第33話:入国審査
◆前回までのあらすじ◆
仲間と共に旅を始めたリュウジは、初めて訪れる人間の国ジャンビエ、その国境の街『ジャローネ』へと到着したのであった。
国境の街。その入口は大きな壁のような建物にて区切られていた。
まさに国境という装いで、前世ていうところの万里の長城がそれに近いのかもしれない。その中心に大きな門があり、その前には衛兵と護衛用のゴーレムが立っていた。
僕達がそこに近づくと衛兵は道をふさぐように手に持った槍を下げる。
まぁ、無条件で通してはくれないよね、と思いながら僕はブレーキをかけて巡航形態のロックをその前に止める。
「ここは『ジャンビエ国』の国境。通貨許可証はあるか?」
鎧に身を固めた衛兵が問いかけてくる。
「許可証はありません。許可証がなければ通ることはできませんか?」
僕は素直に答え、そしてどうしたら通れるかを問いかける。
「うむ。許可証がないのならば、ここでの『審査』と『通行料』が必要だ」
どうやら許可証がなくてもここを通ることが出来そうだ。けど、今の僕らはお金は持っていない。
「……フェバリエ王国に入るときは人間の雄を軽く誘惑したら入れたのだがな。人間のルールはめんどくさいな」
後部座席でノインがそう言葉を漏らしている。うん、フェバリエ王国はセキュリティーがガバガバだったんだな。でも困ったな、お金が必要なのか……
(我が主、お金ならば多少は我の【空間収納】に収められています。通行料で支払うには十分だと思うので、主の役に立てるならば是非にお使いください)
どうしようかと思っていると、ロックから思念か届く。おぉ、助かる。
「では、審査をお願いしたいかな」
お金の心配はなくなったので、正攻法で入国することとする。
その後にいくつかの質疑と解析系の魔法審査と所持品のチェックがあったが、これが想定以上に難航することとなった。
ちなみにロックについては人としてではなく『騎乗機』としての持ち込み審査である。
僕の場合は、『リュウジ』という名前で訝しがられ出生などを細かく聞かれることとなった。やはり、先日世界に認識された特有魔獣と同名であることで警戒されたのだ。
たが、その点については事前に友と審査時の回答を考えていた。
出生についてはフェバリエ王国の田舎に領地を持つ没落貴族の家名を告げ、そして王国出奔の理由を「先日出現した特有魔獣と同じ名前であったため、一族から後ろ指をさされ追放された」としたのだった。
魔獣と同じ名前なのを逆手にとって、出奔理由としたのだ。
こうして、少しばかり困難を有したが、審査を通過することが出来た。
「フン、あの雄どもなんだかんだ言ってボディチェックばかりしやがって。なんど毒殺してやろうかと思った事か」
僕の審査が終わってからしばらくして審査が完了したノインが不満を漏らしながら戻ってきた。
なるほど。審査官はほとんどが男性だった。美人の審査は入念に行ったのだ。くそぅ、羨ま――いや、けしからんな、ほんと。
あとは騎乗機としてチェックされたロックの審査だけなのだが――
「この騎乗機の構造は見たことのないもので、すぐに結果は出ない様だ。しばらくの間、こちらで預からせてもらってもよいか?」
審査をしていた衛兵がノインに確認する。
「確認を取るならば私でなく、こちらの方に聞くべきだ。貴様らの目は節穴か?」
相変わらずにノインは毒舌な言葉を返す。その言葉を受けて衛兵は戸惑いながらも僕に同じ質問をして来たので、僕は了承の言葉を返す。
(我の所為で足止めとなってしまい、申し訳ありません)
ロックから思念が届く。その言葉に僕は「気にしなくて大丈夫だよ」と返す。
――進化の時にロックとは『魂の回廊』が繋がったので、何かがあれば私がフォローすることも可能なので、問題はないだろう。
友の心強い言葉もあったため、僕とノインはしばらく国境の街『ジャネーロ』に滞在することとなったのであった。
◆
ジャネーロの街は想像していたよりも賑わった大きな街であった。
国境の大壁と一体になっている街ということは、言い換えれば国の辺境であるのだ。なので、寂れた町だろうという予想をしていたのだが、その予想は大きく外れることとなった。
「なかなかに栄えた街ですね。これならば、しばらく滞在しても問題ないでしょう」
ノインも僕と同じような感想を零していた。
「お金は大丈夫かな?」
そんなノインに僕が問いかける。
この世界の貨幣価値が分からないため、ロックから渡されたお金は全てノインに渡してある。
「数日の宿泊ならば問題ないですね。さすが便利人形、かなりの額をため込んでいたな。あの洞窟で人間を騙して奪い取ったのだろう。なかなかに役立つではないか」
小さく口角を上げつつノインが答える。なんだか物騒な事を言っているけど、そんなことして手に入れたお金じゃないよね?
――いや、十中八九人間から奪い取った金だろうね。ロックはあの洞窟で武器の略奪行為を続けていたのだから、その過程で金品も手に入れていておかしくはないからね。
そ、そうなのか。そう考えると、なんだかそのお金を使うのは気が引けるな……
――気にしなくてもいいと思うよ。この世界ではその辺の倫理観は低いみたいだし、もし資金が足りないならば牙や鱗を売れば補填できるからね。【鱗牙再生】のスキルがあるから、いくらでもお金は補填できるよ。
お金のことを考えていると友がそう助言をくれた。
その後、僕らは寝床を確保するために宿へ向かい部屋を確保することとした。国境の街ということで旅人や承認が多く往来するためか、宿屋は複数ありその中でも清潔感がある宿を選んだ。
さすがに女性と一緒の部屋という訳にはいかないと思ったので、多少値は張ったが隣同士で二部屋を確保した。
宿泊日数に余裕をもって予約して、僕たちはこの街に滞在することなったのであった。
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