第6章 エルフの船 6~シン・ドジラ?いえドラゴンです
号令とかはテキトーです。
そもそも英語みたいなファンタジー言語なので、部分部分がフランス語風だったり日本語風だったりインチキのオンパレードです。
下手に調べると頭痛くなります。
第6章 エルフの船 6~シン・ドジラ?いえドラゴンです
●S-1:ぺんぎん海岸 エーギル号船内
ぱぎゃあぱぎゃあ。
響き渡る咆哮。
それは巨大な蜥蜴のような灼赤色の躰に、胴体の三倍はありそうな蝙蝠に似た飛膜の翼を広げて宙を舞っていた。
力学的におよそ空を飛ぶことは不可能にしか見えないのに自由に遊弋している。
この恐ろし気な巨大生物をボクたちは良く知っている。
物語でもお馴染みの……竜だ。
口元の牙の隙間から漏れ出た蒸気と、時折、吹き出す放射熱線。
これじゃどこかの怪獣映画だよ。
空を飛んでなければね……。
陽が陰るほどの巨体が空を覆う。
一体だけだ。
でも、大きさがおかしい。
遠近感が狂った気がしたほどだ。
「なんか……どっかで見たような暴れ方をする怪獣、これはドジラだ!」
ボク命名。
なんかイマイチかっこよくないけど。
「ドラゴンのドの字を使ったんでスカ。あれはどう見てもドラゴンですネエ」
「う、うるさーい」
前に見た怪獣は全長20mほどだったのに、これは50mは楽に超えている。
何これ……。
「ありゃあ……成竜っスなー」
クロちゃんの口調はどこか他人事のようだ。
「オレが見たことあるのは最大でも少竜までっス。ここまでデカいのは……すぐにでも逃げたいっスが……」
「なんかー。今にも襲い掛かってきそーなんだけどー……」
「そこが解せないとこなんスがね」
クロちゃんがボクを見る。
「あのドラゴンは……」
「……怒ってる。怒り狂ってるみたい」
ボクの髪の毛の中から小さな裸の美少女が顔を出した。
泉の精霊のイズミちゃんだ。
動くえっちなフィギュアにも見えるかもしれない。
「我を失ってる」
イズミちゃんはこの場だとボクとクロちゃんしか見ることが出来ないし、声も聞こえない。
「なるほど。イズミちゃん、できればもうちょっと足を開くか髪の毛で隠さないで色々見せ……イテっ。殴るんじゃない!さにゃ」
「えっちえっちー!セクハラー!」
「いや、まあ、冗談ス。あのドラゴンのことなんスが……あれはもしかして」
「……灼赤竜」
イズミちゃんが囁く。
「やっぱ。そっちだったっスか」
「なーによーう?」
意味が分からないぞ。
クロちゃんは何を言いたいんだ?
「さにゃ」
クロちゃんの目は真剣だ。
その表情でセクハラはやめていただきたい。
「竜種の中でも赤とか黒とかは凶暴な邪竜っス。が、そいつはクロマティックなやつらだけでメタリックは善属性のはずなんスよ」
どゆこと?
確かに目の前のドジ……じゃないドラゴンは赤いんだけど金属のような光沢がある。
体を動かすたびに鱗がキラキラと綺麗に輝くんだ。
「今、イズミちゃんが言ったスカーレットならメタリック種なんで、いきなり襲ってくるはずはないんス」
「そ、そーなの?」
「うん。灼赤竜は優しい種族なの」
うーん。
クロちゃんが言うと微妙だけど、イズミちゃんが言うと信憑性高いぞ。
だって精霊っていうファンタジーな不思議生物仲間なんだもん。
「なんか……すっげぇヤバいことになりそうな予感もするっスな」
「罐に火を入れろ!渦巻機関起動、廻せ!急げっ!」
アイリさんの鋭い声が飛んだ。
部下と思われる船員がラッパのような金属管にしがみ付いて叫ぶ。
船内に響き渡るサイレンが嫌でも緊張感を煽り立てる。
「砲戦準備!総員戦闘配置!」
決して多くはない乗員たちが駆け出した。
地上から数メートル浮いた状態のエーギル号が激しく揺れた。
飛行船は空中でのバランスあまりよくないために、人が一斉に移動すると重みでバランスが崩れるんだって。
普通の船でも重量物が偏ると傾くんだけど、飛行船は船よりも浮力が小さいせいもあってかなり揺れるんだ。
色々と構造の情報を得ようと乗っていたボクたちが不味かったのかもしれない。
ボクは50kgもないので影響は少ないはずだけど。
「襲撃対象、成竜と推定。焼夷徹甲弾装填!」
うわ。いきなり戦争映画になってるよ!?こっち。
「ちょ……これって……」
「客人たちは邪魔にならないところ……隣の客室へ」
隣の客室っていっても、倉庫に椅子が並んでる程度の場所だよー?
