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白銀の黒帝  作者: 八木恵
0章:プロローグ
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プロローグ:出会い

シオンが一瞬の浮遊感の後、硬い地面の上に尻餅をついた。

そこは、先ほどまでといた書斎の部屋とは違く、暗い森の中だった。


初めて独りとなり、今までとまったく異なる場所だった。 森という場所に初めて来たシオンは、座ったまま動く事なくただ呆然としていた。 自分は『アーク』という人を探さないといけないのだが、なかなか立ち上がれずにいた。


今まで人形扱いなので、自分の意志でどっちに行けばいいのかわからないし、魔力の無い自分に絶望して心が沈んでいくなか、森の木々をバキバキとかき分けて何かが自分のほうに近づいてきている。

今まで嗅いだ事の無い匂いだが、その匂いは凶悪で、憎悪がある生物だ。


現れたのは、巨大な熊だった。 この世界の魔物と言われている生物だった。 初めて目にした魔物は、既にシオンを捕食対象として認識しており、動かない自分に向かって襲いかかってきている。

自分は、人形だ。 結局、何も出来ないし、命の危険なのに、まったく恐怖心はわき上がってこない。 ただ、身体は動かず、じっと座ったまま、襲いかかってくる魔物を見ていた。


そして、熊の腕があがり鋭い爪が、自分に突き刺さろうとしていた。 死ぬ前は痛いかなとじっと突き刺さろうとしている熊の爪を、目を閉じる事なく見ていた。


熊の爪が自分に突き刺さる直前に、止まったのだった。


 目の前の熊は、絶命する叫び声をあげた。


目の前の熊はいなくなり、熊の代わりに温かい匂いのする青年が立っていた。 青年は武器持たず、体術のみで熊を葬ったのだった。 そして、いつの間にか自分の目の前に立っている青年を見上げた。

青年の容姿は、燃えるような赤い髪に、ワインレッドの瞳で、目鼻は整っているがやや悪巧みもあるようなやんちゃな容姿で、年齢は20代前半に見えた。 そして、青年が自分を見る目は、なんでこんな所に子供がいるんだろう眼差しだった。


「ぼうず、俺人間嫌いなのに、なんか魔物に襲われても微動だにしないから助けたけど、何してるんだ?」


 青年は、たった今魔物を殺した事は、どうでもよく、恐怖心もなく、ただただ魔物に襲われようとしていた子供が気になった。 そして、純粋に、ここは人間が一度踏み込んだら二度と生きては帰れない『魔の森』のしかも深層部に、5歳のシオンのような子供がいることが不思議だった。


「アーク、探す」


 そう答えた、シオンは青年を見上げながら言った。 自分は『アーク』を探しているので、目の前の青年に聞いたのだった。


「はは、アークは俺の事だ。」

 

 自分は立ち上がって、目の前のアークに、握りしめていた手紙を渡した。 だけど、青年は、手紙を読む事なく、自分を抱き上げで、無言で歩きだして、2階建てのログハウスに連れて行ったのだった。

ログハウスの前で、アークは自分を地面の上に下ろしながら「ここが俺の家だ」という。 軒先はウッドデッキになっておりそこには3人掛けのベンチがあった。 自分はベンチに座った。



 アークが手紙を読み終えて、何か納得した顔をして、自分の目線に会うように目の前に座るのだった。


「さっきも言ったが、俺は、アーク。 神獣で、不死鳥だ」


 目の前にいるアークが不死鳥といった事に驚いた。 見た目は人間だった。 だけど、人間とは違う匂いがしていた。 自分は納得しつつも、気になった。


「でも、今アーク人間。 なんで?」


アークはニタリ笑いながら「人化してるしな。 いいもん見せてやるな」といい、少し離れて人化を解くと、そこには、赤い燃えるような身体に、様々な赤色のグラデーションの翼をもった全長3Mぐらいの幻想的で美しい鳥、不死鳥ががいた。 自分はアークの姿に感動した。 あと、人間じゃないのがうれしかった。


「アーク、人間じゃない。 やったぁ」


その答えに、アークも嬉しそうにうなずきながら、人化して、また自分の目の前に座った。


「ぼうず、今度はおまえの番だ。 おまえは?」

「...シオン。 ちがう。 人形。 いらない。 まりょくない。」


思わずシオンと答えたが、父親の言葉を思い出した。 そう、自分は人形でいらないといわれたからだ。

すると、突然アークが自分の頭を撫でてきた。 それは、温かくて優しかった。


「なるほどな。 でも、お前は人形じゃない。 お前はちゃんと生きている。 だから、今日からお前の名前は、『シュン』にしよう」


自分は、人形から、この日『シュン』になった。 でも、魔力の無い自分が、これからどうすればいいか分からなかった。


「シュン、実は、お前の魔力は封印されているんだ。 お前の事や封印されている理由は『手紙』に書いてあるけど、内容はシュンがもう少し大きくなって読み書きができてからだろうな。

ただ、この世界の生き物で魔力の無い生き物はいない。 封印を解除すれば、シュンだって魔法が使えるようになるんだ。」


アークの言葉に驚いた。 自分にも魔力があるという事に。 解除してもらえれば、人間としていきていけると思った。


「アーク、ふういん、かいじょ」


だけど、アークは困った顔をしていた。

「シュン、俺は人間が嫌いだ。 たまたま、お前を助けてここまで連れてきた。 なんで、俺が封印の解除をしなくてはいけない? それに、さっき魔物に襲われているのに、何で逃げようともしなかった?」


「人形うごかない。 アーク、温かい匂い。 近くいた。 くま、こわくない。」


自分は人形。 動いてはいけないといわれていた。 だから、動かなかった。 それを、アークに説明すると、アークは驚いた顔をしていたけど笑っていた。 そして、また自分の頭を優しくなでた。


「シュン、悪い。 意地悪な質問だったな。 ちょっと、シュンの事を知りたかったんだ。 にしても、俺が近くにいたのを知っていたのは驚いた。 シュンが行く所がないのは分かった。 それに、シュンの事は俺は気に入った。 だから、シュンはここで住みながら、俺がシュンが自分の身を守れるようになるように、鍛えてやる。 俺と暮らさないか?」


「うん。 アークとすむ」


これは、不死鳥アークとの出会いであり、シュンはこの日からアークと共に生活する事になった。。


◇◇◇

アークの住む場所は、人間が一度入り込んだら二度とは戻ってこれないと言われている凶暴で危険な魔物が生息している「魔の森」で、しかも、その最深部に位置しているのであった。

アークの家は結界が張ってあり魔物の侵入は禁止となっているが、凶暴で危険な魔物がかなり多く生息しているのであった。



この世界には、神獣が存在し、神獣達が魔物を管理している。 


人間と神獣は不干渉ながらも共存をしているのであるが、アークはこの世界の神獣ではなく、別の世界、地球から異次元を超えて迷い込んでしまった迷い神獣なのである。


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