17話 ~勝利~
芦屋 奏太:子役をきっかけに芸能界に入った人気若手俳優。お菓子とインスタント食品が大好きで、今一番ハマっている趣味はポーカー。
スライム:スピードと魔力操作に優れているが直接攻撃には弱い。
黄金ディストピア:別の次元に奏太だけの王国をつくることが出来る。ポイントを使用することにより、魔物や魔道具の創造、怪我の回復などが出来る特殊魔法。
パニックアロー:魔力で作った矢が命中すると相手の「視覚、聴覚、嗅覚」に異常を引き起こす特殊魔法。
いい気分だ。
今僕は赤いミミズの魔物レッドヘイトワームと殴り合っている。最初は熱くて痛かったけど今は殴られることに快感すら感じている。
魔力を使った戦い方が段々と分かってきた。
今まで気付かなかったけど、魔力というのは体内を満たすぬるま湯だ。攻撃を受ける部位にきちんとこれが満ちていることが重要。すかすかな所に受けるとかなり痛い。
触手のように伸ばした体を鞭のように使って攻撃をするときには、思いきり振りかぶらなくていい。攻撃する部位にきちんと魔力が満ちていれば、それだけで十分な威力が出る。
これはいい練習だ。
相手の攻撃が来た箇所に多めに魔力を送り込む。相手の魔力を上回っていればダメージを受けない。ただし使いすぎては駄目、体内の魔力が無くなってしまう。
上手くできたりできなかったりするけど、だんだんと成功の確率が上がってきた。
最初は僕のことを明らかに見下していた赤いミミズの魔物が、どんどん傷だらけになっていって、いまでは立っているのがやっとという感じ。魔力の総量の違いがこの結果を生み出している。
まだ勝つことを諦めてはいないのはその目を見ればわかる。散々ふざけていて腹が立つこいつだが、生きることへの執着心には拍手を送りたいと思う。
ただこれで終わりだ。
雷波。
相手の体の中で魔力を爆発させる技。ポイントが足りなくて取得できなかったこの技が出来るイメージが固まった。
僕は学生時代自転車通学をしていたからパンク修理はお手の物だった。その時と一緒。空気入れをイメージして自分の体から相手の体内に魔力を送り込む。
僕は少しも振りかぶること無く伸ばした体で敵に触れた。さあこれで繋がった。あとは一気に魔力を送り込む。
ここからが大事。
相手の体の中に入った魔力。これを爆発させればいいだけ。もともとは僕の魔力、操作することは出来るはずだ。
イメージは一瞬の雷光。
体の中から重低音がした。
「ぼ………」
レッドヘイトワームの微かな声。
ポップコーンが弾けるように体の中で魔力が急激に膨張していく。
「ぼぼぉ!」
レッドヘイトワームが一歩後ずさった。
二歩、三歩後ずさった。
「おぼぼぼぼぼーーーーー!!」
体が一気に膨れ上がって水風船のように破裂した。
<特殊魔法「雷波」を習得しました>
頭の中に声が響いた。
「やった!」
体の中を痺れるほどの達成感が駆け巡った。
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