4話
芦屋 奏太:子役をきっかけに芸能界に入った人気若手俳優。お菓子とインスタント食品が大好きで、今一番ハマっている趣味はポーカー。
スライム:スピードと魔力操作に優れているが直接攻撃には弱い。
着物を着た美しい黒髪の女性が放った矢は音も無く一直線に飛翔し、赤い魔物の眉間に命中した。
「ンボォーーー!」
大声をあげながら上半身を仰け反らせた。倒れるか?と思ったけどすぐに体勢を立て直して怒りの声をあげた。
「無傷!?」
「あれを見てください!」
サイとカバを足して凶悪にしたようなそいつは挙動不審に周りを見渡している。まるで怒りの対象をどこに向ければいいのか分からないといった様子。
「魔法が効いています!」
可愛い綿菓子ことチョコラティエが嬉しそうに言った。
「あれが奏太さんの特殊魔法「パニックアロー」の効果です!」
特殊魔法魔法「パニックアロー」。魔力で作った矢が命中すると相手の「視覚、聴覚、嗅覚」に異常を引き起こす。
「あいつの上にマークが出てる」
魔物の頭の上には黒い目玉のマークが浮かんでいる。
「そうです。あれが「視覚異常」の効果が発現したという目印になっています」
「どうして視覚異常だけなんだろう?てっきり全部の効果が同時に出るものだと思ってた」
「それはレベル差です。むしろひとつだけでも効果があったのは幸運かもしれません」
それなら納得。
それにしても我ながらいい魔法を選んだと思う。単純な飛び道具としての魔法の弓矢としての力もありつつ、特殊効果を持っていて自分よりもレベルの高い相手にも効果を発揮する。
「あの魔物の名前はレッドオークっていうんだ?」
「はい。すごく頑丈で力が強い種族です」
「さすがチョコラティエは物知りだね、助かるよ」
「ありがとうございます、どんどん頼っちゃってください!」
奏太が感心した様子で言うと、可愛い綿菓子はうれしそうに胸を張った。
「ゴゴゴゴゴーーー!!」
憤怒のレッドオークが突進してきた。気が付けば頭の上の目玉のイラストも消えている。
「また鬼ごっこの始まりだ」
奏太も走り出した。
この時の奏太は知らない。
レッドオークが何も考えずに追っていたわけでは無いという事を。
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