2話
芦屋 奏太:子役をきっかけに芸能界に入った人気若手俳優。お菓子とインスタント食品が大好きで、今一番ハマっている趣味はポーカー。
どこまでも続いているような真っ白の空間に、綿菓子のような生き物とがふわふわと浮かんでいる。
「芦屋 奏太さんはこれから天国に行くのか、それとも異世界に行くのかどちらか選ぶことが出来ます」
見た目通りの可愛い声で言った。
「その前にまず、僕は死んだってことで間違いないよね?」
「はい、お亡くなりになりました」
やっぱりそうか………。
「僕はこれから天国か異世界のどちらかに行けるって言ってたよね?」
「はい」
「普通に考えたら天国なんじゃないかな?」
「そうですね。ですが10人にひとりくらいは異世界に行きたいという方もいらっしゃいます」
「そうなんだ………天国ってどんなところなの?」
「ええと、天国っていうのは………」
天国は平和で安全だけど、色々とルールを守らないといけないみたいで、僕にとってはかなり退屈そうだった。
「それじゃあ異世界はどんなところ?」
「はい!異世界というのは………」
異世界は危険はあるけれど、天国には無い自由があるそうだ。
「奏太さんは普通のひとよりもいい条件で異世界に行くことが出来ますよ」
「それってどういうこと?」
「実は………」
話を聞いて行くと、入院中の夢の中で一緒にポーカーをプレイしていた相手は実は神様で、その時に獲得したポイントを異世界でのキャラメイクに使えるという話だった。
ポイントが沢山あれば自分自身を強化したり、良い魔法をゲットしたりも出来るという、いい事ずくめだった。
やっぱり僕はラッキーだ。これは異世界に行っても楽しく生きていけそうだ。
「異世界に転生するよ!」
「わかりました」
チョコラティエは何故か嬉しそうだ。
なんかいい奴そうだ。それから僕はチョコラティエと一緒にキャラメイクを始めた。
楽しみながら考えに考えた結果、種族は「スライム」。特殊魔法は「黄金ディストピア」をメインに据えることにした。
「最初の3日間はチョコラティエがサポートとして一緒に異世界に行きます」
「いいの?!」
「どんと任せてください!」
そう言って自分の胸を叩いた。何という可愛い綿菓子だろう。もしぬいぐるみがあったら買ってしまうくらいだ。
「それでは出発しますけど奏太さん、準備は良いですか?」
どうやらこれが最終確認っぽい。かなりドキドキするけど予感がするんだ。僕は異世界でもきっと楽しくやっていける。
「いいよ!」
返事をした途端に景色が変わった。
森だ。
僕達は深い深い森の中にいた。
「やりました!異世界に無事到着することに成功しました!」
チョコラティエは喜んでいるけど、僕は動けない。
なぜなら魔物。
数メートル先に魔物がいる。
でかい。
森と獣の体臭が混じり合った濃密な臭い。
サイとカバを足して凶悪さを500%増量にしたような真っ赤なそいつが、ドシンドシンと地面を震わせながら歩いてきて、僕の目の前で止まった。
小鳥の囀りの中で僕と魔物はしばらく見つめ合った。
「逃げてください!」
チョコラティエの声をスタートに僕は跳んだ。
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