後編
夜中に缶詰の中から食べ物に関する三つの願いを叶えるという魔神が出てきた。
うな重を食べたかったぼくがかば焼きを注文すると、大きなかばの丸焼きが目の前に現れた。
「あのね、魔神さん」
「なんですか?」
「ぼくが欲しかったかば焼きというのはこういうのじゃなくて……」
スマホでうなぎのかば焼きを見せて説明する。
「ああ、これですか。失礼しました。
かばの丸焼きは返してきます。
但し、一回取り出したので願い事は一つとしてカウントされますんで」
勝手なことを言ったかと思うとかばの丸焼きは消えて、かわりに極上のうなぎのかば焼きが皿の上に出現した。
炊飯器から炊き立てのご飯を丼によそい、かば焼きを乗せて、買ってあったタレをかける。
部屋中にうなぎの香りが漂った。
「では、お召し上がりください」
「ありがとう、いただきます」
一口食べようとして山椒を買ってなかったことに気づいた。
「しまった、山椒がなかった」
「かしこまりました、ご主人様」
魔神はにっこりとうなづき
「では、ご注文の品を以上3点お届けしましたので、私は消えます」
と一陣の煙となってしまう。
ぼくはテーブルの上でうごめいている巨大なオオサンショウウオをどうしたものかと頭を抱えていた。