百合営業のつもりが、いつの間にかガチ恋しちゃってました!?
年齢とか入れるタイミング失っちゃったので、プロフィール書いておきます。
川崎夢乃→青空セリア。Vドリーム3期生。19歳。コミュ力強者。バーチャルではクール系のお姉さんを演じている。心の中はあんまりクールじゃない。
桑原千尋→星宵ルナ。Vドリーム3期生。18歳。コミュ障。バーチャルでは特に何かは演じず、ほぼ素で配信を行っている。
『こんるな〜。Vドリーム3期生の星宵ルナだよ! 今日はなんと、セリアちゃんが私のお家に来ております! それでは、セリアちゃんドーン』
『みなさん、こんせりあ! 同じくVドリーム3期生の青空セリアです! 今日はルナの家にお泊まりに来ています! ルナの家に来るのは初めてなんだけど、めっちゃ綺麗! 私、ここに棲みたい』
コメント:こんるなー
コメント:こんるなー
コメント:こんるなー
コメント:こんせりあ!
コメント:こんせりあ!
コメント:こんるなー
コメント:こんせりあ!
コメント:お泊まりとか神回決定
コメント:オフコラボキター
コメント:お、同棲開始ですか?
【¥50,000】観察植物:結婚資金
コメント:↑草ニキさすが!
私は青空セリア。VTuberをやっている。
彼女は星宵ルナ。私と同じ企業に所属する同期だ。
先程言った通り、私はルナの家に訪れてオフコラボを行っている。この後はマシュマロを消化しながら、リスナーからリクエストされたオフでしかできないことをしていくつもりだ。
『事前にアンケートを取った時に一番多かった「愛してるよ ゲーム」をしていくよ!』
『圧倒的だったよね。知らない人のためにルール説明しますね。「愛してるゲーム」は相手に「愛してる」と交互に言い合い、先に照れたり笑ったりした方が負け、というゲームです。今回、負けた方はマシュマロで募集した恥ずかしい台詞を言うことになるわ』
コメント:キマシタワー
コメント:wkwk
コメント:俺の当たってくれ!
コメント:セリア勝ってくれ
コメント:ルナちゃん勝って
『私からいくよ〜。セリアちゃん準備はいい?』
『いいよ、ルナ』
私はクールに答える。しかし、心の中は全く冷静でいれてない。
やばい、めっちゃドキドキする。あっ、なんで近づいてくるの!? 顔近い!!
ルナの可愛さは控えめに言って天使だ。多分これ以上の美少女はいないと思う。だから、こんな至近距離まで顔を近づけられたら、ガチ恋勢の私は正常なんて保てなくなってしまう。それでもなんとか顔を緩ませまいと、表情筋に力を入れ、無表情を保つ。
『愛してるよ』
あっ、あい、愛してる、愛してるだって、えへ、えへへへへへ。
……ハッ! まだ照れてはダメよ私。クールになりなさい。はー、ふー。落ち着いたわ。まだ鼓動がうるさいけれど。
『むー、照れるどころか、全く顔がうごいてくれない』
コメント:アッ、耳が逝く
コメント:↑死ぬな
コメント:セリア、そこ変わって
コメント:無表情w
コメント:よく耐えたな
コメント:次はセリアだ。wkwk
『さて、次は私の番ね』
多分、次言われたら、私は陥落してしまう。だから、ここで攻める! 自分が恥ずかしい台詞を言いたくないのもあるが、ルナのを聞きたい! 推しの台詞を目の前で聞けるとか、いくら金積んでも手に入らない特等席だ。
『ルナ……』
私はルナの耳元へと顔を近づける。真正面だと、私の理性が持たないので、こうすることにした。
『1度しか言わないから、よく聞いて』
『う、うん……』
『ルナ……』
もう一度ルナの名前を呼ぶ。
『愛してるわ』
『セ、セリアちゃん……////』
コメント:堕ちた
コメント:堕ちた
コメント:それはズルいって
コメント:てぇてぇ……
コメント:ルナセリてぇてぇ
コメント:あっ…(尊死)
コメント:↑戻ってこーい
ふふふ、勝ったな! 風呂入ってくる(入りません
私は耳から顔を離し、ルナの顔を伺うと、分かりやすい程真っ赤になっていた。何この可愛い生き物。天使か? 天使しかありえないわ。
『可愛いすぎぃ……』
『ッ!!』
コメント:追い打ちww
コメント:いいぞ、もっとやれ
コメント:やめてさしあげて
コメント:さっきまでの無表情が、嘘のように緩んだ顔に
【¥10,000】ルナ親衛隊長:ルナ様のHPはもう0よ!
