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第10章 夢の中の現実 3~DREAM CHASER

第10章 夢の中の現実 3~DREAM CHASER



●S-1:花厳邸/紗那部屋


「けっこー嵩張るなぁー……」


 紗那は自分の部屋のウォーク・イン・クローゼットという名の物置に押し込んでいた書棚から、『こどものずかん』全集を引っ張り出していた。

 全20巻。

 1冊は2cmに満たない厚さのものだがなかなかに重い。

 それが20冊ともなると……運び出すのも大変だった。


 それに様々に買い込んだ荷物もかなりのものだ。

 ホームセンターや100円ショップを巡った。

 といっても紗那のお小遣いで買える範囲のものでしかないのだが。


 スクーターに載せられる荷物の量はたかが知れている。

 荷台は小さいし、無理矢理縛り付けたりぶら提げるのも限界はある。


「ま。そこは気合かなー」


 自動車なら良かったのだけどなあと紗那は思った。

 とはいえ、優海はどういう立ち位置のキャラになるんだろうか。

 連れて歩けるフォロワーなのだろうか。


 いや。ここは期待するべきではないと考えた。

 連れて歩けるならば、クローリーなりぺんぎんなりをこちらに連れてこれるはずだ。

 イズミしか連れてこれなかったということは、手荷物程度と判断できた。

 もしかしたら、スクーターもアウトなのかもしれない。

 そこは試してみるしかない。


 成功したら将来は優海を連れていくこともできるだろう。

 夢がそこまで続くか判らないが。

 


 

 まるで遠足にでも行くような様子の紗那を、優海は横目に見ていた。

 元から紗那の行動は予想が付きにくい。

 今、やっていることが何を目的にしているのか想像もつかない。


 心配であると同時に安心もしていた。

 紗那の性格が昔と変わらなかったからだ。

 小さな子供のように物怖じしない行動力。

 くるくると良く変わる表情。

 猫を大事そうに抱きかかえているところも昔と同じだった。


 ただ、スクーターに荷台やボックスを取り付けようとしていることは理解できなかった。

 盛んに動き回る様子を見ると、何か思いついて行動に移そうとしていることは判る。

 しかし、その目的が判らない。


 家の物置から引っ張り出したキャンプ道具の数々。

 キャンプに使うときもあった発電機やクーラーボックス。

 なにより一番謎だったのが『こどものずかん』一式だった。

 とにかく大荷物だ。


「紗那……あなたいったい何するつもりなの?」


 さすがに不審に思って声をかけざるを得ない。


「え?」

 荷造りしていた紗那が振り向く。

「そりゃー。紗那ちゃんのチートな冒険ステージ2の準備だよー」


「……冒険?」

 優海は困惑した。

 が。

「まさか、どこかに行くつもりなの?」


「うん。お姉にはいちおーせつめーしておくねー」

 紗那が腰に手を当てて偉そうに胸を張る。

「この夢の世界の更に別世界で国造りとかしてるんだー」


「……は?」


「未開な世界の貧乏男爵のクロちゃんをみんなで知恵を出し合って助けてー……あ、特にボクが大活躍してるストーリーのねー」


「良く判らないんだけど……」


「中世ヨーロッパ風のファンタジーっぽい世界で現代の知恵を使って色々……あ、せんそーはあんまり関係してないかなー?」

 紗那は腕を組んだ。

「生活に彩を添えるチートをボクが次々と考案してたんだー。でー、あー!食べ物が味気なったから調味料をいろいろ用意しなきゃ―」


「それで味噌に醤油……?」


「うん。作り方の資料も用意したけど。あ、大豆はねー、ヒンカばあちゃんが絹の国(シリカ)から仕入れた種を持ってるからいけそーな気はするんだー」


「紗那……何を言って……?」

 戸惑う優海に紗那は畳みかける。


「イモもトウモロコシももう作付け始まってるしー。そういえば原産地は南米だけど、あの世界だと南米ってどこにあるのかなー」

 理系よりの女子中学生とはいえ、義務教育レベルの地理はそこそこ判る。

「ルーちゃんが硝石運んできてるから、きっとその近くだよねー。昔は硝石はチリで産出されていたっていうしー」


「ちょ、ちょっと……」


「お姉がどういう立ち位置のキャラ設定なのか判ってないけどー、できれば一緒に行ってマリちゃんとママキャラ対決とかするのを見てみたいけど……とりあえず行き来が順調になってからかなー」


