止めた手の主である紫髪の美女が少年に問いかけ、少年も美女の怪我を心配する。

 必殺の一撃を繰り出したシャルルを無視した、互いを労わりあう会話にシャルルの目が見開かれる。


「バカな。貴様は致命傷を負っていたはず……」


 そう、攻撃を止めた紫髪の美女は先程の攻撃で喉を斬り裂き殺したはずなのだ。少なくとも致命傷は与えていた。


「フン。不覚にも少しの間、意識を失ってたが、首を斬られた程度では、私は死なないよ」


 美女の喉元の傷が凄まじい速度で再生しており、ほぼ完治していた。


 それでも「あり得ない」とシャルルは困惑する。


 再生系のスキルであっても()()()()()()()()首を切り裂かれた時点で即死――生存している時点でおかしいのだ。

 しかも、スキル【必殺(フェイタル)斬閃(ストライク)】――即死の効果を乗せた一撃だったのだ。無事で居れるはずはないのだ。


「それよりも貴様だ。リュウジ様に刃を向けるとは――その行為、万死に値する!!」


 紫髪の美女の瞳が怒りに染まりシャルルを睨みつける。それと同時に、刃を掴んでいた手から魔力が溢れ、妖刀を包み込む。


「!!」


 すると、それまで妖刀からシャルルへと伝わってきていた膨大な魔力が途切れた。

 想定外のことにシャルルが驚愕する。


「なっ――

 まさか、処刑人の妖刀(エクスキューショナー)の所有権が奪われた、のか⁈」


 動揺するシャルルの顔面に、容赦なく美女の拳が炸裂する。

 

 大きなダメージとはならなかったが、シャルルは妖刀から手を離してしまい、美女から離れる結果となってしまう。


「チィッ! 不意を突かれたとはいえ、まさか武器を奪われることとなるとは。

 なんとしても、取り返す――スキル【爪刃(そうじん)】」


 シャルルが右手で手刀を作ると、その手にはめられていた手袋を突き破って、爪が飛び出し刃と化す。そしてすぐさまその爪で攻撃を加えようとするが、そのタイミングでシャルルの魔力喪失が発生し、膝が折れる。


「なっ……」


 シャルルは直感で悟る。発動していたスキルが破られたのだ。


「ねぇ、何度も僕たちに攻撃を加えてきてるけど。これって、あんた達は僕と敵対するって事でいいのかな?」


 少年が穏やかな口調でシャルルとシャバートに問いかける。


 何でもない様に歩み出たが、その動きのみで【影縛り】を打ち破られ、シャルルへの魔力罰損(ペナルティー)となったのだ。


「クソが! 余裕でいられるのは今の内だ。すぐさま妖刀を奪い返し、貴様らを血祭りにあげてやるっ!」


 少年の言葉に、メイド姿のシャルルが鬼の形相で応える。見下されたことによる怒りで発せられた言葉であったが、その言葉で平和的解決の道は決裂した。


 今の少年の問いかけは、最後通牒であったのだ。


「愚かな。リュウジ様の慈悲の言葉を無下にするとは、貴様らは運命はここで潰えたな……

 まずは愚かな言動をした下婢(かひ)の望みを終わらせてやる」


 紫髪の女が下婢と揶揄したシャルルに視線を向けると、手にした妖刀を口元まで運び、それに()()()()()のだった。


 ガリッ ボリ、ボリボリ……


「なっ――」


 そして、なんとその刀を()()()()のだ。


 それはシャバートとシャルルの契約の要。人間の魂を集める呪具が破壊されたことで、これまで積み上げてきた二人の計画が潰えた瞬間であった――

【ちょい出し設定】

◆スキル◆

暴食の業(グラトニー)

  ノインの所有するユニークスキル。忌み嫌われる『大罪スキル』の一つ。

  どんなものでも魔力を流すことで可食物へと変化させることが出来る。

  捕食したものの能力を、新たなスキルとして取得することができる。

  保有者だけでなく周囲を含めた者に『食欲増強』の効果を強制付与する。


創造神(クヌムス・)の鋳型(テンプレート)

  シャルルの所有するユニークスキル。

  土や瓦礫を素材としてゴーレムを作り出すことができる。

  作り出されたゴーレムの戦闘能力は込めた魔力に比例し、術者の保有するスキルを習得させることが可能。

  知能は持ち合わせておらず、簡単な命令を与えることが出来る。


必殺(フェイタル)斬閃(ストライク)

  シャルルの所有する上位(エクストラ)スキル。

  すべての攻撃に一撃必殺(クリティカル)の効果が付与され、与えるダメージが増大し、ダメージによる即死率が高くなる。

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