第34話:国境街「ジャネーロ」①(滞在1日目~2日目朝)
◆前回までのあらすじ◆
仲間と共に旅を始めたリュウジは、国境の街『ジャローネ』に滞在することなった。
「う~ん、むにゃむにゃ……
もう食べられないよぅ~」
リュウジが幸せそうな寝顔で言葉を漏らしている。どうやら『初めての食事』がとても満足だったようだ。
よくよく考えるとリュウジは転生前も病弱で病院食しか口にしたことがなかった。例外として医者に隠れてお菓子を食べたりもしていたが、しっかりとした食事というものを初めて食べたのだ。一口食べた時の感動が私にも伝わってきた。
その後は年相応の子供のように一心不乱に食事を採り、それを堪能していた。ノインの持つユニークスキル【暴食の業】の影響もあるだろうが、リュウジが幸福を感じていることが喜ばしい。それこそが私の目的なのだから。
リュウジが眠りについたことで自由に使える時間が出来たので、私は『魂の回廊』を利用しロックの様子を確認する。
――ロック、そちらの様子はどうだい?
私はリュウジを装いロックへと思念を飛ばす。
「我が主! ご心配をお掛けして申し訳ありません」
――気にしなくていいよ。そちらの審査は順調かな?
「はい。今のところは順調と思われます。
あの後、技術者に囲まれて我の体内構成を細かく調べられました。どうやら我が主に進化させていただいた我の体構成が技術者には革新的だったようで、隅々まで身体を見られ良い気持ではなかったですが……」
ロックの言葉から、もしかしたらこの世界には流体力学や航空力学の概念がまだなかったのかもしれないと推測する。そうなればロックの構造自体が未知の技術の塊だ。そうなれば技術者が目を皿にして調査を行うのは頷ける。
元の世界ではアニメ設定だとしても細部までしっかりと練りこまれているため、それが仇となり足止めの原因になったようだ。
――そう、大変だったね。ならば魔法ゆスキルを使用した種族情報の審査は明日となるのかな。その対応について事前に伝えておこうと思うんだ。
私はそう言葉を続け、明日の審査についての助言を告げる。
まずは、解析系の魔法やスキルにて種族が「進化型可変型人形」と露見したときの対処方法についてだが、この世界ではゴーレム自体が労働力として作られることがあるのだ。なので下手にごまかすのではなく、真実に少しの噓を混ぜて相手に伝える事を提案する。
本来のドワーフが作成した人型魔導兵器ではなく、ドワーフが実験のために作成した巡航移動用の騎乗機型ゴーレムであることを装うのだ。
そして、『可変型』ゴーレムという部分については魔導波動砲の展開機構を示し、魔導波動砲についてはリュウジの魔力を利用した疑似竜息吹ではなく、単純な【突風】を発射する構造とするのだ。
それにより、危険性のある武器を積んでいるとは思われなくなる。変形機構で空気弾を打ち出すことが出来る、移動特化型の騎乗型ゴーレムだと認識されるはずだ。
――もう一つアドバイスだけど、自我があることは隠したほうがいい。この街に配備されたゴーレムの様に機械的の応対に留めれば深く詮索されることはないはずだ。それと、各種機能についても詳細に調査されることを防ぐため、オーナー以外には機能制限があることしよう。
助言を続ける。なるべく不安要素を取り除き、リュウジが安心してこの街に滞在できる様にと根回しは怠らない。
こうして万全の対策をしつつ、国境の街『ジャネーロ』の初日は終わるのであった。
◆
翌日、リュウジ達は宿の食堂で朝食を摂った。
朝食のメニューはパンにベーコンエッグ、それにコンソメスープとサラダというものであった。
道中で小麦畑が広がっていたのもあり、やはりこの国ではパンが主食となっている様だ。卵やベーコンついては元の世界のものとほぼ同様であるためこちらの世界にも鶏や豚がいるのだろう。味覚情報を読み取ると、味付けについてはやや濃いめで大味である様だ。
食事事情は元の世界と大きく変わらないが、料理や味付けの繊細さなどはやや遅れをとっていると推測される。
「この後は街を見て回る予定だよね?」
「はい。リュウジ様が人間の街に興味があるということなので、この街の主要どころを回る予定です」
私が朝食のメニューについて考察しているうちに食事を終えたリュウジとノインがこの後の予定について話している。それと同時に思念で私に対して見ておきたいところはないかとリュウジが訊いてくる。こうして私に判断を仰いでくれることがありがたい。私は武器・防具の店に立ち寄ってもらいたいと要望を出し、リュウジが了承してくれた。
武具の物価を知りたいという点と、ロックの進化のためにリュウジの武器を使用したためその補填のためだ。
武器については再度リュウジの鱗を変化させて造ってもよかったのだが、竜形態に一度戻る必要があるのとノインと合わせて二人して竜の鱗を素材にした装備で身を固めていると正体が竜であることが疑われる可能性があるため、通常の装備品をここで買いそろえるのもよいと判断したためだ。
――リュウジにとってみれば「はじめての買い物」にもなるからね。
冗談めかして告げると、リュウジは年相応な反応で口を尖らせる反応を返すのであった。
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