「沙那……」

 優海は何と声をかけて良いか分らなくなった。

 夢の世界……どういう意味だろうか。

 沙那は気がふれてしまったのだろか?いや違う。

 どう見ても正気に思える。

 何より、生き生きと明るく見えた。

 優海は何か自分がとても無力に感じていた。





●S-2:男爵領外縁


 帝国の人々が蛮族と呼ぶ魔族の軍勢が押し寄せていた。

 迎え撃つのはシュラハト率いる男爵軍800名。

 500人の時代よりは増えたが、戦闘が起きるたびに兵士は少なからず失われていくので思ったほど拡張できていない。

 そもそも元々の人口はそう多くはないのだ。


 以前から男爵家に仕えていた騎士や兵士たちはすでにかなり失われている。

 男爵家の軍勢を指揮していた主だった騎士3人もすでに故人になっていた。

 今、兵士の指揮を執る騎士……ではなく士官は、兵士から鍛たき上げた者ばかりだ。


 マスケット銃を基本装備にした新しい編成の軍勢には、古い概念の騎士はむしろ邪魔かもしれない。

 総司令官であるシュラハトですら、銃での戦闘はやはり慣れない。

 欠点ばかりが目に付いてしまうのだ。


 銃は確かに強い。

 一斉射撃した時の轟音と、もうもうと上がる煙は銃を知らない敵には恐怖と驚きの対象である。

 あの不思議な杖が火を噴くたびに、味方の誰かが倒れる。

 恐るべき魔法でしかなかった。


 しかし、マスケット銃は発射すると次弾装填に時間がかかった。

 良く訓練された兵士でも20秒ほどかかる。

 そして、事実上の有効射程距離は約100m。

 実は長弓などよりも短く、連射も利かない。


 1発射撃した後に20秒も空き時間があれば、100mほどの距離を敵の兵士が走り抜けてくることは十分に可能だった。

 そこで抜剣した兵士が雪崩込んでくればひとたまりもない。

 そのため、平地での戦いの場合は初弾発射した後は、銃剣(ベイオネット)をソケットのように銃口に差し込んで短い槍にして迎え撃つのだ。

 現状の銃は砦や城に籠っての防御戦闘には向いているかもしれないが、野戦にはあまり向かない武器だった。


 シュラハトからすれば弩弓(クロスボウ)の方が優れているように思える。

 金属発条を用いたタイプはマスケット以上ではないかと思える貫通力があり、特別な訓練をあまり必要としない。

 移民の兵士が多い男爵軍ではそちらの方が向いている気がしていた。

 事実、マーチス考案の弩砲(バリスタ)で撃ち出す鉄炮の砲撃の方がずっと効果があるように見えた。

 ちょっとした野戦砲だからだ。


 それでも銃に拘るのは、進化を見据えてのことだった。

 賢者(セージ)やヒンカの話、そして製造技術に詳しいラベルの話からすると将来性は圧倒的に銃なのだ。

 連射できる機関銃や自動小銃とまでいかなくとも、後装式のライフル銃だけで世界が変わる。

 改めて装備改変してからの再訓練をするより、前もって慣らしておきたかった。


 こちらから攻め込む予定がないのだから、充分に時間があると考えていたのだが……なぜか次から次に攻めてくる勢力が現れる。

 全く予想していないところから攻撃を受けるために毎度ながら混乱しながらの防戦だった。


 事実、異世界召喚者(ワタリ)の世界の歴史からすると、マスケット銃やそれに毛の生えた程度の性能の銃しか想定していなかった第一次世界大戦で世界中の軍人を愕然とさせたのは銃の進化だった。

