9話 ~お菓子~
芦屋 奏太:子役をきっかけに芸能界に入った人気若手俳優。お菓子とインスタント食品が大好きで、今一番ハマっている趣味はポーカー。
スライム:スピードと魔力操作に優れているが直接攻撃には弱い。
黄金ディストピア:別の次元に奏太だけの王国をつくることが出来る。ポイントを使用することにより、魔物や魔道具の創造、怪我の回復などが出来る特殊魔法。
パニックアロー:魔力で作った矢が命中すると相手の「視覚、聴覚、嗅覚」に異常を引き起こす特殊魔法。
ここは特殊魔法「黄金ディストピア」の中の世界。
温かい太陽に照らされる穏やかなエメラルドグリーンの海。孤島には家と大きなヤシの木があって、そこにはスライムと綿菓子がいる。
「ありがたーい、本当にありがたいよー」
山と積まれた色とりどりのお菓子に頬ずりするスライム。そこにはプリッツ、ポッキー、ピザポテトなど日本でお馴染みのお菓子たちばかりがある。
「異世界に来てまで日本の美味しいお菓子を食べれるなんて本当にありがたいよ」
「奏太さんはお菓子が好きなんですね」
ふわふわと宙を浮遊する可愛い綿菓子チョコラティエがほほえましいものを見るような、頭のおかしい人を見るような顔で見ている。
「もちろん大好きだよ、大好きっていう言葉じゃ言い表せないくらい大好き。このために異世界に転生したまであるよ」
「そんなにですか!?」
「だって僕が行く予定だった天国にはこんなに素晴らしい物がないんでしょ?」
「そうですね、こういうのは無いですけど健康的なおやつが支給されます」
「健康的?」
「煮干しとかサツマイモとかの健康的で美味しいおやつです」
スライムの顔がシナシナになった。
「煮干し?サツマイモ?そんなの全然ダメだよチョコラティエ。おやつっていうのは不健康で良いんだよ」
「健康な方が良いと思いますけど」
「君には失望したよ………」
スライムはため息をついた。
「そんなぁ………」
「けど安心していいよ」
「なにがですか?」
「僕があげるお菓子を食べ続ければチョコラティエもすぐメロメロになるからね、ふふふふふ………」
「なんかこわいです………」
不気味に笑うスライムからチョコラティエはすこし距離を取った。
「まあお菓子は後の楽しみに取っておくとして、さっき手に入れた魔石で僕たちの事を手伝ってくれる魔物に来てもらおうか」
「わかりました。それではこちらに魔石を入れてください」
チョコラティエが綿菓子のようなフワフワした白い手で指し示したのは島の中心に立つ巨大なヤシの木。
「はいっ」
眠そうな顔をして開けている大口の中に赤い魔石を放り込んだ。
「ヤッシーーー!」
ヤシの木は目を真ん丸に開けて甲高い声で叫んだ。
「なんか怖っ」
「モニターカモン!」
チョコラティエが声をあげると何も無かったところに巨大なモニターが出現した。
「こちらのモニターに表示された魔物の中から好きなものを選んでください。生み出した魔物は奏太さんの手となり足となり働いてくれます」
「たくさんいるねぇ………あ、レッドオークもいる」
モニターをスライドさせていたカナタが言った。
「レッドオークはパワーと耐久性に優れた魔物です」
「やっぱり怖い顔してるね」
「レッドオークですから」
チョコラティエが頷いた。
「どうしようかな。最初は一緒に魔物と戦ってくれるようなやつにしようと思ってたんだけど、違うのにしようかな」
「何か考えていることがあれば教えてください。チョコラティエは異世界の水先案内人なので、この中の魔物の事はすべて頭に入っています」
「それは頼もしい。それじゃあちょっと相談したいんだけどさぁ、この森の中を探索することのできる魔物が欲しい」
「なるほど、探索の能力に優れた魔物ですね?」
「そう。さっきみたいにいきなり目の前に現れてビックリさせられるのはごめんだからね」
「それは確かにそうですね、あの時はチョコラティエもすごくびっくりしました」
「直接的な戦力を整えるよりもまずは知ることに力を入れた方が良いのかなと思ったんだよね」
「とても良いと思います!」
「本当?」
「強い所を伸ばすよりも弱い所を補強する。そういう考え方の方が負ける確率は少なくなると思います」
「そう言われたらなんか自信が出てきた」
「それでは奏太さんの求める探索の能力に優れた魔物の候補はこちらです………」
モニターに数種類の魔物の名前が表示された。
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