邪魔にならないところに行けってことなんだろうけど。
「いや。オレはここで見せてもらうっス」
「クロちゃん!?」
「この船が飛行魔獣と戦い得るのか確認したいっス」
「う、うんー?」
「さにゃもその辺りの柱に抱き着いておくっスよ」
むむ?
シュラハトも同様らしく人が通らなそうな位置で仁王立ちしてる。
背後からふわっと柔らかいもので抱き着いてきたマリエッラがボクを引き寄せた。
ルシエさんはじっと様子を眺めている。
「オホゥ。これは演習ではないってことでござるな。グフフフ」
それ、何かの映画か何かで聞いたやつだ。
『繰り返す。これは演習ではない』ってやつだね。
エーギル号は係留索を切り離して上昇を始める。
巨大な船体に似合わなず、思ったよりもスッと浮き上がった。
病院とかのエレベーターに乗ってるような感覚。
きぃぃぃんと甲高い金属音は渦巻機関の回転が上昇している音みたい。
さすがのボクでもここでボケをかます気になれなかった。
大きなドラゴンが迫る。
時折、放射熱線を吹き付けてきた。
少々のことならミスリル製の外板が耐えてくれそうだけど、どこまで大丈夫なモノだろうか?
「方位盤一斉射撃準備」
「測的よし」
「高度が辛いな……もう少し取れればよかったんだが」
アイリさんがやや不満そうな表情で独り言を口にする。
戦いはより高い位置にいる方が有利って聞いたことある。
「あまり引き付けるな。間に合わなくなるぞ」
えー?こういう時は『良く引き付けて撃て』がお約束じゃないのー?
「面舵いっぱい !」
「面舵いっぱい!了解艦長!」
「面舵!10点」
今度はキンキンキンと鐘の音だよ。
何これ。
実は後で聞いたんだけど、船の舵を切るときに鳴るらしいんだよね。
そういえば舵の真ん中に時計みたいなの付いてたような気がする。
何か関係あるのかな。
「傾斜回復」
「右甲板砲戦」
「右一番良し!二番良し!三番、四番良し!」
「水平前進宜候」
旋回でゆらっと傾いた船体が水平を取り戻す。
一瞬の静寂。
そして……。
「一斉射撃!」
「撃ち方始め」
ボクが流れに飲まれかけてるところで轟音が轟いた。
これは判るぞ。大砲の発射だ!
一斉射撃という割には不揃いな感じだった。
各砲が不揃いに撃ち始めたみたい。
砲弾が飛んでいくときの空気の乱れが近くの射撃に影響しないようにわざと発射時間をずらしてるんだって。
驚くことに大砲の弾が飛んでいくのは見えた。
ものすごい速さなんだけどね。
撃ち出された砲弾は一瞬の間をおいてドラゴンに命中した。
おお。すごい。
「硬いな。さすがに成竜だな」
アイリさんが唇を噛んだ。
発射された砲弾の内、効果があったのは2発だけだった。
鱗を吹き飛ばして突き刺さった砲弾が炸裂した。
さしものドラゴンもその巨体を捩る。
「ドラゴンの鱗は固いっスからなー」
「そーなの?」
「攻撃魔法も楽々跳ね返すっス」
「うわ」
そんなのにダメージ出せるの?