 射程距離100m程度を想定していたら、新しい後装式ライフル銃は約400mほどに射程が伸びており、数発を装填可能なボルトアクションライフルは、敵陣に走りこむまでに何発も射撃できた。

 そうなってはお互いが睨み合って塹壕で向かい合うしかなくなってしまった。

 そこに連射可能な機関銃の登場で事態はより複雑化してした。


 その歴史も、対処法も、ヒンカやマーチスは知識として知っていた。

 今はまだ、先込め式マスケット銃で装填速度を向上させるために紙で包んだ紙弾薬(カートリッジ)で対処してはいるものの、銃の進化と金属式の弾薬(カートリッジ)の量産を急いでいた。

 ただ、金属の弾薬(カートリッジ)を量産するのはとても難しい。

 軟性の金属である真鍮で作るからだ。


 真鍮自体はこの帝国世界でも珍しくはない。

 銅と亜鉛の合金でしかないからだ。

 だが、大量に入手しようとするとどちらも困難だった。

 

 銅は同盟国であるカストリア子爵領から、そこそこ輸入は可能だったが亜鉛は無理だった。

 現状は砂の国(アルサ)あるいは絹の国(シリカ)から輸入するしか手立てがない。

 ルシエの商船隊は規模を大きくしたとはいっても、男爵領の経済力では船自体がそれほど増やせなかった。

 定期便が月に1度、1隻づつ入る程度でしかない。

 硝石など輸入に頼る部材は多く、安定供給にはなかなか至らないのだ。


 

