第26話:進化のための準備
◆前回までのあらすじ◆
進化ために必要なこととして、ロックに転生前に観ていたアニメ『機神戦記ガンヴォルバー』の情報を共有した。
その意図とは――
ロックも承諾したから、友の提案が実行できるよ。で、具体的にはどうするの?
脳内で友に問いかけると、すぐに答えてくれた。その方法は至って単純なものだった。
「この武器を取り込んでみてくれ。僕の予想だとそれで進化に必要なスキルが会得できるはずだ」
僕は腰に装備していた片手剣を差し出して言う。これは僕の鱗を変化させて創った剣だ。
「リュウジ様っ、その剣は!」
ロックが反応するより先に、瞑想状態であったノインが声を上げる。
「え、これは僕の鱗を変化させた剣だけど?」
なぜノインが慌てているのか分からず首をかしげる。
「リュウジ様の身体の一部をそんな易々とそんな出会ったばかりの魔物に与えるなんて」
ノインが不満の声を上げるが、僕にとっては特に惜しむ理由はない。だってスキルを利用すればいくつも作り出せる武器なのだから。
――彼女からすれば、主と仰ぐ者の一部をまだ心を許して間もない相手に与えることが許せないんだろうね。女性は感情的な性格が多いから、与えるものが些細なものだとしても許容できないのだろう。
うーん、そういうものなのか。女性経験が少ないので乙女心というものがあまりわからない。
「大丈夫だよ。この武器はスキルでまた作れるし、それに武器を与える事はノインが思っているほどの特別なことじゃないよ」
そう言い聞かせてノインを納得させつつ、剣をロックへと渡す。
「有り難く武器を賜ります」
ロックは恭しく武器を受け取る。
その姿を見て少し不満げであったノインは言葉を飲み込んだ。しっかりと恭しく受け取ることでノインを納得させた様だ。なんとなくだが、僕よりロックの方が女性の扱いが上手そうだ。
「では、貴重な主の武器を取り込ませていただきます」
そう前置きしロックがスキル【武具融合】を発動させる。
スキル起動と共に腹部に並ぶ突起が上下に展開される。まるで牙が並ぶ大きな顎が口を開けるようだ。
その腹部に剣を置くと腹部が閉まり体内へと取り込まれる。
「おっ、おおお……」
ロックの口からうめき声が漏れ、腹部から黒い染みが全身に広がる。
――スキル効果により、種族名「アドバンスドロックゴーレム」は新たに【精神攻撃耐性】【劣化効果無効】【自己再生】【身体変形】を会得しました。
それと同時に世界の言葉が響き、僕の脳内で友が「よし。想定通りだな」と納得したような言葉を漏らした。
どうやら友が想定していた通りのスキルを取得させられたようだ。
――リュウジが【鱗牙再生】と【鱗牙変形】を使用して造り出した武器なので回復系と変化系のスキルを会得できると思っていた。これで彼を進化させるための下地は整った。まずは回復系のスキルにて大きな損傷が残る左腕を回復してもらってくれ。
友の言葉を受けて僕はロックに左腕を回復させるように伝える。
「マントで隠してはいたのですが、さすがに我が主に状態は見抜かれていた様ですね……
これまで回復系のスキルを有していなかったため、修復できていませんでしたがこれで回復できるようになりました」
ロックは早速覚えたてのスキル【自己再生】を発動させて左腕を回復させる。
ヒビが入り所々欠けてしまっていた硬い鉱石で出来た左腕が、まるで破損映像を逆再生するかのように修復されていく。
生物系ではない魔物であるため、通常の回復魔法では回復できず、回復するには整備師により修復してもらうか、修復効果のある自己スキルにて回復させるしかなかったのだ。
――これで彼の完全な姿が分かった。ほぼ想定通りだ。これならば私が事前に演算していた進化後の姿がそのまま使えそうだな。リュウジ、もう一度彼と情報共有してもらえれば、進化のための情報を彼に与える事ができる。
ロックの腕が修復するのを見守ると、友がそう告げる。
こうして、ロックが進化するための準備は問題なく完了したのであった。
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