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第45話:シャルル=ロンギヌス

 その魔族は特殊な個体であった。


 シャルル=ロンギヌス


 魔族の中では数少ない雌型(おんな)の個体だ。


 弱肉強食の実力社会である魔族では、雌型であるということだけで大きな不利であった。弱者は強者によって支配されるのが魔族社会の常であるからだ。

 それはシャルルも例外ではなかった。


 雌型(おんな)の中では戦闘能力はずば抜けて高かった彼女だが、それでも雄型(おとこ)と比べると見劣りするものであった。


 しかし幸か不幸か、雌型で実力が高かったことが一人の魔族の目に留まってしまう。


 魔族の最高戦力『七魔将』の一人。

 『冥智卿(めいちきょう)』の異名を持つ『ラムダール=ネブラ』だ。


 頭脳明晰で数多の魔術を操るラムダールは、魔族軍の中では参謀的な地位を確立していた。


 その性格は狡猾で残虐。

 指揮官として後方から指示し、自らの手を汚さずに死体の山を築いたのだった。


 彼が取る作戦は勝利のためなら手段を厭わぬもので、自然や生態系をも狂わす大量破壊魔法だけではなく、禁忌とされている呪詛魔法や死霊魔術、倫理を外れた外道魔法なども往々に使用していたのだった。


 そのため、ラムダールが作戦に参加すれば、敵味方分け隔てなく死体の山が出来上がるのが常であった。


 そんな残虐非道な男に目をつけられたシャルルは、一個体の能力を極限まで引き出した『生物兵器』を作り出す非人道的な実験の被験体とされた。


 その実験とは、『スキルを強制的に取得させる』実験だった。


 スキルは魔法や魔術と異なり、詠唱や儀式を介せずに超常の効果が発揮できるのだ。利点しかない技能なのだ。

 ラムダールは、一個体が多くの『スキル』を取得できたならば、一騎当千の兵士となると考えたのだ。


 未だにスキル取得の条件は確立されていないが、大まかな条件が分かっている。


 それは『経験』と『知識』を積み重ねる事でスキルが芽生えるというものだった。


 炎に焼かれ続ければ、それに対応するためにスキル【炎耐性】が身に付き、炎に対する深い知見を得ればスキル【炎操作】が発現するといったものだ。


 まずシャルルは各種耐性を得るために、炎・水・風・氷・雷・斬撃・打撃などあらゆる苦痛を与え続けられた。

 この時点で複数いた被検体はその殆どが、責苦に耐えられず命を落とした。あるいは、精神に異常をきたし発狂に至ったのだった。


 それを耐え切った実験体は、次の段階として『精神操作魔法』にて無理矢理に、通常に学ぶ知識の何倍もの情報を脳にぶち込まれた。

 これは短期間に膨大な量の知識を得る事が出来る裏技的な手法てはあるのだが、脳への負荷が高く耐え切れずに廃人化してしまうリスクがある危険な方法でもあった。


 幸運にもそれらの実験を耐え切ったシャルルは、被験体の成功例として、ラムダールの腹心の一人に数えられる様になった。


 そして激戦となった先の『人魔大戦』――


 シャルルは魔王軍の先兵として、最前線を駆け抜けた。

 すべての属性の耐性を持つ【全属性耐性】にて属性が付与された魔法を弾き、スキル【神速】と【必殺(フェイタル)斬閃(ストライク)】による必殺補正が付与された超高速の斬撃で相手を屠るその姿は『戦場の死神』の異名となり、その名を轟かせた。


 さらにユニークスキル【創造神(クヌムス・)の鋳型(テンプレート)】で複数のゴーレムを召喚することもできたため、一人で一個師団をも相手取ることが出来たのだ。


 勇者と魔王が相打ちとなって人魔大戦が終結した後も、ラムダールの指示でシャルルは暗躍することとなる。


「貴様にこの『呪具』を授けよう。この呪具で人間どもの魂を集めろ」


 ラムダールは禁呪にて作り出した武器『処刑人の妖刀(エクスキューショナー)』をシャルルに託す。

 それは死した人間の魂を魔力に変換しその刀身に蓄える、輪廻転生の理を犯す禁呪の効果を宿した武具であった。


 シャルルはその呪われた刀を恭しく受け取る。


 シャルルは、どれだけ強くなろうとも上司であるラムダールには敵わないということを理解していた。


 数多の知識と幾重にも張り巡らされた戦術の前では、どんなに多くのスキルを所持し戦闘術に長けていたとしても無意味なのだ。

 反旗を翻すようなそぶりを見せようものならば、死よりも辛い苦しみと痛みを与え続けられ、被験体(モルモット)として使い捨てられるのがオチだ。

 そんな同僚の姿を何度も目の当たりにしていたシャルルは、上司であるラムダールに対し絶対忠誠を誓っていた。


「ククク……

 次の戦略にて使用する禁呪を行使するのには、膨大な魔力が必要でね。手っ取り早く生贄呪法を使う事を選択したのだよ。

 その武器はそれを簡単に行うために我が作り出した呪具だ。

 方法は簡単だ。その呪具を使って人間を屠るだけでいい。簡単だろ?」


 ラムダールが嗜虐的な笑みを見せつつ問いかける。

 その言葉にシャルルは「はい」と答える。ラムダールの問いかけにはYES以外の回答はあり得ないのだ。


「人間を千匹ぐらい殺せば魔力が満ちるだろう。その呪具に魔力が満ちたら我の所へ持ってこい」


 それがシャルルに与えられた指示であった。

 詳細については語られなかったが、魔力を集めるのが遅ければ厳しい罰則があることは読み取れた。


 それからシャルルは人間の集落を襲い、そこの住人を虐殺して魔力を貯める日々を送ることとなるのであった。

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