街へ行こう 前編
シュンとリンに一般常識を教えると強く心に決心したジルは、状況把握のため今シュンの部屋に来ている。
まず、日々の食事。
シュンとリンは特に食に対して興味がない。
なので、食べれればよいので、シュンがギルドに隔離された際ジルに言われた通りに、空腹になるとギルドの食堂に連絡して部屋の前までもってきてもらうという事をしていた。
コーヒーだけは、アークから豆をもらって、自分達で挽いてのんでいる。
なので、ギルドの部屋で料理はした事がない。
アークの所では、アークが料理をしており、シュンは狩ってきた動物や魚といったものを捌いて、焼いていた。
衣服や本、その他日用品。
これは全てジルに頼んでいるのだった。
理由は、ジルが最初にシュンをギルドの部屋に案内した際、『欲しいものがあれば何でも言っていくれれば用意する』という言葉を聞いてジルに頼む事で全ての生活が成り立ってしまったのだった。
その内容を聞いてジルは反省した。
シュンを隔離する必要があったが、今後はまずいと判断した。
「シュン、任務以外で王都の街は行った事あるのか?」
「ないよ。」
シュンの回答を聞いて、ジルは更に焦る。 王都に来て2年も経つのに一度も街にでた事のないのであった。 そう判断したジルは、まずシュンとリンを街に連れ出そうと試みるのであった。
「どうじゃ、これから儂と一緒に街に出て買い物でもしてみないか?」
「われ、欲しいもの無い」
「うーん、本屋行きたいかも。 ジルが一般常識が無いっていうから、一般常識の本がほしい」
ジルは、一般常識の本なんて売ってないとは言えないが、せっかくシュンが本屋に行きたいという機会を逃したくなかった。
「そうか、よし、今から普段着に着替えて、一緒に本屋にいこう。 どうじゃ?」
シュンは少し考えて、言うのだった。
「やっぱいい。 ジル、買ってきて」
ジルはそれだけは回避したかった。
その後、街並みを見る事も一般常識の一つだなど、いろいろ説得を試みるが、頑として首を縦に振らないシュンだった。。 最後は、ギルドマスター権限まで発動して、渋るシュンをどうにか説得したのであった。
街に出るためにしないといけない事の1番最初の問題は、シュンの容姿をどうするかであった。
強くなったシュンであれば、万が一容姿があらわになって女が老若関係なく抱き着いてきたとしても、抱き着かれる事はなくとも逆に瞬殺してしまう。 今のシュンは、自分に危害を加えるものは殺していいいと思っている。
そのため悩むジル。
そこから話し合いをし、ジルとシュンで下記が合意される
・もし、女が抱き着いてきたら殺すのはダメで、気絶させる程度にする事
・なるべく、魔術は使わない事
・どうしても無理な状況になった時のみ、転移で部屋に戻る。 それ以外はちゃんと歩く事とする。
それから、シュンとリンは渋々めったに着たこともない、服に着替える。
シュンは、黒のパーカに、カーキのカーゴパンツ、リンは、白のニットに、黒のスキニーパンツという姿だ。
シュンはパーカーのフードを被り、念のため少し色のついたメガネをかけさせる。普段着のフードはやや浅いため、目元までフードがこず、8割がたシュンの容姿があらわになってしまっているからだ。
普段着のまま、ギルド内を徘徊するのは、おかしいので、ここは仕方なくシュンの部屋からギルドの裏手に転移する3人であった。
◇◇◇
いざ、街の中心街へ出る3人。
ジルの後ろに、仲良く手をつないで歩くシュンとリンの姿は、微笑ましい。
しかも美男美女と来ている。 中心街の道に出て、10M進んだぐらいのところだろうか、ワラワラと目がハートになった少女、女、という女がシュンに近づき始めてくる。
この時点で、シュンは冷や汗をかきはじめ、殺気だっている。
