合宿:2日目⑥
それから、1時間程度たったぐらいだろうか、いまだに対峙する俺と1匹。
イアン達は、討伐が終わったみたいで、さすがに疲れたようだ。 少し離れたところで、俺と1匹の対峙を見学していた。
木陰で休憩中のイアン達は、シュンと白狼の対峙の様子をみている。
シュンが少し優勢だが、白炎もつかわず、身体強化のみでやりやっている。 フードを被っているので、表情は読み取れないが、どうも殺しあっていない。 そんな戦いにイアンが思案していると、シュンの蹴りが白狼に炸裂して、白狼が飛ばされたのだった。 ようやく、お互いに間合いが空いたのだった。
「隊長! じゃれあってのもいいすけど、俺ら腹減ったんで先帰っていいっすか? 死骸は白炎で、燃やしておいてくださいよー」
そう、やれやれという感じで呆れつつ叫ぶイアンだった。
「あー悪りぃー。 久々の強敵だったからよ、途中から楽しんじまった。 もう終わりにするわ。 ちょっと、待ってろ」
そう言った俺は、今度は白狼に向かって剣をしまいながら会話をした。
「白狼。 悪りぃーが、他のウルフは任務だったんで殺した。 お前んとこのガキ殺したのは、あそこの砦につるしているやつらだ。 俺としては、殺してもいいと思ってぇーんが、できれば命だけは残してやってくれってぇ、言われてんだ。 まぁ、どうするかは、お前に任せる。」
普通に人語で話している俺。
「隊長! 通じるわけないっすよ!」「そうっすよ!」とイアン達はしっかりツッコミを入れてくるのだった。 離れた場所にいるがちゃんと聞こえたらしい。
「神獣だから、言葉わかんだろ。 アークが言ってたぞ!」
すると、白狼は驚いた顔をし、起き上がり俺の近くまでくると、俺と同じ目線になるぐらいまで小さくなった。 そして、俺に向けるその目は優しい。
「途中から、もしやとは思ったが、お主がやっぱり不死鳥の所のガキか! いい感じに育ってるな。 もう、ほとんど儂らと変わらんな。 儂も楽しかったわ。 連れてきたやつらは、最近、冗長しているやつらと、増えすぎたやつらだ。 まぁ、間引き対象だった奴らじゃ。 気にせんでいい。 逆にこっちが感謝じゃ。」
「そっか、んじゃ白炎で燃やすな。」
なんだ、やっぱり間引き対象だったのかなんて思いながらも、数百程度白炎を出して死骸となっているウルフの大群を燃やす(浄化)した。
既に、陽も沈み夜のなった中での白炎の浄化は、送り火のような幻想的な景色となるのだった。
「いいもの見せてもらったわ。 あの吊るしている小汚いガキの命はいらん。 ちょーっとばかり、お仕置きしたいから連れて行ってくれ」
そう言った白狼に俺は頷き、イアン達と合流して砦に戻るのだった。
◇◇◇
砦に戻ると、砦にいた炎帝君と隊員メンバーは失神していた。
「はぁ、情けねぇやつら。 こいらは、運んでおきますわ」とイアンが言うので、頼んでおき、ついでに白狼の幼児の死体を連れてくるように頼むのだった。
いまだに、吊るされて失神している6人。 すると、イアンが、死体を丁寧に抱えてつれてきて、白狼の前に置く。
「あまちゃんに育てられたやつよ。 人間どもは神獣の存在を忘れるからな。 いい機会だったが、簡単に殺されるとは情けない。」
そう言った白狼は、何かすると死体が光り消えるのだった。 浄化したようだ。
そして、白狼は、失神したまま吊るしてある生徒1人の前にきて、何かの封印をかけたのだった。
「本当に心から、今回の事を悔い改めるまで、雷属性は使えない封印をした。 まぁ、本人にいうか、いわんかはお前さん次第じゃ。」
そう言った白狼はニヤリと笑ってきた。 ふーん、まぁ、ジルに言っておけばいいかなんて考えていた。
「ほれ、約束の品を」と小声で白狼が言ってきたので、俺は苦笑しながら、大きな袋を渡した。
白狼がはしゃぎだし、嬉しそうに袋を中を器用に開けてながら「これじゃ、これ! やっと手にはいった。」といい、早速袋をしまうと「んじゃ、また何処かで会える事を願う。 さらばじゃ」といって、ルンルンで帰る白狼を俺は手を振って見送った。
◇◇
砦の前に残った俺。
「さっきまで、楽しかったのによぉ。 後始末、めんどくせぇー。 水洗いして、食堂投げとけば、あとはグランがするか」
つるされた6人をみて、ボソッとごちり、水で洗い、濡れたままの6人を拘束されたまま食堂に転移させた。
食堂から、悲鳴が聞こえるが無視。
そのあとは、リンの待つ部屋へ移動した。 もちろん転移でだ。
◇
イアンは、とりあえず、シャワーを浴びて着替え等したあと、いろいろな後始末へ。
カイ、サルも着替えてから、食事を運びいれていた。
数時間後、昨日と同じ部屋に集まる5人。
今夜は誰も見回りがいない。 5人以外は、精神的につかれたのか寝ているようだった。
そのため、俺が、しょうがないとばかりに、合宿所敷地全体に侵入防止の結界をかけておいた。
大量の食事を食べながら、イアンは討伐中の合宿所内の状況をグランから聞いたので、食べながら報告を聞いていた。
討伐中は、もくもくと食事の用意をしていた事。 黒帝が来ているという事で安堵した生徒。
教師陣も砦に行こうとしたときに、砦にいた隊員達が震えているのをみて、もう終わりだと一度パニックになったが、一向になにも起きないので、見てはいけないと思い食堂に戻った事。
あとは、気絶して縛られた6人が現れて、悲鳴があがったが、生きている事を確認して、医務室につれていったところでちょうどグランがイアンに遭遇し、討伐完了を聞き安堵していたとの事。
そのあとは、グランが生徒達に討伐完了を伝え、食事、入浴、就寝へと促したらしい。
食事をおおかた平上げて、口数も少なくなり、イアン達は眠そうだった。
「シュン、イアン達眠そうだ。 シュンの結界があるから大丈夫だと思うが、あとはわれがみとく。 寝とけ」
その言葉を聞き、皆各自の寝室へ移動するのだった。
こうして、合宿2日目が終了したのであった。




