20話 ~ネズミに転生した男3~
主人公視点ではありません。
俺の名前は坂井龍平、人間だった。
それじゃあ今は人間じゃないのかって言われれば、全く違う。今の俺はブルーヴィシュラットっていう哀れなネズミの魔物だ。
俺には悩みがある。
それは日が経つごとにネズミとして生きていくことに違和感が無くなってきているってことだ。
俺の毎日の仕事は、仲間達と一緒にスライムの命令で魔物を森の中で探し回ることなんだけど、1日に5匹くらい見つければあいつは俺たちの事を自由にしてくれる。
この自由時間が最高なんだ。あいつが倒した魔物を好きなだけ食って腹を満たした後の昼寝が幸せだ。木に登ってみたり仲間たちと走る速さを競ってみたり。
人間だった時には感じることが出来なかった、心安らぐ時間ってもんがここにはあるんだ。
けど本当にこれで良いのかなってのも思う。できることなら人間に戻りたいし、スライムの奴に命令なんかされたくはない。本当の自由っていうのはあいつの下僕である以上は手に入らない。
だけどあいつに助けられていることは、いくら俺でも否定できない事実だ。もし本当に自由になったとして、俺たちだけの力でこの森の中で生きていけるんだろうか?
そんなこと考えながら木陰でうとうとしながらドングリを食ってた時の事だ。
いきなり空からでっかい鳥が俺たちの群れに襲い掛かってきたんだ。
油断した。
一応敵には警戒はしていたけど、いままで空から魔物が襲ってきたことは一度も無かったから、地上ばっかり見ていた。
サブロウはすごい声で鳴いた。
サブロウってのは俺が名を付けてやった奴で、体が大きくて力があることが自慢だ。空から降りてくる勢いのついたカギ爪の攻撃だからそりゃあ痛かっただろうよ。
俺も周りにいるブルーヴィシュラット達もすぐに助けに行こうとしたんだけど、一瞬止まった。
その鳥は緑色をしていたんだ。
この世界の魔物の強さは、その体の色を見れば大体わかる。白が一番弱くて、その次が俺たちの青、その次が黄色で、次が緑っていう感じだ。
その鳥は俺たちよりも2段階強い魔物だった。強い。その冷酷な目は俺たちを餌だと思っている目だった。
俺は一番に飛び掛かった。
だけど今まで一緒にがんばってきたサブロウを見捨てるなんてこと出来っこない。俺に続いて他の仲間たちも一斉に飛び掛かっているのが見えた。
けど緑の鳥は全然慌てていなかった。
こいつは俺たちの事を舐めている。確かに俺たちは青色だし、コイツには翼がある。負けるつもりは無いし、もし万が一があってもいざとなれば逃げればいいと思っているんだろう。
実際こいつのクチバシと翼の攻撃はかなり厄介で、翼の一撃を食らった俺は、骨が折れたんじゃないかと思うくらいの痛みが走った。
俺たちが一斉に掛かって行ったことで、鳥はサブロウの事を掴んでいる余裕がなくなって解放したけれど、サブロウは地面に横たわってグッタリしている。
何度責めて行っても羽根とクチバシとカギ爪が厄介でダメージを与えることが出来ない。このままじゃマズい、何とかしないと。
勝つためには俺が頑張るしかない。このままの戦い方を続けていても駄目だ。鳥が驚くようなことをしないと………。
そうだ!
閃いた俺は戦いを仲間に任せて近くのデカい木に登った。いままで遊びで何度も登っていたからこんなのはお手の物だ。
大きく広がった枝を走り抜け、俺は跳んだ。これは今まで一度もやったことが無いことだけど、何とかなると信じていた。
俺が着地したのは鳥の体の上だ。衝撃で視界がブレたけど俺は鳥の体にしがみついて落ちなかった。
鳥が悲鳴を上げた。
まさか上から襲ってくるとは思ってもみなかったはずだ。俺は思いっきりあいつの首に噛みついてやった。ネズミである俺たちにとって最強の攻撃方法は噛みつきだ。
これしかない。
どこの世界でも首が弱点じゃない生物なんかいないだろう。鳥の暴れ具合でも攻撃が効いているのが分かった。
渾身の力で噛む。
もしこれを離してしまえばあいつは本気で怒って俺たちを殺しに来ることは分かっていた。瀕死の獣が一番危険だと知っている。
だから俺は絶対に放さない。どんなに振り回されようとも、俺が離したら仲間が死ぬという事、俺が仲間を殺すっていう事だ。
それだけは絶対に許せない。
気が付いたら鳥の暴れる力は弱くなっていた。だけど俺は神つづけた。もしかしたら油断させるための策かもしれない。その頃には仲間たちも一緒になってあいつに噛みつき攻撃を食らわせていた。
だけど疲れきっている俺はそんな事にも気づくことが出来なかった。それくらいに全身全霊で噛みついていた。
そうして果てしなく長い時間を過ごしていた俺の頭の中に突然声が響いた。
「おめでとうございます!坂井龍平さん、グリーンクロウを見事倒してレベル7になりました。おめでとうございます!」
やった、勝ったんだ。
賑やかな音が鳴り響く中、俺は意識を失った。
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