6話
芦屋 奏太:子役をきっかけに芸能界に入った人気若手俳優。お菓子とインスタント食品が大好きで、今一番ハマっている趣味はポーカー。
スライム:スピードと魔力操作に優れているが直接攻撃には弱い。
可愛い綿菓子チョコラティエの戸惑いの声が断崖絶壁の森に響いた。
「あいつを倒すなんて無茶ですよ。いまの奏太さんとレッドオークにはレベルの差があり過ぎます」
「分かってる。だけど準備はもう終わっていてあとはこの門をくぐるだけ。だから考えるだけは考えてみても良いでしょ?」
「それはそうですけど………」
「チョコラティエも力を貸してよ」
「………分かりました。だけど不思議です、状況としてはとても不利なのにどうしてそんなに戦いたがるんですか?」
「勘かな………」
「勘ですか?」
「うん。僕はポーカーが趣味なんだけど、調子のいい時って悪い手でも勢いとブラフで勝てたりするんだよ。今はその時の感じがする」
「良く分かりませんけど、ギャンブラーですね………」
呆れた顔の可愛い綿菓子。
「どうやったらあいつに勝てるか一緒に考えようよ。きっと何か方法があるはずだ。逃げるよりも勝つ方が気分が良いし」
「うーん………さっきも言いましたが直接戦うのは論外です」
「それはレッドオークの得意分野でスライムは苦手分野だから相性最悪だもんね」
「あと、「パニックアロー」では勝てないと思います」
「僕もそう思う。一度完璧に当たったのに倒れることすらなかったからね。あれじゃあ何十発当たっても倒せそうにないし、一度見せてしまった以上は不意打ちも期待できない」
「そうしたら残っている選択肢は「黄金ディストピア」ですけど、これは攻撃用の魔法ではありませんよ?」
「黄金ディストピア………僕が認めたものしか入ることのできない僕だけの空間」
「そのとおりです」
「………僕が認めていない存在があの門を潜ったらどうなるの?」
「別に場所にワープすることになります」
「お!それは知らなかったな」
チョコラティエの動きが止まった。
「そうですね………説明していませんでした。あまり重要でないと思っていました」
「多分それだな………」
「え?!」
「もう少しで何か思いつきそうな気がする」
きっと今の僕は相手に負けないくらいの手を持っている。これを逃したらきっと後悔する
「もうあまり時間がありませんよ」
お互いの距離は20m位か………。サイとカバを足して凶悪にしたような魔物の表情が見える。笑っている。勝利を確信しているのだろう。
どうしてここまで執拗に追いかけてくるのか。それは多分僕がスライムだからだろう。あいつはスライムなんかに攻撃されたことが許せないんだと思う。だからあれだけヘトヘトになっても追ってきたんだ。
そのとき、断崖絶壁の向こうから強い風が吹いてきた。森と違って遮るものが無い分、風が直接当たる。
「そうか!」
僕は跳び上がっていた。
「もしかして何か思いつきましたか?!」
チョコラティエが期待と不安の混じった目を向けてきた。
「うん!これならたぶん行けると思う………」
自分の考えをチョコラティエに伝える。
「あーなるほど………」
考えている通りに行けばあいつを倒すことが出来るはずだ。
「勝てるよ、チョコラティエ」
「やってみましょう!」
目の前では黄金ディストピアへの門が巨大魚のように口を開け、自らの出番を今か今かと待ちわびているように見えた。
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