というか、エルフさんたちは大砲持ってるんだ。
まあ、銃も持ってたから当たり前か。
何門設置してるのか判らないけど、こちらからも一つ見えた。
こういう世界の大砲ってきっと辣韭の実みたいなアレだよね?と思ったら全然違った。
もっともっと未来的。
次の砲弾がなんか良く判らない機械で自動的に装填されて行く。
薬莢は出ないのかな。
何か、こう、トイレットペーパーのお化けみたいなものを押し込んでガチャンと閉じる。
あ。銃にネジがどうとかいうのが少し判った気がする。
ドカーンとぶっ放したら同じだけのエネルギーが反作用するから、銃口の反対側はかなり頑丈にしなくちゃいけないからだ。
見てると大砲は尻尾の方が半回転くらいするネジみたいになってる。
なるほどなあ。
って、この頃のボクは反動になる発射ガスを利用する機構がついてるなんて知らなかったんだ。
数秒で次の砲弾が装填されると、再び発砲する。
すごいな。
「弾幕薄いぞ!何やってんの!?……でござるな。グホホホ」
賢者が、ぐふぐふ笑う。
喜んでいるというか興奮気味みたい。
クロちゃんが商船とは思えないって言ってたのがちょっと判る気がする。
これじゃまるで軍艦だよねー。
次々に新しい砲弾が撃ち込まれて行く。
半分以上は弾かれちゃうんだけど、残りが確実にダメージを与えていく。
ドラゴンも放射熱線を吹き付けるけど、効果がある距離まで近づけないみたいでエーギル号はびくともしない。
「凄いっスな。この船。成竜と互角以上に戦えるんスな……」
そ、そうだよね。
ドラゴンって言ったらファンタジー世界ではボス級キャラのはず。
どのくらいスゴいことかは良く判らないけど……。
「老竜や古竜相手は無理ですけどね。前回は成竜4体でしたから逃げるのも大変でした」
ルゥが言った。
相手が一体だけだからなのか少し読湯を感じる表情だ。
「この船は基本的には戦闘巡洋艦ですから何とかなってます」
へー。
っていうか、その通報艦とか巡洋艦の基準が判らないよー!
まあ、なんか、そこそこ強いらしいのは感じるけど。
「……問題はそういう話じねーっス」
クロちゃんはどこか苦々しげだ。
「いったい何をやらかしたらドラゴンに追いかけられたり襲われたりするんスかね?」
もっともだ。
なんでだろう。
「生半可な理由じゃねえはずっス」
「そ、それは……」
「訳判らねーうちに虎の尾ならぬ竜の尾を踏まされるのは御免スからな」
あ、そうか。
ボクたちも敵対勢力をドラゴンたちに思われるのは困る。
こっちには対抗できる武器も何もないしね。
「すみません。そこまで巻き込むつもりはなかったのですけど……」
「左舷、友軍!」
船員の喜びの色が混じった声が聞こえた。
ボクが振り向くと窓の向こうに、エーギル号を少し小さくしたような飛行船が2隻、大気を切り裂くように降下してきた。
向こうの船の窓から明滅する灯りが見えた。
ちかちかちーか。
「キヘイタイトウチャク。シエンスル。エクスモア」
船員が報告する。
ん?何?もしかしてモールス信号か何か?
船っていうと手旗信号とかもありそうだけど。
援軍の飛行船はエーギル号とドラゴンの間を遮るように疾走し、砲撃はしない。なんで!?
「……発光信号とはのう。不思議じゃな」
それまで静かに黙っていたヒンカ婆ちゃんが呟いた。
「ざっと見て回っただけじゃが……電気もあるのに電信が無いのが不思議なのじゃ」
「そーなの?」
「無線通話くらいあっても良さそうなものじゃ。沙那の時代だともっと進化してそうじゃが……」
そういわれてみればそうなのかな。
電気があるのなら電波は作れる。
周波数の低い電磁波だしね。
「近代的な大砲がありながら、これはないあれはあると何ともちぐはぐな技術体系じゃ」
「竜、撤退の模様」
「よし。砲撃中止!」
「砲撃中止、艦長!」
「友軍より発光信号!」
「信号旗。我に続け」
「来てくれたのは助かるが……先に地上人を下船させないとな」
アイリさんはそう言うと命令を出そうとした。
出そうとしたというのは、その暇も無かったからなんだ。
「発光信号。反駁不可。即時帰還につけ」
「……な、んだ?」
「発光信号。複唱せよ」
「……意味が分からないが」
だいじょうぶ。
ボクはもっと判らないよ。
でも、船内に緊張した空気が走るのは感じた。
「艦長!あれを!」
船員の1人が指さした。
割って入ってくれた船のもう一隻だ。
……ちょ?
エーギル号よりは少し小型だけど俊敏そうな飛行船の船腹にあるたくさんの窓を開いていた。
そこから、やっほーと顔を見せているのは……。
大砲だ。
一つや二つじゃない。
ざっと20門くらいはあった。
な、なんですかー!?
「発光信号。接舷、移乗する。停船せよ」
「ふむ。状況が不明だが、従うしかなさそうだ」
アイリさんはこめかみを抑えながら指示を出す。
「すまないね。キミたちを下ろす時間が無いようだ。少しの間は付き合ってもらう」
少し?本当?
何が何だか状況が判らないんだけどー!