『おっと。じゃあ、ルナは照れたからあ罰ゲームね』
一瞬理性のタガが外れてしまったため、罰ゲームへと移って平静を保つ。
『えっ……これ、言うの……?』
『気になるから、早く』
ルナは言い淀んでいる。これは内容に期待が高まってくる。
意を決したのか、ルナは私の方を向いた。
『ダメなところも含めて君のことが好きになったんだから。絶対嫌いになんかならないよ』
『……』
コメント:あっ、逝く
コメント:俺も逝く
コメント:尊死者続出中
コメント:こんなこと言われたかった
コメント:セリア、場所変わってください
コメント:↑その場所はワイが貰う
コメント:↑いいや、ワイのや
私は無言でルナを見つめていた。
あまりにも耳が幸せ過ぎて言葉が出てこないのだ。
『もう、何か言ってくれないと、恥ずかしいよ……』
『あっ、ごめんね。あまりにも素晴らしくて言葉失ってた』
ルナは先程と同じくらい顔を赤くさせる。天使だ。天使がここにいるぞ。
『次! 次いこう!』
その後は雑談などを行い、配信は終了した。
『それではみんな、また次の配信で会おうね〜』
『また会いましょう』
【¥8181】どんなバナナ:またねー
コメント:またね!
コメント:またねー
コメント:またねー
コメント:またね!
【¥8181】匿名:またね!
【¥8181】………
【¥8181】……
【¥8181】…
* * *
「お疲れ様、千尋」
「うん、夢乃ちゃんもお疲れ様」
配信が終わったので私達は本名で呼び合う。
私が川崎夢乃で、ルナが桑原千尋だ。
「どうしようか? 6時だけど」
「早いけど、ご飯食べる?」
「んー、食べる」
「じゃあ、私何か簡単なもの作るから、その間に夢乃ちゃんはお風呂に入っておいでよ」
「分かった」
私は持ってきたお泊まりセットからパジャマを取り出し、お風呂場へと向かう。場所は事前に教えて貰っているので問題ない。
「んー、気持ちいい」
何か入浴剤を入れているのか、とてもいい匂いがする。
私はお風呂に浸かりながら、今日の配信のことを思い出す。やはりというべきか、主にルナの可愛い所である。
今では、家にお泊まりするほど仲良くなり、私に至ってはガチ恋までしてしまっているが、正直ここまでなれるとは初めは思ってもいなかった。
この関係は打算的な考えから始まっていた。
* * *
あれは私がVTuberになったばかりの頃のこと。
初配信から同期達はチャンネル登録者数を急激に伸ばしていくのに対し、私のチャンネルだけはあまり伸びを見せず、私だけ取り残されたような疎外感を感じていた。それでも、私は人気になろうと必死に頭を回転させた結果、星宵ルナへと目をつけた。彼女はデビューから僅か1週間でチャンネル登録者数は2万を超え、収益化が追いつかないほどの人気を出していた。その人気の引き金となったのは、コミュ障だということだろう。
配信ではそんな風には全く見えなかっただろう。それはコラボ相手が私だから。約半年という私がルナと築いてきた時間は重い。私以外とのオフコラボはまず拒否られる。それでも根気強く頼んでいればいつかは折れてくれる。私も最初は画面越しの普通のコラボさえも拒否されてしまった。しかし、私は人気になるため、ルナとの初コラボ相手という肩書きが手に入れるために、諦めずにルナにコラボを依頼した。
多分10回以上断られてから、マネージャーの人達に根回しなどを行い、やっとルナに受け入れてもらうことに成功した。
正直、初コラボはあまり上手くはいかなかった。ルナのことをかなり気遣いながら進行を行ったつもりだが、ルナのコミュ障具合考えたよりも酷かった。
話を振っても、会話が繋げられず、かなりイライラしながらやってた気がする。仕舞いにはルナが泣き出してしまい、私は訳もわからず慰めて終了した。それでも私はルナの初コラボ相手という肩書きは手に入れることができたため、一応はそれで満足した。しかし、いつの間にかルナの保護者ポジションまで私は手に入れてしまい、私のチャンネル登録者数は増え、人気にもなったが、ルナの世話という、かなり面倒な仕事を任されてしまった。今では懐かしい思い出として済ますことができる。
それから、何度も断られながらも数回のコラボを重ねてオフコラボを行うことに成功した。そのオフコラボの終わりに、私はルナを利用して人気を取っていることに罪悪感を感じ始めた。その時、何故罪悪感を感じ始めたのかが全く分からず、モヤモヤした気持ちを抱えたまま時が過ぎた。
そのモヤモヤの正体に気付いたのは、ルナの突然の一言からであった。
「最近元気無いけど、何かあった?」
