26話
芦屋 奏太:子役をきっかけに芸能界に入った人気若手俳優。お菓子とインスタント食品が大好きで、今一番ハマっている趣味はポーカー。
スライム:スピードと魔力操作に優れているが直接攻撃には弱い。
黄金ディストピア:別の次元に奏太だけの王国をつくることが出来る。ポイントを使用することにより、魔物や魔道具の創造、怪我の回復などが出来る特殊魔法。
パニックアロー:魔力で作った矢が命中すると相手の「視覚、聴覚、嗅覚」に異常を引き起こす特殊魔法。
深い深い異世界の森の中にレッドヘイトワームが3体同時に倒れる音が響いた。
「ンギョギョギョギョーーー!」
敵襲だと気が付いて即座に当たりを見渡した5体のレッドヘイトワーム。しかし敵の姿は確認できないし怪しい音もしない。
レッドヘイトワームは鞭のように柔軟な体と土魔法を使いこなす強力な魔物だが、目が悪く情報のほとんどを音に頼っているという特性を持っている。
叫びながら敵を探す足元に、水の弾ける感触がした。何が起きたのか分からないまま仲間へと注意の声をあげたが、もうすでに全員が同じ状態であると知った。
金色のスライムが木の影から姿を現した。
あいつだ、あいつを殺せ。走り出そうとしたところで足が地面から離れないことに気が付いた。
スライムがいつのまにか目の前にいて、触手のような長い手の先で触れられた。てっきり強力な一撃が来るに違いないと備えていたのに、ただ触れられただけ。
そう思った瞬間、目の前が真っ白になって体の内部で何かが爆発したような衝撃と共に体が痺れた。
何も見えなくなった。
「よし。大分戦い方が分かってきた」
体の内側から爆発した5体のレッドヘイトワームを確認した後で奏太は言った。
「おめでとうございます。もうすっかりレッドヘイトワーム相手に苦労しなくなりましたね」
「ありがとうチョコラティエ。最初に戦った時はもうめちゃくちゃ大変だったのにね。なんだか大分昔の事みたいな感覚だよ」
「これで赤い魔物を倒した数は38体になりました。まさかこんなに順調にいくとは思いませんでしたよ。奏太さんは本当にすごいですよ」
「うれしいけどあんまり褒めないでよ。こういう時にこそ落とし穴が待っている気がするんだよね」
「たしかにそうですね、これからはあまり褒めないようにしましょうか」
「え、ちょっと待ってよ。それはなんか違うというか………」
「冗談ですよ」
宙に浮かぶ可愛い綿菓子チョコラティエは嬉しそうに笑った。
「なんだ冗談か………ヴィシュラット達、魔石を回収してくれ。結構魔力を消費したから一旦戻ろうか。休憩したい」
「わかりました。だけどお菓子の食べ過ぎは駄目ですよ?」
「何言ってるの。僕はお菓子を食べるためにこの世界に来たんだから好きなだけ食べるよ」
「そんなの駄目ですよ。野菜も食べましょうよ」
「そういうのは人間に任せておけばいいんだよ。僕はスライムだから野菜とかは必要のない体質なんだ」
「そうですかね?」
「僕の体の事は僕が一番分かっているんだから間違いないよ」
「うーん」
チョコラティエが首を傾げた時、森の中に悲鳴がこだました。
「あ!」
見るとそこには尻もちをついている子供がいた。散乱する8体のレッドヘイトワームの死体を見て驚いているらしい。
「人間だ………初めて見た」
「ばけもんだーーーー!」
急いで立ち上がった少年は漫画みたいに足を高速回転させながらどこかに走り去っていった。
「なんだったんだろう………」
「気を付けた方が良いかもしれません」
チョコラティエが真剣な表情で言う。
「奏多さんにとって人間はもう味方ではないですからね………」
「そうだ、僕はスライムだったね」
この世界で初めて出会った人間。これから何かが起こるような予感がした。
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