プロローグ:魔力検査③
「やっぱり、魔力が無い」
そう言ったのは、ユーリだった。
人形のような扱いを受けていたシオンでさえ、この世界で生きて行くには魔力が無いことが、生きる価値なしという意味を示すという事は理解していた。 そして、貴族である自分に魔力が無いという事は、更に悪い事という事は知っていた。 だが、5歳の自分は、何も出来ない為、恐る恐るユーリの方を見上げた。
ユーリの表情は、哀愁を帯び、どこか悲しい表情だった。 そこには、シオンに対しての怒り、落胆という感情は一切ないように見えたのだった。 なので、少し安堵していた。
「うん。 シオン... いや、君はもう誰でもない。 ただの人形だ」
が、ユーリの紡いだ言葉は、シオンにとって絶望する言葉だった。 やっぱり、人形なんだ。。。
「...女性陣を凶変させる、人形はもう我が家の害にしかならない... 今すぐ、この家から出て行ってもらうよ... そして、二度とイグニス家の名を語る事も許さないよ。」
そう言ってユーリは、シオンに片掛けのバックをかけさせ、手紙を握らせるのだった。
シオンは、わけがわからず、ただただ震えている。
抱き上げられ、魔方陣が光る場所に放りだされたのだった。
「シオン! すまない。 こんな僕を許してくれ。 その手紙をアークって人に見せるだ! 強く、好きに自由に生きてくれ!」
そして、光が消えた場所には、シオンの姿はもういなかった。。
かすかに聞こえたのは「ばいばい」というシオンの声だった。。。
◇◇◇
シオンが居なくなった、書斎の扉は、外で騒いでいた女性陣により破壊された。
「シオンはどこなの」
「お兄様!!」
ユーリは、盛大な溜息を吐き、敷地内に針目ぐした魔法陣に魔力を注ぎ起動させたのだった。
すると屋敷全体が光だし、光が収まると、女性陣は我にかえったように書斎からそそくさとでていくのだった。
この日、イグニス家からシオンが消え、女性陣の記憶からもシオン消えた。
唯一シオンの存在を知っているのは当主ユーリのみとなった。