ただそれだけの言葉。それを聞いた時、自分に元気が無いことには気づいていなかった。否、気づかないフリをしていた。ずっと、隠し通せていたつもりだった。しかしルナの目を欺くことはできなかった。
その時、私は急に胸の高鳴りが聞こえてきたのだった。
多分、私は好きなんだ。ルナのことが。千尋のことが。
モヤモヤの正体は千尋に対する恋心であったのだ。好きな人を利用する。それは罪悪感が湧いて当然であった。さて、問題はこの気持ちを千尋に伝えるか、だ。
女同士で付き合うなんて普通じゃない。世の中には百合なんていうのがあるが、それは二次元だけの話だ。同性愛者というのは人口の約1/10しかいないと言われている。たった1/10の確率に人生をかける自信など無い。ましてや、仮に千尋も同性愛者だったとしても、私のことが好きだとは限らない。想いを伝えてもフラれて、関係が破綻可能性の方が高いなら、一生想いを伝えずに、これまで通り最高の親友として、仲良くしていく方が、よっぽど人生幸せだろう。
「ううん、千尋のおかげで元気出てきた。ありがとう」
「? どういたしまして?」
これからは千尋を利用したりなんかしない。できれば彼女とか妻とか、そういうポジションにいたいけど、高望みはダメだね。私はずっとルナの初めての友達として、最高の親友として、傍にいよう。そう胸に誓う。
「これからもよろしくね、千尋」
「もちろんだよ、夢乃ちゃん」
* * *
「さて、そろそろ上がるかな」
これ以上入っていると逆上せてしまいそうだ。私はしっかりと体に付着した水滴をタオルで拭き取り、用意したパジャマを着る。先程着ていた服は家に帰ってから洗濯するため、畳んでパジャマを入れていたビニール袋に入れる。
ビニール袋をバックに仕舞ってから、リビングへ向かうと、既にご飯の用意は終わっていた。
「わぁ、美味しそう」
肉じゃがとサラダと白米がテーブルに並べられている。私が作るのより美味しそうだ。
「料理は一人暮らしするために、頑張って身につけたんだよ。誰かに振る舞うのは初めてだから、少し心配だけど……」
「いやいや、自分が作るやつより美味しそうだって」
「そう? じゃあ、冷めないうちに食べよっか!」
千尋の作ったご飯は見た目通りとても美味しかった。他にも色々作れるそうで、バリエーションが豊富過ぎて、あまり凝った料理は作れない私が悲しくなってきた。スイーツも作れるらしい。
千尋って結構スペック高いよね。世間知らずなだけで。
* * *
「それじゃあ、おやすみ」
「夢乃ちゃん、おやすみ」
私達は同じベッドで寝ることになった。私が「千尋のベッド大きいし、2人でも一緒に寝れるんじゃない?」と、言い出しのが切っ掛けだ。
正直、眠れない! 一緒に寝ようとか言ったの誰? 私です! まぁ、千尋と一緒に寝れるのは嬉しいんだけど、幸せすぎて眠れないよ! はぁ、千尋がいつも使っているってベッドで寝るってだけでも、幸せすぎるのに……
眠れないので何となく寝返りを打つと、千尋と目が合った。
「まだ眠れないの?」
「そっちこそ」
「ねぇ、少しお喋りしない?」
どうやら、千尋も眠れないらしく、そんな提案をしてくる。
「いいよ」
「じゃあさ、今日の配信どうだった?」
「楽しかったよ」
「私も楽しかった。でも『愛してるゲーム』はちょっと恥ずかしかった」
「もう1回やる?」
「え〜また今度〜」
あのゲームをまたするのか。今度こそは私の身がもたなくなりそうだからもうやりたくないんだけど、千尋にお願いされたら多分断れないだろう。
その後は、今日の配信。過去の思い出話などと、色々喋り合った。色々といっても、ほとんどVTuber関連だけど。
「すぴーすぴー」
しばらく喋り合っていると、千尋が静かに寝息を立て始めた。
無防備に晒された寝顔はとても可愛く、悪戯をしたくなってしまう。ぷっくりとした唇は今すぐにでも奪ってしまいたい。
しかし、そんなことを千尋は望まないだろう。
親友であり続けると誓ったのに、それでも、想いを伝えたくて堪らない。千尋に対する好きという思いは日に日に強くなってきている。
それでも我慢だ。ここで、私の心に悪魔が囁きかけてくる。
「これくらいなら……大丈夫だよね……」
私は千尋の頬に唇を近づける。接触時間は5秒無かったはずなのに、私には永遠に感じられてしまう。
私の心に更に悪魔が囁きかけてくる。しなし、持ち前の理性で抗う。
「千尋、大好きだよ」
千尋に向かってとても小さな声で呟く。
いつか、面と向かって「好き」だと言える日が来るといいな。私はそう願い、眠りに落ちた。
* * *
side:桑原千尋
え? え?
