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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

僕の生

作者:

 僕が生まれてもうすぐ18年になる。学校に通い、部活動や勉強に明け暮れる僕はいたって普通の男子高校生だ。研究所で生まれ、研究所で育っていること以外は。

 朝のニュース。この広大な研究所の一角にある僕の部屋にはそこそこなサイズのテレビが置かれ、いつも教育番組かニュースが垂れ流されている。

「それでは次は、人工子宮についての話題です」

キャスターが少しばかり解説を挟み、コメンテーターらしき中年男性が意見を言い始める。

 「世界で初めての完全人工人間である山下一さんが生誕してもうすぐ18年になりますね。彼は健康に何ら異常なく過ごしているようですし、そろそろ規制を緩和していくべきではないでしょうか」

 僕の名前を上げるコメンテーター。彼の何も考えていなさそうな顔がどうしようもなく腹が立って、僕はテレビの電源を落とした。

 「7:50になりました」

テレビの横に置かれたAIスピーカーがそう告げる。僕は何となく浮かない気分でベッドの横の鞄を背負い、高校へ行くべく部屋を出た。


 高校へ行き教室へ入ると、なぜだか人だかりが出来ていた。何気なく寄って行ってみると、クラスでも明るいキャラで人気の高山さんが嗚咽をもらしながら泣いていて、友達に慰められているところだった。

「万理華、寂しいよね。でもそれがお母さんを幸せにすると思って……」

高山さんと仲のいい夕凪さんが彼女の肩を抱き、必死になだめている。

「ああ、高山さんのお母さん、決めたんだって」

立ち尽くしている僕に、同級生の松本が声をかける。

「決めたって…あぁ」

「そう、安楽死」

「辛いよなぁ、俺もじいちゃんがそうしたときは辛かった。でも、そっちの方が今時イケてるよな?」

「分からないよ。僕は選べないから、その選択肢」

松本はふと不思議そうに首をひねって、

「ああそっか、お前はお前そのものがデータだから、勝手に死ぬわけにもいかないんだな。忘れてたよ、お前が超激レアの完全人工人間だってこと。くぅー羨ましいぜ、理論上は死ぬことはないとかさぁ」

「その人工人間って言い方やめろよ。でも僕は──」

死ねる君たちが羨ましい。その言葉は、ぎゅっと心の奥に押し込んだ。


 死にたい。物心ついたころから、そんな心が僕の中にとどまり続けている。

 僕はどちらかと言えば人間というより実験用のモルモットや猫のようなもので、今の時代人間に当たり前のように認められているいくつかの権利は僕には認められていない。プライバシー権、そして恐らく選挙権、それから、ここ十数年で認められるようになった生存自己決定権──人間が自由に、いつでも自殺をしていいという権利。人々が自分の生死を自分で決められるようになった時代、僕だけは、ずっと生き続けて、僕の様子を観察されつづけることが定められている。

 それが僕の運命だ。

 自我が芽生えなければ、死を願うことはなかったのだろう。当然だ。僕の前に生まれた何人もの兄、姉は、自我を持つことなく今でも実験室の培養槽の中で生き続けている。

 この“人”生とはいえない生を生きることに、僕は耐えられない。17年間もどうして生きながらえているのか──それは恐らく、完璧なまでの研究所による管理があるからなのだろう。


 僕はふと、研究所で小耳にはさんだ話を思い出した。僕が18歳になると同時に、僕にかけられている監視の何割かを緩和する──恐らく、通学の時の監視も弱くなるだろう。

 僕が18歳になるまであと1か月。僕は、死ぬための計画を立て始めることにした。


 僕は普通の人間ではない。人間の理想の体をしているから、電車にひかれるくらいでは皮膚がちょっと傷つくくらいで、それも一日二日で治ってしまう。僕が死ぬには、もっと高いところから飛んで全身を粉砕し、その上で基本的な構造を回復不能なまでに潰しきってしまう必要がある。

 その日から、僕は偵察を始めた。学校に行く途中の道を何度も見返し、ちょうどいい場所がないか探す。すると、高校の最寄り駅の駅ビルの屋上から飛べば、車にいい感じで轢かれることが分かった。僕はスマホの地図にそれをマッピングし、何度か脳内でシュミレーションを繰り返した。

 

 僕が18歳になる日は案外早くやってきた。その朝、僕は珍しく心が躍った。鞄をひっつかんで外に出ると、案の定いつも僕の後をつけてきていた大型のドローンがいない。僕は電車に乗り、高校の最寄り駅で降り、そして駅ビルのエレベーターで最上階のボタンを押して一気に上まで登った。エレベーターから走り出た僕は恍惚とした気分で屋上の柵に足をかけ、そして飛んだ。全身に風を感じて、そして数秒。体に強い衝撃が一瞬走ったような気がして、強い安堵感に包まれる。


「──うまくいった」

僕は、永久の眠りに落ちた。


「あ、目開きましたね。さすがの再生力です」

どこかで聞いたような声がした。

そして。

「一さん、よかったね。まだ生きてるよ、君」

僕の耳元で、呪詛の言葉が吐かれた。


もうちょっと膨らませられそうなテーマだった気もします。未完成な部分が多いので気が向いたらリメイクするかもしれません。

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