第21話:ゴーレム
◆前回までのあらすじ◆
ノインの魔力枯渇を癒すために立ち寄った洞窟で精神攻撃してきた謎の声の正体は、一体のゴーレムであった。
姿を現したのは一体のゴーレムだった。
だが、その姿は僕の想像したものとは違っていた。
全身が岩で出来た人型の魔物なのは想定通りだが、その見た目が想定外だった。
兜に似た形状の頭、目にあたる部分が光っているがその片方は怪しく赤い光を放ち、甲冑に似た体躯は胸部の中心に光球体が輝き、牙に似た突起が腹部に並んでいる。肩掛け外套で左腕が隠れているが、見えている右腕と両脚は流麗でまるで美術品の様だった。
つまるところ――『か っ こ い い !』のだ。
ゴーレムといえば岩を連結させたような武骨な見た目をイメージしていたのだが、その姿はスタイリッシュで、外套や身体のあちこちに刻まれた傷などは中二病心をくすぐるカッコ良さポイント満載なのだ。
――ははは。リュウジ、目がキラキラしてるぞ。やっぱり男の子はこういうロボット系の見た目に弱いんだね。
友の冷静にツッコミに我を取り戻す。まさにそのツッコミの通りで、僕は目の前のゴーレムは転生前に見たロボット作品の『機神戦記ガンヴォルバー』の主人公機にそっくりなのだ。胸躍るのは当然だ。
「はっ! あれだけ強気な発言をしてたのに脆弱そうな見た目だな。
ゴーレムなのにそんな細い体躯なんて、私でも勝てそうだ」
僕の思いとは裏腹にノインが前に出て姿を現したゴーレムへと挑戦的な言葉を投げかける。
ノインは僕に対して以外は毒舌な様だ。
いやいや、その細身のシルエットがいいんじゃないか。
僕の知ってるロボットアニメでは、細身の機体でも戦況によって様々な装備に換装して戦っていたのだった。毎話ごとにどんな装備で出撃するのかワクワクしてアニメを観ていたものだ。
「フッ、強がっても無駄だ。我が緋慧眼は全てを見通す。
貴様は現在、魔力が僅少となっている。しかも、スキルの主たる『毒』は我が鉱石の身体には効果を成さない。
相性も相まって今戦ったならば十中八九、我が勝つだろう」
ゴーレムは赤く輝く左の瞳部分へと手を遣り独特のポーズを取りながら告げる。やはりあの紅く輝く左目には何かのスキルが宿っている様だ。
くううっ、仕草がことごとく僕の中二病心をくすぐってくる。
油断していると口から「かっけぇー」の言葉が出てしまいそうだ。戦いとは違う、別の意味で油断が出来ない……
――む、あのゴーレム、リュウジについても【解析】した様だ。だが、奴からは敵対の意思は感じ取れないな……
友が相手のスキル発動を感知して報告してくれる。
その言葉通り、僕の目からしてもあのゴーレムからは敵意は感じ取れなかった。
「相性が悪かろうが、もし貴方が私たちに敵対するとなれば倒すまでだ」
ノインが腰に装備した片手剣を抜き放つ。それは僕の鱗を変化させて造り出した黒刀だ。
ってか、なんでノインはなんでそんな好戦的なんだよ。魔力が残り僅かなんだから戦っちゃダメでしょ!
僕はそんなツッコミを心の中でしながら、ノインの肩に軽く手を置き戦闘態勢となっている彼女を制する。
「リュウジ様……」
「ノインは下がってて。ここは僕が相手するよ」
そう告げて僕は前へ出る。
無駄な戦いは避けたいし、それにもし戦闘になったとしてもノインを失うわけにはいかない。
僕が前に出たことでゴーレムに緊張が走ったのを感じ取る。
「くっ、まさか大将が先に出てくるとは、な……」
ゴーレムは左のアイカメラに手を遣っていた右手を拳に変えて構える。
見た目のカッコ良さに気を取られちゃいけない。相手は戦闘態勢なのだ。
――私の見立てではどれだけ油断したとしても、リュウジが負けることはないと思うけどね。
友が楽観的な解析結果を告げる。
うーん、出来れば戦わないで済めばいいんだけどな、と思いながら僕は相手に声をかける。
「その眼でこちらを解析したよね。という事は、僕との実力差は把握できているんじゃない?
君じゃ僕には勝てないよ」
できるたけ相手を刺激しないように語り掛ける。
――リュウジ。その言い回しだと、煽っている様にしか思われないよ。
心の中で友が冷静なツッコミを入れてくる。もう、うるさいよ。
「クッ、だいぶ余裕の様だな。
汝が言う通り、我が緋慧眼で解析した結果では絶望するほどの実力差だった。
天地がひっくり返っても我が汝に勝つ事はできないだろう……
だが、我にはどんな実力差があろうとも確実に効果を発揮するであろう『奥の手』がある!」
僕の言葉に、ゴーレムが答える。石で出来た顔には表情がないため、その心情は読み取れない。
なんでこの世界の者たちは好戦的なんだよ。平和的解決とかできないの!?
心の中でそう思っているとゴーレムが動く。
「これが我が命を賭して繰り出す全力のぉぉぉ――」
そう叫んでゴーレムが地面を蹴る。
走り出したことで片外套がはだけ、見えた左腕は大きく損傷していてほとんど機能していない様だった。
――魔力は感じない。単なる突進攻撃ならばダメージはないと思うが、念のため衝撃に備えて。
友の言葉に僕は防御態勢を取る。
一気に距離を詰めたゴーレムは小さく跳躍すると、僕の目の前に両手両足を地面に付けるように着地する。
「えっ」
僕は目の前の光景に言葉を失う。
それは見事なジャンピング土下座であった。
【ちょい出し設定集】
・今回登場したゴーレムの外見について、薄々とはお気づきと思いますが某ロボットアニメの機体を参考にしています。
具体的には、ガン●ムエク●アリペアとウィ●グガン●ムフェニーチェを足して二で割ったような機体を想像いただければと思います……(^^)
やはり半壊ロボットってカッコイイですよね!
度々のお願いですが、作者のモチベ維持のために、★ボタンをポチッて評価いただけると嬉しいです。