私は頬の湿った感触に困惑していた。
も、ももももしかして、キス、されちゃった……?
私は夢乃ちゃんを少し驚かしてみようと寝たフリをしていた。なのに、こっちが逆に驚かされている。おかげで、頭の中は人生最大の非常事態となっている。
「……ひろ……すき……よ」
とても小さな声で、全部は聞き取れなかったけど「好き」という単語が聞こえた気がした。私はゆっくりと目を開けると、音も無くスヤスヤと眠る夢乃ちゃんの姿があり、私の淡い期待を打ち砕かれる。
もしかしたら「ヒロシがすき焼き食べたよ」と言ったのかもしれない。いや、ヒロシって誰ですか?
私が夢乃ちゃんのことを好きになったのは多分3ヶ月前くらいだと思う。時期が曖昧なのは、コミュ障でこんなめんどくさい私に構ってくれているのを見て、いつの間にか好きになっていたからだ。
でも、大事なのは時期なんかかじゃなくて、どれだけ愛しているかだと思う。今日、配信で行った「愛してるゲーム」では、セリアの表情が一切動かないのを見て、あぁ、私はそういう対象として見られてないんだなって思った。なのに、なんであんな感情の籠った声で「愛してる」と言えるのだろうか。あの時、凄いドキドキした。でも、一時の幸せに浸りすぎていると、正気に戻った時に、とてつもない寂しさを感じる。
私はコミュ障だから、家族以外でここまで親しくしているのは夢乃ちゃんしかいない。それに対し、夢乃ちゃんはコミュ力強者のリア充である。それなのに私に構ってくれているだけ、感謝すべきなのであろう。他にも、遊びに誘ってくれる人達がいるのに、私なんかよりもっと仲のいい友達がいるはずなのに。
それを頭では理解していても、独占欲を抑え続ける自信が無い。傍にいないのが寂しくて、何の理由もなく電話をかけ続けてしまうのだろうか? 自分だけを見てくれるように、家に閉じ込めてしまうのだろうか?
そうなってしまったら、夢乃ちゃんに完全に嫌われてしまうだろう。それでも、いつかその日が来てしまいそうで私自身がとても怖い。いっその事夢乃ちゃんとは出会わない方が良かったかもしれない。今更離れ離れなんかになってしまったら……私は、私はどうなってしまうのだろう? セリアちゃんがいないVTuberなんて続けられるのだろうか?
否だ。嫌だ。
でも、頬の湿った感触は触って確認してみたが、本当のようだ。
もしかして、私達って両思い……?
私は期待に胸が高まる。
でも、期待しすぎは良くない。違うことに気づいた時、ショックで立ち直ることができなってしまう。
夢乃ちゃんもしてきたんだし……これくらいなら大丈夫だよね……
私は夢乃ちゃんの頬へと口づけをする。唇を離す時、軽くペロッと舐めたのはご愛嬌だろう。
「夢乃ちゃん……大好き……」
私はとても小さな声でそう呟き、目を閉じる。
しかし、あまりにも嬉しすぎて、私は眠ることができなかった。
* * *
「それじゃあ、千尋、また来るね」
「うん、いつでも歓迎する!」
玄関で、夢乃ちゃんを見送る。たった1日だったけど、とても有意義な時間だった。
次に来てくれた時の準備しようか!
夢乃ちゃんは先程出て行ったばかりだというのに、そう意気込む。
昨日のキスの件については、何も問いたださなかった。あれが勘違いだと、あまりにも恥ずかしすぎるから。
まだ時間はある。だから私のペースでゆっくりと気持ちを確認できればいいと思う。
昨日の1件のおかげで、私はかなり独占欲を抑えられるようになった。希望が見えれば、それだけで人間は楽観視してしまう。今回は良い方向に向かったであろう。
いつか、夢乃ちゃんの気持ちが分かった時、私の想いを打ち明けよう。
私はそう決意し、次に夢乃ちゃんがお泊まりに来た時のための準備を始めるのであった。
本当は連載で書きたかったんですが、断念して短編として書きました。
この作品はVTuberモノですが、私が書いている「VTuber界にTS少女が舞い降りる」とは全く関係の無い話です