 そして、男爵軍兵士最大の弱点は、構成している人員の多くは元々農民なところだった。

 他領から逃げ出して、いわば亡命してきた移民であり農民である。

 もちろん荒事の経験は少ない。

 銃があるのは心強いものの、戦闘慣れしていないのだ。

 こればかりは練度がどうこうでは済まない。


 白刃を煌めかせて突撃してくる敵の兵士の姿に怯えてしまうのだ。

 射撃後は白兵戦になりがちな状況で、戦い慣れしていない農民が刃物を突き付けられると銃を捨てて逃げ去ったりもした。

 現状では銃の威力も、抜刀突撃の前には簡単に打ち崩されてしまいかねなかった。

 新型の銃や弾薬の配備は急務だった。

 そこにしばしば他領の侵入があるものだから、なかなか進まない。



「こりゃ……農民出身たちにはちと荷が重すぎるっスな……」

 クローリーは戦線を見て呟いた。

 マスケット銃の利点を最大に生かすために柵を建てたり、塹壕を掘ったり、あるいは即製の砦に立て籠もっての必死の防戦だ。

 押し寄せる蛮族の軍勢がいつ突破してくるか気が気ではなかった。


「いや。結構頑張ってるぜ」

 シュラハトがクローリーを窘める。

 指揮官が気弱になったりしては士気にかかわる。

 どんな不利な状況でも空威張りでもいいから強気の姿勢を崩してはいけないのだ。

「あいつらをよく見てみろ」


「ん?」

 クローリーは目を細めてみたが、シュラハトが何を言いたいのかが判らない。


「こいつを使え」

 シュラハトが望遠鏡をクローリーに渡した。

 凹レンズと凸レンズを使っただけのシンプルなものだったが、その分だけ手持ちサイズにまとまったものだった。

 双眼タイプもあるが大きく重すぎて地面に立てなくてはならない大きさだから、持ち運びには不向きだ。

 プリズムレンズを用いた軽量小型の双眼鏡(というよりオペラグラスに近い)はまだ試作中だった。


「んんー?何が見えるんスか?」

 クローリーは覗いてみたが、やはり判らない。


「みんなブルってるが……泣きそうな顔をしながらも逃げねえ。たいしたもんだ」


「あ、うん。そーにも見えるっスな」

 クローリーは曖昧に頷いた。


「必死なんだよ」

 シュラハトは小さく溜息を吐く。

 そこには賞賛と感謝の気持ちが込められている。

「あいつらは逃げるわけにはいかねえんだ」


「……部下を信頼してるんスか?」


「ちげー」

 シュラハトが頭を振った。

「あいつらはみんな生まれ故郷を捨ててココに来たんだぜ?やっとたどり着いた、なんとか食って生きていけるかもしれない世界によ」


「一度逃げたくらいなら、また危なくなったら逃げるんじゃないんスかね?」


「逃げねえよ」

 シュラハトは口の端でクローリーを嗤った。

「お前もそういうところは貴族なんだな」


「貴族っていうほど立派じゃないっスけどなあ」


「そうじゃねえ。あいつらはみんな食い詰めて……ま、前は犯罪者で追われてきたやつもいるかもしれねえが、なんとか毎日飯が食えて、兵隊ごっこしてれば給料までもらえる場所に辿り着いたんだ」

 シュラハトも上級の騎士家出身だが、戦場での場数が違う。

 もちろん下級兵士の見え方も少し違っていた。

「故郷まで捨ててきた連中にとっちゃ、ここは天国みたいなもんだぜ。できればずっとこのまましがみつきたい筈さ」


「忠誠心とか故郷愛とは違うんスな」


「そうだ。違う。できればこの居場所を守りてえんだ。特に家族で逃げてきたやつならなおさらだ」


「守るものがあるからこそってやつっスな」

 クローリーが頷く。


「おめえも知ってるだろ?戦に喜んで参加するやつらはみんな虐殺と略奪が目的だ。蛮族もそれは同じだろう」

 シュラハトは王や貴族でさえ欲に溺れて軍隊を動かすことを知っている。

「自分が逃げたら、家族はどうなる?女子供は悲惨だぜ。戦争ってのはよ」


「あ……」

 クローリーも先の枢機卿が兵を率いて攻めこんで来たことを思い出した。

 逃げ遅れた住民が虐殺された。

 あの時は沙那が銃を片手に大立ち回りして、子供を救ったりもした。

 その少年も志願して兵士になるための訓練を受け、最後の予備兵力の中にその顔があった。


「そりゃなかなか退けねーっスなあ」


「家族を守るため、あるいは逃げるためのわずかな時間を稼ぐために死の恐怖と立ち向かっているんだ。俺みたいな元からの戦争屋じゃねえからな。怖いなんてもんじゃないだろうさ」

 シュラハトは前線の兵士のことを思うと堪らない。

 戦慣れしたシュラハトでも戦争は怖い。

 死ぬのは恐ろしい。

 その恐怖に元農民が立ち向かうのはどれほどのことだろうか。

 恐怖で涙が止まらないものもいるだろうし、中には漏らしているものもいるかもしれない。

 戦場の怖さは、そこにいる人にしか判らない


「ましてや相手は蛮族だからな。人ですらねえ。冒険者してた俺たちはともかく、ありゃ怖ぇだろうな」


「マリ姐さんがいるっス!」

 望遠鏡を覗いていたクローリーが驚きの声を上げた。

 間に合わせの石を詰んだ臨時砦にマリエッラの姿があった。

 慣れない手つきでマスケット銃を抱えて、周囲を激励しているようだ。

「もう、女神様にでも見えそうっスな」


「クロ。お前も後ろでふんぞり返ってはいられねえぞ」

 シュラハトはそう言ったが、クローリーがそんな男ではないことも知っている。

 領民を盾にして生き延びようとするくらいなら、とっくに逃げ出しているはずだ。

 むしろ、ありったけの構成要素マテリアル・コンポーネントを使って、可能な限りの魔法をぶっ放すだろう。

 惜しむらくは、魔術師とはいっても落第寸前だった不良学生のなれの果てであって、大魔導士でも何でもないところだが。


「俺もあの婆さんに負けねえように前に出なくちゃな」

 シュラハトが意を決した目で敵の前線を見る。

 

