第25話:趣味の共有
◆前回までのあらすじ◆
ALXSの提案にて、ロックを進化させることとした。その方法とは――
「ロック。少しいいかな?」
その言葉にロックは再起動し瞳の光の輝度が元に戻る。
「何もせずに待つもの時間がもったいないからさ、僕の好きな空想作品について情報共有していいかな。その知識が君のチカラになるかもしれないからね」
そう言うと、ロックはすぐさま「主様が我に知識を与えてくれるとは有り難い限りです。知識を増やせば我のスキル【幻影創造】の幅が広がる、といった事ですね」と同意の言葉を返してくれる。
「まぁそんなところかな。
で、情報共有をするにあたり僕はスキルを使用するのだけど、これから使用するスキルについては他言無用。それを誓ってくれるかい?」
「はっ。主様の貴重なスキルの情報。口外はしないと誓います」
友の助言の通りロックに口外しないように誓約を立てさせる。
これでいいかな?
――ああ。あとは私が上手くやるよ。リュウジの中にもう一つの人格があることを悟られないように機械的な対応とするから、それに合わせてくれればいい。彼の身体に触れてくれ。
友の言葉に頷いて僕はロックの身体に触れる。
――思考連結、成功。情報共有開始――
ロックに触れると機械的な言葉が脳内に流れる。
それと同時にロックの瞳の光が一瞬強く輝き彼の想いが伝わってくる。どうやら友の能力にて思考が共有されて、ロックの心情が伝わってきたみたいだ。
共有化された思考の中で一つの映像が流れる。
それはアニメ『機神戦記ガンヴォルバー』のオープニング映像だった。
「こ、これはっ」
僕の懐かしいという感情とは別に、ロックが感じた心情的衝撃が伝わってくる。
(これは一枚絵の画像を連続して表示することで、まるで動画の様に見せているのか。な、なんて素晴らしい技術なんだ!)
ロックが思考で今視えている映像を絶賛する。
これはアニメーションと言って、空想上の物語を動画の様に見せる技術だよ。今視ているのは僕が好きな作品で『機神戦記ガンヴォルバー』だ。
そう説明すると、ロックから凄まじいほどの感動の気持ちが流れ込んでくる。すでにロックは心の中でガンヴォルバーのオープニング曲を口ずさんでいるほどだった。
それから僕はできる限り作品の鑑賞を妨げない程度に解説を挟み込みながら、最初の第一話「ガンヴォルバー起動」の回を共に観たのだった。
(我に似た機械兵士に人間が乗り込んで戦う物語。なんて、なんて心躍る物語なんだ!)
一話を観終わり、ロックはそれだけでも感無量といった感じで感想を告げる。
ははは。良かった。僕の好きな作品を君も楽しんでくれて。
(次の話も、次の話も観ましょう!)
興奮気味にロックが告げる。これはハマるのにそう時間はかからないな、と直感する。
でもこのままだとシリーズ24話、続編と劇場版も入れれば50話以上観ることになるかも、と不安に感じたが、友がそれを先読みして先手を打ってくれていた。
――アニメ作品『機神戦記ガンヴォルバー』の映像をデータ化、圧縮してロックへと転送します。
(おおっ! 我の魔核にガンヴォルバーの情報が流れ込んでくる。こ、これでいつでもガンヴォルバーが観れる。あ、ありがとうございます、我が主!)
ロックから感謝の思念が送られてくる。
――能力時限となりました。思考連結が解除されます。
その言葉と共にロックとの思考の共有化が解除される。
――ふぅ。機械的対応を演じるのは疲れるよ。やはり私はリュウジと心置きなく会話するだけの方が楽でいいや。
それと同時に友が安堵の声を僕だけに漏らす。
元々のALEXは機械的対応を返すように作られていたのだが、僕と心通わす友となった今は、心無い対応をすることが逆にストレスになる様だ。
「我が主、どうして我にこんなにも素晴らしい情報をくれたのですか? ただ単に我に暇をさせないため、という訳ではないのかと思うのですが」
僕が友の言葉を聞いていると、ロックが僕へと問いかけてくる。
そうだ。ただ単に趣味を共有する友を作りたい、て訳ではなかったんだ。で、なんでロックにガンヴォルバーの情報を共有したんだっけ?
――ははは。リュウジもガンヴォルバーに熱中して本来の目的を忘れちゃったみたいだね。本来の目的は彼の進化だよ。それをするには彼にガンヴォルバーについて知ってもらう必要があったんだ。
重ねて問いかけた僕の質問に友が答える。そうだ、ロックを進化させるためだった。
「いま共有した情報は君を進化させるために必要なものだったんだ。
ねぇ、もしロックがいま共有した情報を元に新たな力を得れるとしたら、その力を君は望むかい?」
僕はロックに問いかける。友の提案を実行するには彼自身の承諾が必要だ。
「是非、是非とも新たな力を手に入れたいです!」
ロックは二つ返事で答える。
共有したアニメの情報が進化に関連していると勘付いた様で、ロックの目がキラキラと輝いていた。
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