第30話:新たな武力(ちから)
◆前回までのあらすじ◆
騎乗機に変形したロックに乗って、リュウジ達は新たな街へ向けて旅を始めたの立った。
風を切る音と共に岩肌ばかりの山岳の景色が後方に流れて行く。
スキルの【浮遊】と【突風】を利用し浮上走行をするロックの巡航形態は、地面の凸凹の影響を受けず、快適に山道を進む。
一晩洞窟で休み、ノインの魔力枯渇状態が回復したので、ロックの巡航形態に機乗し次の目的地を目指して移動を開始したのだ。
ロックの巡航形態は二人が乗っても問題ないようで、二人乗りで僕が前に乗って運転している。
乗り物に乗るなんて経験はないのだけど、友による知識の補正と、ロック自身も機体制御についての補助をしてくれているため安心して運転ができたのだった。
乗り物を操って風を感じる感覚は刺激的なもので、この独特な爽快感は癖になりそうだ。これが、バイク乗りの気持ちなのかもしれない。
――転生したリュウジの身体ならば怪我の心配もないし、乗り物自体も自動でリュウジを守ってくれるから、危険は限りなく少ないね。だからと言って、無理は禁物だよ。運転は思っている以上に神経を使うからね。
高揚感たっぷりにハンドルを握る僕に友が注意喚起する。
分かってるよ。
そう答えて、前方に目を向け障害物となる岩などを避けて山道を突き進む。
「私も人間の一般的な乗り物である『馬車』に乗ったことがありますが、ここまで快適な移動は初めてです。これならば戦力としては心許ない木偶人形でも仲間にした意味が十分にありますね」
後ろに乗っているノインが乗り心地についての感想を漏らす。
相変わらず僕以外に対しては辛口評価だ。
巡航形態の鞍部は広く作られているため二人乗っても問題ないのだが、複座にはなっていないため後ろに乗る者は前の者の背に捕まるしかない。
今もノインは僕の腰へと手をまわして捕まっており、密着感が高い。減速をした時などには密着度が上がり、背中に何とも言えない柔らかさを感じるのだが、その度に別のことを考えるようにして邪念を打ち払っていた。
二人が乗るって分かっていれば複座式にすればよかったのに……
――この後さらに仲間が増える可能性もあるだろう? それを思って自由の利く作りにしたのだけどね。気に召さなかったかな。
シレっと友が答えるが、なんとなく変な気を使ってこの形にしたのだろうと直覚していた。
――ははは。鋭いね。これで少しでもリュウジに異性に対する耐性がつけばとも思ったんだけどね。
僕が勘づいたのを読み取ってか、正直に想いを告げる。ううー、そう正直に言われれば「迷惑だ」とは言えないよ。これでも僕は男の子だからね。下心がないとは言えないから。
――下心があるって言えている時点で、リュウジも正直者だね。そんなリュウジにまだ伝えていなかった「とっておき」の情報を教えるよ。
少し上機嫌な口調で友が言葉を続ける。とっておきの情報って何だろう、と興味を示すと、すぐさま答えを返してくれた。
――ロックを進化した際に変形機構だけでなく、ひとつ新たな『武器』を授けたんだ。その名も内蔵式魔導波動砲。元にしたガンヴォルバーゼノの最終武装兵器のハイメガキャノンを模した武器だ。
その言葉に僕は思わず「おおぉ!」と声を漏らしてしまった。
ハイメガキャノンはアニメで出てきた高出力の粒子砲兵器だ。架空の兵器ではあるものの、その破壊力は凄まじく作品を見てて興奮したのを覚えている。それがこの世界で再現できたならば胸熱だ。
――ふふふ。この武装は私が今回進化のために演算した中で、特にリュウジが興味を持つだろう秘密兵器としてコッソリと仕組んだものだ。どんな仕組みかを簡単に説明するから、リュウジは運転に集中しながら聞いてくれ。
友の指摘に再度運転に意識を集中させてこくりと頷き、次の言葉を待つ。
――ロックの胸元にあった光球だけど、あれは魔核ではなく魔力の貯蔵機関なんだ。余剰の魔力を貯めておき、魔力枯渇に陥った場合や瞬間的に高出力で稼働させる時に使用するものだね。それを進化時にちょこっと弄って外部からも魔力を貯蔵できる様に変更したんだ。
説明を聞くがその意図が分からず、どういうことだろう、と思いながら説明の続きに耳を傾ける。
――簡単に言うとロック意外の者、リュウジでもそこに魔力を込められるようにしたってことさ。もしリュウジがそこに魔力を込めて、それが利用可能になれば、疑似的にリュウジのスキルが使える。そういう武装を追加したんだ。
ええっ、それ凄くない。じゃあ、僕以外の者でも魔力さえそこに込めさえしたらその人のスキルが使えるってこと?
――いや。それは無理だね。個人の固有スキルを使うには、そのスキルを術式にまで落とし込む必要があるからね。私だからリュウジの術式が算出できたのと、それをロックの身体に正確に刻み込めたことで成り立った武装だ。云わばリュウジと私、そしてロックとの主従関係があったからこそできた芸当だね。
なるほどね。それで使えるようになるスキルって何かな。僕のスキルって物騒なものしかない気がするけど……
――使用できるようになるのは【竜の息吹】だ。ロックのスキル【突風】をリュウジの呼気に見立てて、それをリュウジの魔力で破壊エネルギーに変換して放射するんだ。
えぇぇ、あの凄まじい威力のスキルを使えるようになるの?! それじゃあホントのハイメガキャノンじゃん。
僕はガンヴォルバーのオープニングで何度も見たハイメガキャノンを発射するシーンを思い出しながら、その威力を想像する。
――まぁ、威力はリュウジが使用する時の1/10ぐらいになると思うけどね。それでも雑魚敵や障害物を壊すには十分な威力だろう。
ああ、なるほどね。一発で人間の国を壊滅させられるようなスキルをそうぽんぽん撃てるようになったら物騒だしね。
――そうだね。もし、リュウジがそれを許諾するならばロックにその方法を伝えようと思うけどいいかな?
そう確認されて、僕はあまり深く考えずに承諾する。
すると友が伝え方を教えてくれる。それを聞いて、僕は胸をときめかせることになる。
だってさ、超高出力の高出力長銃だよ。
この世界では『銃』という兵器についての技術は発展していないらしい。スキルや魔法という便利な技術が存在しているため、射撃系の兵器は発展しなかったのだ。
そんな中で転生前の世界でも未来兵器として登場していた超兵器が実現されているのだ。まさに男の浪漫だ。
胸が高まらない訳が無い……
「ロック。少しいいかな?」
そして、その胸の高まりを隠しきれずに僕は声を上ずらせて、ロックに声をかけるのであった。
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