「あの、婆さん?誰っスか?」


「……引退したのに住民のピンチにのこのこ出てきたアブねえ婆さんが昔いてな……まあ、どうでも良い」

 腰に差した予備の剣……多島海(サウザン・アイランズ)で貰ったトエの逸品、細剣(ワオドゥ)を懐かしそうに触れた。

「他人に貰った命だ。他人の命を助けるために賭けるのも悪くはねえ」


 シュラハトの瞼の裏には、あの少女の笑顔が今でも浮かぶ。

 クローリーやマリエッラにも話したことのない過去だ。

 

「そういやオレもマリ姐さんに助けてもらってるっスからなー。手伝いに行かなきゃなんねーっスな」


 クローリーは腕をグルんグルんと回して見せた。

 この男には悲壮感はない。

 

「大魔法を使う厄介なのがいないことを祈るっス」


「クロ」

 シュラハトが声をかける。

「もう一つ、あいつらが逃げねえ理由があるんだぜ」


「ん?なんスか?」


「みんな、お前を信用してるんだよ。風変わりでお人好しの領主にな。移住2年間は税金免除で、開拓支援に種や苗をくれる領主なんてどこにもいねえよ」


「まあ、そりゃあ、さにゃたちのおかげで何とか成り立ってるだけっス。おかげで経営は火の車っスがね」

 クローリーは自分の功績とは思っていない。

 紗那たち異世界召喚者(ワタリ)のエルフたちのお陰なのを忘れてはいない。

 謙虚というよりも、自然体なのだ。

「ここで負けちまえばなーんにも無くなるっスけどな」


「だからだよ。そんな住民に都合の良い場所をなくしたくねえんだよ」

 シュラハトは笑った。

「守り切れば、まだしばらくこの楽園が続くんだからな」



 帝国世界では良心的な領主でも税率は5割。

 そのほかに無償労働の義務があるのが当然だ。

 なのに、アレキサンダー男爵領では通称『4分の1税』こと25%だけだった。

 インフラ整備のための労働にもきちんと報酬が出る。


 働けば働いた分だけ稼げる仕組みである。

 男爵家による専売事業などで一部の経済をコントロールされているが、市場の税金も少ない。

 今年になって穀物の先物取引も始まった。 

 独自貨幣の普及で為替も機能し、劇的に経済が変化しつつあった。


 ただし、まだ、大量生産と消費の社会にはなっていない。

 人力に頼る部分が多すぎるのだ。

 試作の蒸気トラクターのような機械力が増えれば良いのだが……ドワーフの鍛冶工房がどんなに優秀でもなかなか上手くはいかない。

 しかし、色んなものができつつある。


 領民たちはそこに夢を見つつあった。

 昨日より今日、今日より明日、明日より更に明後日と生活が急速に向上していくのが実感できていたからだ。



「少し前まではこんなものだって想像できませんでしたしネエ」

 マーチスが2人の後ろから歩いてきた。

 弩砲(バリスタ)隊を率いてきたのだ。

 主な砲弾である鉄炮が重いために、砲台ごと荷馬車に載せて運んできている。

 その右手には芋餅があった。

「屋台でおやつを買って食べることができるなんて、昨日までの帝国では想像もつかなかったでショウ」


 マーチスは2人に芋餅の入った紙袋を投げてよこした。

「食べ物は一番実感しやすいものですからネエ。この豊かさを知ったら失いたくはないでショウナ」


「だな」

 シュラハトが袋から芋餅を取り出して齧る。

 在り合わせとはいえ調味料を使ってあり、甘味料の甘みと微かな塩味を感じる。

 男爵領では子供のおやつとして定着しつつあった。

「俺たちはさしずめ芋餅のためにってか」


「正義や名誉のためにっていうよりは、解りやすい目標っスな」


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