1話 ~ラッキーな人生~
芦屋 奏太:子役をきっかけに芸能界に入った人気若手俳優。お菓子とインスタント食品が大好きで、今一番ハマっている趣味はポーカー。
僕の名前は芦屋 奏太、日本で俳優をしていた。
最初はキッズモデルだった。そしたらドラマに呼ばれて、それがヒットして、気が付いたら俳優になっていた。
子役は大成しないなんていわれるけど、僕の場合は大人になっても仕事が貰えていたし、俳優という仕事は自由とお菓子が好きな僕に向いていた。すごくラッキーだと思う。
そんな僕は病気になった。なかなかに重い病気だったので即入院となったんだけど、それから不思議な体験をした。
寝ようと思えば朝でも昼でもあっという間に寝れた。そして必ずポーカーをしている夢を見た。ポーカーは僕が今一番ハマっている趣味だ。
一緒にプレイする相手は正体不明の白い塊。最初は戸惑ったけどすぐに慣れた。結局夢の中では楽しければ何でもいいんだ。
白い塊はブラフに弱いので僕にとってはやりやすい相手だった。ブラフというのは「嘘」のこと。ポーカーは自分の手札が強ければ勝つと言うわけでは無いので、駆け引き重要なんだ。
楽しみながらチップを増やしていたら、とうとう命の終わりが来た。その時にも僕はポーカーをプレイしていた。夢を見ている間は痛みも悲しみも感じなかったから。
最後の勝負は僕が手持ちのAAのカードでオールイン勝負を仕掛けて、大勝ち。大量のポイントをゲットした。
やっぱり僕はラッキーだ。
だってそのときの僕はガッツポーズしていたんだ。そんな最高な死に方は無いと思う。
俳優としての仕事は世間に評価してもらえたし、家族や友人との関係も悪くなかった。今は別れてしまったけど綺麗な女性と付き合うことも出来た。
少し短かかったかな、と思う気持ちもあるけれど長生きすることが幸せだとは思わないので、結局は良い人生だったと思う。
「ありがとうございました」
声になっていたかどうかは分からないけれど、僕の最後の言葉はそれだった。
それからどれくらい時間が経ったのだろう………。
気が付いた時には真っ白い空間の中にいて、目の前にはモコモコした綿菓子みたいな可愛い生物がいた。
「初めまして私は天界からやってきたチョコラティエと申します。これからの奏太さんのサポートをさせていただきます」
可愛い声でぺこりと頭を下げる綿菓子。ピンときた。たぶんこれは異世界転生だ。
ワクワクしていた。
異世界へ行ってもきっと上手くいく、そんな予感がしていた。
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