第13話:人化
◆前回までのあらすじ◆
人間に変化する【擬態】を習得した。
人に化けるスキルを習得したが、それより先に解決しなくてはならない問題がある。
(どうして君は裸なんだよ。服とかは無いの?)
目の前に一糸まとわぬ姿の女性がいるのだ。どうにかしないといけないだろう。
「スキル【擬態】は身体の構成を変化させるものなので、装備などは別に用意しなければいけないのです。
人間に追われたときに強制的にスキルを解除させられたため、その際に人間の姿の時に装備していたものは壊れてしまいました」
女性姿のヒュドラが淡々と答える。
そう考えると魔獣の身体ってのは裸でいるのと変わらないのか、などと余計なことを考えてしまう。なんか、ちょっと恥ずかしい。
――相手が裸でいることが問題ならば、対応策があるよ。リュウジの使用可能なスキルで対応可能だけど、実行するかい?
友の言葉に僕はすぐ頷き、すぐに実行する。
まずはスキル【鱗牙再生】を使用する。すると発動させた部位の鱗が新たに生成され、元に生えていた鱗が剥がれ落る。
さらにスキル【鱗牙変形】にて剥がれ落ちた鱗を『服』の形状に変形させたのだ。固い鱗が柔らかそうなワンピースの服に変わったのを見て、どんな仕組みになってるんだろうと思ったが、「まぁ、異世界のスキルなんて理屈じゃ説明できないものだよな」とアニメで異世界の設定を知っている僕はすぐにそれを受け入れられた。
そうして作り出された装備一式を渡すとヒュドラは恐縮しながらも受け取って、それを身にまとった。
僕の鱗から作られた装備なので、色が黒一色であるのが玉に瑕ではあるのだが、これで目のやり場に困ることはなくなった。
しっかりと彼女の姿を視認できるようになって、改めて彼女がとても美人であることを認識させられる。
黒のワンピースに明るい紫色の髪と白磁の様な肌が良く映える。切れ長の蠱惑的な深紅の瞳がまっすぐにこちらを捉えており、目が合うとその魅力にとり込まれてしまいそうな感覚に陥る。
僕は目が合ったことで少し上気してしまった気持ちを落ち着かせるために、小さく深呼吸して思念を送る。
(えっと、僕も人の姿になってみるね)
思念にてそう告げると、僕は習得したばかりのスキル【擬態】を発動させる。
スキルを発動すると、大気中に漂う魔素が渦巻き、体内に取り込まれる。からだ全体がジワリと熱くなり、体内が不思議な力で満たされると変化が始まる。
大きな竜の姿だった体がゆっくりと縮んでいき、全身の感覚が鋭敏化していく。
この手や足の感覚、なんか懐かしいかも、と思っているうちに変化が完了する。
「これが人間の姿、か……」
自然に口から声が発せられる。視界に映る両手は五指がしっかりした人間のもので、器用な人間独特の繊細な動きが行えた。
転生前が人間だったため、すんなりと発声や体の操作が出来た。
「そういえば、体は――」
もし裸だたら恥ずかしいと思い体に触れてみたが、しっかりと装備を身にまとっていた。
どうやら友が気を利かせて竜の鱗を変化させた装備を纏わせてくれたみたいだ。
例の如く元々が僕の鱗なので黒一色なのだが、それはそれで闇を纏った冒険者って感じでカッコいい。
――この世界での情報がまだ足りないため、前の戦闘で対戦した人間の装備を参考に武具を再現したよ。
友の言葉通り、僕の纏っていた装備は先に対戦した黒髪の軽戦士のものに近いものだった。
防具だけでなく、腰には扱いやすい片手剣が鞘と共に装備されていた。
僕はその剣を抜剣し、その刀身を鏡代わりに自分の姿を確認する。
そこに映ったのは齢十歳程度の少年の姿が映っていた。
擬態化しても先の戦闘で負った傷はそのままの様で、右目は刀傷が残り瞼が閉じられているが、その姿は健康そのものの溌剌な少年であった。
こうして僕はスキルの力を借りて人間の姿となる事に成功したのだった。
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