ジルは、ヤバイと気づき、急いでシュンとリン2人を抱き上げ、路地に入り、シュンに転移させて部屋に戻るのだった。
街に出て、数分で帰宅という結果となった。
◇◇◇
ジルが、一般常識というのを学ぶため、王都の街に出た俺。
ちょっと歩いただけで、臭い女達が近づいてきた。 だから、街なんて行きたくなかった。
「街行きたくない。 女は臭いのに近づいてくる。 もう行かない」
俺はイライラしながら、ソファに座るのだった。
一方ジルとしては、ここまでとは想像していなかったため、なんとも言えなかった。 が、諦めるわけにはいかなかった。 このままでは、シュンは任務以外で外に出る事はしなくなってしまう。 あまり、魔術は使わせたくなかったが、シュンに魔術を使わせる事を決意するのだった。
「素のままでと思ったのじゃが、無理なのは理解した。 認識阻害と変装してもう一度だけいってみるのはどうじゃ?」
俺はそんな事までして街に出たくなかった。
「もういい。 ジルが買えばいいだけだ」
そういったけど、ジルが街で買い物できたら、討伐任務を用意するという事で、俺は渋々了承したのだった。
ジルはジルで、ギルドマスターという立場から、日々忙しいので、なかなか時間を作る事ができないのだ。 今日の機会を逃したくなかった。
シュンに認識齟齬の魔術をかけさせ、シュンに至っては髪色はこの国で主流となっている茶色で瞳の色も焦げ茶に変更し、先ほどと同じくメガネをかけさせたのであった。
◇◇◇
再度、チャレンジ。
街の中心街に出ても、大丈夫そうだ。 しっかり、魔術の効力が効いている。
ジルの後ろについてくる、手をつなぐ2人はほほえましい。 無表情なのが残念だからと思いつつジルはとあるレストランの前で止まるのであった。
「本屋じゃない」
俺は、どうみても本屋に見えなかったのでジルに言った。
「本屋の前に、食事しようとおもってな」
ジルは強制的にそのまま2人をお店の中にいれるのだった。
お店の中に入ると、恰幅のいいおかみさんがいた。
「あら、ギルドマスターさんじゃないの。 今日はおひとり?」
「シュン、少し阻害の魔術の効果を弱めてくれ」
俺は言われた通りにする。 ちなみに女対策のため、消臭魔術もかけていた。
「今日は、3人じゃ」
ジルが、ジルの後ろにいたシュンとリンを見せるのだった。
「あら、マスター。 いつのまにこんなお子さんができたの?」
女将さんは、ジルに冗談を言いながら席に案内するのだった。
案内されたのは、道側の窓辺にある席だった。 外から見られるのだ。 少し、心配するジルであるが杞憂に終わる事を願うのであった。
ジルが適当に料理を頼むと、シュンとリンの前にはビーフシチューのような食べ物とパンが置かれる。
平均身長が高めなこの世界。 158cmのシュンは座ると足がつかないためぶらぶら揺れる。
また、テーブルの高さもあわずフードを被ったままだと見えにくかった。 そのため、シュンはフードを外して食べ始めてしまった。
あわてて、ジルはフードを被らせる。 シュンはぶつぶついいながら、もくもくと食べていた。
ジルが周りを見渡すと、店内にいた女性客がちらちらとシュンを見始めている。 認識阻害を弱めており、また髪の色を変えていたおかげもあり、その程度で終わっていた。 安堵の溜息をつくジルなのだった。
そんなジルの心配をよそに、シュンは、無表情ながらもいつもより嬉しそうにデザートであるプリンを食べている。
「美味しいか?」
「これ、甘いの」
シュンは、もくもくと食べていた。 リンもシュンがうれしそうに食べているのをみて、リンもうれしそうに食べるのだった。
ジルは、外食をした事のないシュンとリンのためにここに来た。 連れてきた甲斐があったと感じるのであった。




