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第24話:ALXSの提案

◆前回までのあらすじ◆

二人目の仲間、かっこいいゴーレムに『ロック』と名前を付けた。

 ロックと名付けた進化型(アドバンスド)鉱石(マテリアル)人形(ゴーレム)は仰々しく頭を下げた後、ちらりとノインへと視線を向ける。


「そちらのヒュドラが魔力を回復するまで、我らは待機で良いでしょうか?」


 ロックが僕に指示を仰ぐ。

 僕は「そうだね」と頷くと、ロックは直立したまま動かなくなった。瞳や胸部の光が淡くなったのを見ると、パソコンでいうところの休止状態(スリープモード)になったみたいだ。

 こう見るとやはりロボットの様だ。


 そのまましばらく沈黙の時間が続く。

 その沈黙に耐えられなくなりかけたところで、(アレクス)が脳内で声をかけてくる。


――リュウジに一つ提案があるんだけど、いいかな?


 珍しく(アレクス)が僕に判断を仰いでくる。

 僕は「何を言っているんだよ。僕とアレクスの仲じゃないか、遠慮せずに言ってくれよ」と心の声で返す。


――ありがとう。この提案は私の好奇心からくるもので、下手をすればリュウジを危険に晒す可能性があるので、伝えるべきか悩んだのだが


 そう前置きをする。

 ことわざの「好奇心は猫をも殺す」ってやつだね、と相槌を打ち続きを促す。


――ロックのスキルを解析し、興味深い可能性を導き出したんだ。それは「ロックを私たちが知るロボットアニメの『機神戦記ガンヴォルバー』の機神兵(ロボット)に近い存在へと進化させられる可能性がある」ということだ。


 (アレクス)が語った内容は、僕の好奇心をくすぐるには十分すぎる内容であった。

 全身に雷が落ちたかのような感覚に襲われる。


「ちょっ――」


 それは本当かい?


 思わず、声が漏れてしまった。


 『機神戦記ガンヴォルバー』とは僕が生前に熱中して視聴していたアニメのタイトルだ。

 内容は機神兵(モビルアームズ)と呼ばれる人型機械兵器に乗り込んで戦う戦記ものだ。

 二つ目(デュアルアイ)機神兵(モビルアームズ)を駆る共和国軍と、一つ目(モノアイ)機神兵(モビルアームズ)を駆る帝国軍が争う戦争はやがて宇宙から飛来した侵略魔獣を倒すために手を組んで戦うことになるという壮大な物語の作品だ。

 その主人公が駆る機神『ガンヴォルバー』にロックの姿が重なる(にている)のだが、(アレクス)が言うには《《今以上に》》その機神兵に近づくことが可能だと言うのだ。


 胸の高まりが隠せない僕に釘を刺すように、(アレクス)が言葉を続ける。


――けれども、それを実行するにはいくつかの問題がある。ひとつは彼に私が演算した結果を彼に伝えなくてはならず、その際に『私の存在が彼に知られる可能性がある』ということ。もうひとつは新たな能力を手に入れたことで『彼が反旗を翻す可能性がある』ということだ。


 それは(アレクス)の提案を実行するにあたっての懸念点だった。


 まずは彼に『(アレクス)』の存在がバレてしまう可能性。この世界は異常に好戦的な者が多い。そんな世界では手札(スキル)が知られることは死活問題だ。それが切り札(ジョーカー)となればなおさらだ。


 そしてもう一つの懸念はチカラを得たことによる慢心と謀反の可能性だ。アニメや漫画でもよく見た場面であるが、こちらの可能性は低いのではと僕は思っている。

 この世界の者たちは好戦的ではあるのだが、一度主従関係を結んた後の忠誠心はかなり高いのだ。それはたぶん弱肉強食の理が強いこの世界である故の弱者の処世術と思われる。もし強さの立場が変わればその限りではないかもしれないけど……


――もし私の提案を実行したとしても、彼の強さがリュウジを越えることは限りなく低いよ。


 僕の想いを読み取って(アレクス)が告げる。


 ならば大丈夫だね。やはり一番の懸念は(アレクス)のことを知られる可能性があるってことか……


――私のことを一番に気にかけてくれるのか。嬉しいね。しかし、それについては私の方で何とかしてみせるよ。念のために彼に誓約を立てさせればと思うけどね。


 (アレクス)がそう告げる。ならば憂いはないね。


 という事で僕は休止状態となっているロックへと声をかけるのであった。

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