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第18話:いったんの休息

◆前回までのあらすじ◆

ノインと共に旅立ったリュウジだが、試しに発動させた【絶対の盾(イージス)】を破壊してしまったことで、ノインが魔力枯渇状態となってしまい休息が必要な状態となってしまった。

「ごめん。まさかここまでスキル破壊時の反動が大きいなんて思ってなくて……」


 僕の謝る言葉に、ノインはすぐに首を横に振り「いえ、このスキルはそう簡単に破られるものではありません。むしろここで罰損(ペナルティ)を経験できて良かったです」と答え、自力で歩きだそうとする。


 しかし、その足取りにはあまり力が入らない様で少しふらついてしまっている。


――魔力枯渇寸前、といった感じだ。一旦、休ませた方がいい。


 その意見はもっともだと思い、僕はノインに対して「ノインの魔力が回復するまで、少し休もう」と提案する。

 その言葉にノインは「いえ、私の所為でリュウジ様の旅を足止めさせるわけにはいきません」と否定するが、僕の旅は急ぐものではないと伝えると、ノインは渋々ながら休憩することを了承してくれた。


 そこまで僕に遠慮しなくでもいいのに、と思いながら、近くの岩場に腰を掛ける。


 僕はふぅと一息つき、ノインの方を見ると、彼女は天を仰ぎゆっくりと深呼吸していた。


――様子を見るとノインはだいぶ無理していたみたいだな。大気中の魔素を吸収するのに集中している。少しそっとしておいてあげよう。


 そうだね。スキル効果を無効化できる凄いスキルだったけど、打撃に弱いのと罰損(ペナルティ)が大きいのが玉に瑕だね……


――いや、その認識は少し間違っているな。先ほども伝えたけど、リュウジは自分の力を過小評価しすぎだよ。私の見立てでも【絶対の盾(イージス)】はかなり有用で堅牢なスキルだ。


 そうなのかな。剣は弾けたけど、僕の拳なんかで壊れるのはやっぱり弱点なんじゃないの?


――その認識が違うんだ。分かりやすく例を挙げるならば、先の戦いで黒髪の勇者が使った虹色のオーラを纏った一撃、あの攻撃を【絶対の盾(イージス)】で防御したら、私の演算結果では92.32%の確率で防御できると試算されたよ。


 えっ、あの凄い攻撃を。だって、あの攻撃って最高峰の美徳スキルによって強化されたものでしょ?


――ああ。【絶対の盾(イージス)】はスキル効果をすべて無効化できるから、あの一撃は『ただの斬撃』になる。そして、身体強化系の上位スキルを使用していた金ピカ男の攻撃であっても、十中八九防げるだろう。もし盾を砕けたとしても、相手の拳も砕けるはずだ。


 僕を釘付けにしたあの金ピカ男の攻撃も防げるの? でも、それじゃあ僕の(パンチ)が盾を砕いたのは


――それだけリュウジの身体能力が高いという事だ。人間が扱うユニーククラスの身体強化効果と同等以上の威力がリュウジの通常攻撃にあるってことだ。


 ええぇー、そうなの?


 僕は(アレクス)の言葉に驚きつつ、自分の手に視線を落とす。


 どうやら僕は思った以上の怪物になってしまったみたいだな、と再認識する。


 (アレクス)と脳内でそんなやり取りをしていたが、現実では無言の時間が過ぎていた。その間もノインは天を仰ぎ目をつぶり魔力回復に集中していた。


 ねぇ、ノインの状態はどうなのかな?


 不安になって(アレクス)に確認する。


――見た感じだとあまり魔力が回復していないみたいだね。魔素の乏しい岩山だと回復が遅いみたいだ。


 やっぱりか、どうにかしたいね。


――そうだね。魔素が多い場所があれば回復は早まるのだが


 (アレクス)はそう言うと、しばし沈黙する。多分、どうしたら良いか必死に演算し(かんがえ)てくれているのだろう。


 魔素、つまり魔法の力が集まっている場所があればいいってことだよね。うーん、どこかないかな。


 僕は良い場所はないかと辺りを見回す。

 ノインと会った森は魔力がいっぱいあった。あれは魔樹と呼ばれる木が魔素を吐き出しているかららしい。見回す限り岩壁や岩盤だらけの岩山ではそんな魔力が集まる場所などなさそうだが――


 ん?


 辺りを見回した僕は少し先に魔力を感じ取る。

 目を凝らすとそこには、崩れた岩の陰に隠れる形で横穴が空いている事に気付いた。その横穴は昨日まで拠点として使っていた洞穴とは違い四角く整えられた跡があり、入り口からは僅かだが魔力が漏れ出ていた。


 アレクス、あそこに見える穴から魔力が漏れ出てるように思うんだけど?


――よく見つけたね、リュウジ。良い場所だ。入り口が整備された跡があるから、人が手を加えた『坑道』だろう。もしかしたら『ダンジョン』の入り口かもしれない。


 (アレクス)の言葉に「ダンジョン」という心踊る言葉が含まれていて、少しワクワクする。


――ダンジョン、って聞いて目の色が変わったね。ノインの回復が出来たら、そのままあの中を探索してもいいかもね。


 僕の心を見透かしてか、(アレクス)がダンジョン探索を提案してくれた。

 そんな相棒に「さすが、僕の気持ちわかってるね」と信頼の言葉を告げると、ノインへと声をかける。


「ノイン、ちょっといいかい?」


「はい」


 天を仰ぎ目で瞑っていたノインがこちらを向く。


「少し先に洞窟を見つけたんだ。そこならここより魔素が多いはずだから、そこまで移動するのはどうかな?」


「もちろんです。少し歩く程度でしたら問題ありません。むしろ私の回復促進のために魔素の多い場所を見つけ出していただいたことに感謝いたします」


 僕の提案をノインは快く了承してくれた。少し謙りすぎている気がするけど、そこは目を瞑ることにする。


 こうして僕たちは山岳部に見つけた洞穴へと向かうのであった。

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