10話
芦屋 奏太:子役をきっかけに芸能界に入った人気若手俳優。お菓子とインスタント食品が大好きで、今一番ハマっている趣味はポーカー。
スライム:スピードと魔力操作に優れているが直接攻撃には弱い。
黄金ディストピア:別の次元に奏太だけの王国をつくることが出来る。ポイントを使用することにより、魔物や魔道具の創造、怪我の回復などが出来る特殊魔法。
パニックアロー:魔力で作った矢が命中すると相手の「視覚、聴覚、嗅覚」に異常を引き起こす特殊魔法。
深い深い異世界の森の中にスライムの声が響く。
「いいかお前達、今からこの森を走り回ってモンスターを見つけ出すんだ」
一列に並んでいるのはフェルト生地で作ったオモチャのような27匹のネズミ。ブルーヴィシュラットという種族の魔物だ。
「ただし深追いはするんじゃないぞ。位置と色と数を教えてくれるだけでいいんだ、分かったな?」
「きー!」
一斉に上を見上げて声を出す。
「GO!」
すばしっこい動きで一斉に散っていくネズミたちを見て奏太は満足そうに頷いた。
「良かったー、ちゃんという事を聞いてくれた」
「もちろんです。黄金ディストピアで生み出した魔物は奏太さんの配下ですから」
「そうなるとやっぱり可愛く見えるよね。ネズミの魔物だけど」
「まさかブルーヴィシュラットを召喚するとは思いませんでしたよ、さすが奏太さんですね」
フワフワと宙に浮かぶ可愛い綿菓子チョコラティエが言う。
「もっと強そうな魔物にすると思ったでしょ?」
「はい。青い魔物はそれほど強くないですから」
「だけどその分だけ数を多くできるからね。この森を探索するためには強さよりも数が必要なんだ」
「とてもいいと思います」
「本当?」
「ブルーヴィシュラットは力は無いけど素早いですし、頭もいい魔物ですから奏太さんの期待に応えてくれると思います」
「そうだね。あとは報告を待とうか」
「はい!」
黄金ディストピアの門の前で美味い棒コーンポタージュ味を食べていた奏太の脳内に音が響いた。
「さっそく敵を見つけたみたいだ。種類は分からないけど青色の魔物だ」
「青色だったら前に倒したレッドオークよりも3段階ほど格が下がるので大丈夫だとは思いますけど、油断だけはしないでくださいね」
チョコラティエの手にはポッキーが握られている。
「わかった!」
奏太には配下の魔物がどこにいるのか大体の位置が分かる。
遠くから一匹のブルーヴィシュラットが走ってきた。信号をくれたのはこいつだ。案内される方向へと音をたてないように向かう。
これから獲物を狩りに行く。そう考えたらまるで猟師になったような気分だ。
深い森の中を音をたてないように進んで行く。
「いた………」
ブルーヴィシュラットが知らせてくれた通りの青い色をした魔物。あれはブルーゴブリン、数は3体だ。
木の背後に隠れる。青い魔物は赤い魔物に比べるとそれほど強くないからレベルアップした今の自分なら簡単に倒すことが出来るはずだ。
パニックアロー。
声には出さず心で思うと、美しい着物を着て和弓を持つ女性の映像があらわれ、即座に魔力の矢を3発放った。
音も無く到達した矢がブルーゴブリンの眉間に次々に突き刺さった。
心の中でガッツポーズ。
魔力節約のためにかなり威力を落としたつもりだったが、それでも十分すぎたようだ。矢が貫通してどこかに飛んでいってしまった。
けれど複数の魔物との戦いはこれが初めて、そして見事に勝利することが出来た。
「魔石をとってきてくれ」
ブルーヴィシュラット達はすぐさま走り出した。あの魔石で青い魔物を新たに3体生み出すことが出来る。
素晴らしく役に立ってくれたこのネズミたちを増やすべきか、あるいは違う配下を生み出すべきか。
奏太の心は満足感と楽しさで一杯だった。
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