プロローグ:魔力検査②
「臭い。。。 嫌い。。。」
こう言ったのは、ソファーの上で座りながら嘔吐しているシオンだった。。
シオンは、物ごころ着いた時には、常に、幼女、女性、つまり女が四六時中ついており、それも執拗なまでにシオンに固執し、狭愛状態になる。
シオンが泣いても、怒っても、吐いても、女性陣の狂愛は収まらず、いつしか女性陣はシオンを人形と同じように扱い、それと同時にシオンも感情を無くしてしまったのだった。
ユーリも、そんな状態を放置していたわけではなく、領主邸のメイドの数は最低限にし、男性従者や執事を増やした。 しかし、母親筆頭に、シオンに固執する狂愛状態が収まる事はなく、逆にシオンから引き離そうとする男性はことごとく母親の指示により叱咤され、酷い場合は理不尽に解雇となるのだった。
「シオン、大丈夫かい?」
優しい口調で聞いてきたのは、ある程度シオンが吐き気がおさまった頃だった。
父であるユーリは、シオンと同じ目線にしゃがみこみ聞いてくる。
「女は嫌いか?」
その問いにシオンは、震えながら首を縦に振るのだった。
女性によって、人形扱いのシオンは、貴族の嫡男なのだが5歳になっても教育も受けておらず、片言しか話せない。 そして、言葉を発する事も許されていなかった。 目の前にいる男が父親である事は知っていても、初めて女の居ない空間におり、正直戸惑っている。
「僕は、シオンが女性が嫌いなのは知っていたよ。」
その言葉に、シオンは驚くも、なぜこの状態のままなのか嫌気がさすが、期待しても無理なのは既にわかっているので、反応もしないでいた。
「僕も、なんとか改善しようとしたけど、女性陣は僕の話を聞いてくれなくて、シオンが喜んでいるというんだ。 僕も女性陣がシオンに対して狂愛するか、いろいろ調べたけど原因がわからないんだ。」
そう言った、ユーリの表情は、自分の不甲斐なさを悔やんでいるようだった。
「今日のこの魔力検査が、シオンと話せる唯一の日なんだ。 だから、シオン、僕と話してほしい」
「わかった」
たどたどしく、小さな言葉を紡いだ。
その言葉を聞いて、優しい笑みを浮かべたユーリの手には、魔力検査用水晶がある。
「この水晶に手をかざしてみて」
シオンが、そっと襲る揃う手をだし、水晶に触れた。
... 半透明の水晶は、光る事もなく、何も起きなかった。。。