ギルド生活:魔力枯渇②
2日後、シュンが目覚めた時には、破壊されたリビングは元通りになっていた。
ジルの手配により、シュンが寝ている間に工事していたのであった。
シュンの部屋には、ダイニングテーブルに座るジルとリン。
お気に入りの一人掛けのソファに座るシュンの姿があった。
各自の手元には、リンが淹れたコーヒーを持っている。
ジルがコーヒーを飲みながら、帝国軍の報告とその後について説明を求めるのであった。
シュンは時系列で淡々と説明を始める。
魔力が増えれば、身長が伸びるかと思い、帝国軍に対して過剰攻撃をして魔力枯渇寸前になった事。
魔力回復のため、リンとセックスした事。 すべて、無表情に話すシュンだった。
◇◇◇
シュンが説明している間、特に会話を止める事なく聞いていたジル。
ジルは心の中で、突っ込みどころが満載過ぎて、何から言えばいいのか困っていた。
「シュン、なんじゃ、帝国軍への過剰攻撃の件は取り柄あず突っ込む事はしないでおこう。 まぁ、結果的に、休戦交渉になったみたいじゃ」
興味がないのか、シュンはコーヒーを飲みながら読書をしている。
リンは、コーヒーを飲んでいる。
(。。本当にこの二人は無表情で何を考えているかわからん。。。)
儂は、ひとり愚痴ったあと、とりあえず本題に入る事にした。
「女嫌いのシュンがセックスするとは思っておらんかったのじゃ。 んで、お主らちゃんと避妊はしたのか?」
シュンは首をかしげながら、いうのだった。
「避妊ってなに?」
儂は、その言葉に驚きつつ、焦った。 シュンに性教育などしてない。
「シュン、赤ちゃんが出来たらどうするんじゃ!」
儂は、ちょっと声を大きめに言ってしまった。
だが、シュンは分かっていないようで、首を傾げたままじゃ。
「赤ちゃんって何? 人体解剖の本には書いてないよ」
儂は、頭を抱えながら、今度はリンのほうを向いた。
「われ、赤ちゃんできないから平気」
コーヒーを飲みながら言うリンを見て、儂は更に頭を抱えてしまう。 リンの素性から考えて出来ないのは分かっておった。
「だがな。 一般常識として、知っておいたほうがいいじゃろ」
儂は、一般常識と自分で言葉にして気が付いたのじゃった。
アークからシュンを預かって2年、女性恐怖症で人間嫌いのシュンは、任務以外は部屋にいるのが当たり前じゃった。 というか、とある事情からシュンを隔離していたのじゃ。
儂もいろいろ多忙じゃ。 ギルドマスター以外にも、総帝としての活動もあったりじゃ。たびたびシュンに頼まれたものは用意していた。 本の内容は、偏ってはいたがあまり気にしてなかった。
そういえば、シュンの育ての親はアークで、人間ではない。
人間の環境にならせるために、2年前にアークから預かったじゃが、まったく一般常識を教えておらんかったのじゃ。 一般常識の本なんて存在しないし、今までシュンが欲しがる本は、歴史書、魔術書、魔法関連などすべて任務関連やら、シュンが興味のあるものばかりじゃ。
この状況はまずいのじゃ。
半年前にリンを連れてきたときは驚いたが、それでも少しでも人と関わりだしたんだなとうれしくも思ってあまり深く考えておらんかったのじゃ。 儂は嫌な汗が背中を抜けるのを感じた。
まずい、まずい、リンもリンでシュンよりは少しはまともかもしれないが、やはり危ない。 一般常識がないと考えたほうがよいのじゃ。
シュンも、リンも来年は15歳じゃ。
15歳はこの世界では成人じゃ。 成人になる前に、一般常識について教えておかなきゃ不味いかもしれん。。
儂が頭を抱えて悩んでいるのに、シュンはそんな様子を気にせずいってきた。
「赤ちゃんって何かしらないけど、リンはできないんだろ。 だったら、避妊とか知らなくていい。
俺、セックスはリンとしかしないし。 俺、これからリンと一緒に寝るから、ベット大きくして。 リンと一緒にいるって決めたから、リンと結婚する」
ちょっと待て、シュン。 いきなり、結婚するとか何を言い出すんじゃ。
「なっ! なぜ、そうなる。 結婚は、成人してからじゃないとできんのじゃ。」
「そうなのか? 結婚すれば、一緒にいられるってアークが前に言っていた。 それに辞書にも書いてあったよ。 リンの魔力は甘いから、どうすれば一緒にいられる?」
シュンは、ブツブツ言いながらいうのたっだ。
「魔力甘いはよくわからんが、今のままでも一緒におるわけだし、任務も一緒にいっとるじゃろ。 今のままで、問題ないはずじゃ。 結婚は、成人後また話そう」
「ふーん、ならわかった」
該当者のリンは、蚊帳の外であったが、シュンが自分と一緒にいると宣言してくれた事がうれしく思っていたのであるが、無表情のため何を考えているかわからないのであった。
とりあえず、儂がリンのほうを向くと、頷いているので承諾していると判断した。
「ジル、話しは終わり?」
「いや、本題じゃ。 実はな、今回の帝国軍との戦争の貢献が認められて、シュン、お前は帝になる。 今まで何とか断っておったんじゃが、これはもう断れないのじゃ。 しかも、お前の帝は特例でな、新しい席となる。 んで、色は何が好きだ?」
「色、俺 黒が好き」
黒か、本当にシュンは黒が好きじゃな。
「わかった、それで手配しておくのじゃ」
のちの後世にも名を残す「白銀の黒帝」の黒は、ただ単にシュンの好きな色だった。
◇◇◇
「今回の活躍に対して、国から報酬がでる。 明後日、謁見じゃからな わしと一緒にいくぞ」
「いやだ。 いきたくない」
シュンの事だ渋ると思ったがやっぱりじゃ。
「これも任務じゃ」
任務というと、なぜか承諾する。 しばらく悩んだシュンが渋々いうのだった。
「わかった」
◇◇◇