12話 ~告白~
芦屋 奏太:子役をきっかけに芸能界に入った人気若手俳優。お菓子とインスタント食品が大好きで、今一番ハマっている趣味はポーカー。
スライム:スピードと魔力操作に優れているが直接攻撃には弱い。
黄金ディストピア:別の次元に奏太だけの王国をつくることが出来る。ポイントを使用することにより、魔物や魔道具の創造、怪我の回復などが出来る特殊魔法。
パニックアロー:魔力で作った矢が命中すると相手の「視覚、聴覚、嗅覚」に異常を引き起こす特殊魔法。
深い深い異世界の夜の森にパチパチと弾ける木の音が響く。倒木で作った焚火は木の香りのする闇を優しく灯している。
「チョコラティエがお手伝いできるのは今日までですね」
宙に浮かぶ可愛い綿菓子が炎に揺れている。
何も知らないこの世界に一緒にやってきたチョコラティエは異世界の水先案内人として一緒にいてくれた。その期限は3日間。最初は助けてくれるだけでありがたいと思っていたけど、今は全く違う気持ち。
寂しい。
知らないことをいろいろ教えてくれて助かる、というのももちろんあるけれど、それ以上に僕はチョコラティエの事をパートナーだと思っている。
一緒にキャラメイクを考えて、召喚する魔物の相談をして、勝った時に喜んで、一緒にお菓子を食べて、海を見ながら話しをして。たった3日間とは思えないほど心の支えだった。
「ねぇ、チョコラティエ………」
「なんでしょうか」
思い切って言う。
「これからも一緒にいてくれないか?僕には君の助けが必要なんだ」
体が芯から熱い。
ずっと思ってきたことだけど、なかなか口にすることが出来なくて、最後の日の夜になってしまった。
「うれしいです………」
「どうかこれからも一緒にいてくれないか?」
言葉が出てこない。自分の中にある気持ちをもっともっと言葉にしたいのに同じ言葉しか出てこない。どうして僕はこんなにも不器用なんだろう。
「チョコラティエにとってもこの3日間はとても刺激的でした。奏太さんの人柄もだんだん分かってきましたし、一緒にいて楽しいです」
「だったら………」
「けどチョコラティエは神様につくられた3日間だけの異世界の水先案内人なんです。天界に戻って神様のお手伝いをしなくてはいけません」
「チョコラティエ………」
「寂しいです………」
木の爆ぜる少し大きな音がした。
「考えたんだけど、神様に頼んでみるっていうのはどうかな?」
「え………」
「神様は僕たちの事を見ているんだろ?最初の戦いでレッドオークを倒した時、すぐに神様からスパチャが届いたじゃないか。あれはリアルタイムで神様が見てくれているってことでしょ?」
「その通りです、けど………」
「神様が僕の話を聞いてこれからもずっと一緒にいることを許してくれたのならどう?」
「そうなればもちろんチョコラティエもうれしいです。ですけど神様が願いを聞いてくれるかどうか………」
焚火の火に揺れるチョコラティエの表情は微笑んでいるようにも、泣いているようにも見える。
「神様、どうかお願いします。これからもどうかチョコラティエと一緒にいさせてください!」
僕は夜空に向かってできる限り大きな声で叫んだ。
「神様、どうかお願いします………」
何度も叫んだ。今まで生きてきて神様に本気で祈ったのは子供の時以来。その時の願いは叶わなかった。
だから僕はこの世に神様なんていないんだって思った。大人になればなるほど神様を信じてはいなかった。神様にしてみれば都合のいい事言いやがってと思うかもしれない。
わかっている。それは分かっているけど僕にはこれしかできない。どうしても叶えたい願いだから、恥も外聞もかなぐり捨ててお願いするしかない。
だから叫ぶ。
本気で神様にお願いをする。
「神様、お願いします。どうかチョコラティエを明日からも奏太さんと一緒にいさせてください!」
涙が出るほどうれしかった。
チョコラティエも一緒に叫んでくれていた。
叫んで、叫んで、叫んでいたら、焚火の前にいつの間にか靄のような白いものが立っていた。
「願いは聞かせてもらった。お互いに別れたくないという気持ちは一緒のようだな?」
神様だ、そう思った。
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